映像は、ポンセ作曲、ハイフェッツ編曲「エストレリータ」英語に訳すと「Little star」小さな星と言うタイトルの、メキシカンラブソングです。
シャープが6つ付く調性「Fis dur」の楽譜で書かれています。
原曲の「歌」も色々な歌手が歌っています。
大人の生徒さんにレッスンをしていて、生徒さんが「好きなように演奏するのが一番難しい」と言われることがあります。。以前ブログに書いたことがありますが、指導者の好みの演奏を、生徒さんにそのまま「完コピ」させることには否定的に思っています。生徒がんが大人でも子供でも、その人にしか感じられない「気持ちよい演奏」が必ずあるはずです。仮に指導者の演奏を「そのまま真似したい」と光栄なリクエストを生徒さんから頂いたら、指導者はどうするでしょう?
一音ずつの詳細な演奏技法をそのまま、伝えることより生徒さん自身が自分の好きな演奏を考えることが「指導」だと思っています。
自分の好きなように…
・料理を作って食べる
・自分の洋服を選ぶ
・絵をかいて楽しむ
・草花を育てる
などなど、趣味でも職業でも考えられる話です。
「自己流」で初志貫徹(笑)するひとも多くいます。
誰かに基本を教えてもらって、あとは自分の好きなように…と言うひとも。
誰かの真似をしてみる…イチローの真似をするとか、昔は王貞治さんの「一本足打法」の真似をしたひとも多いのでは?←私、しました(笑)
楽器演奏の場合、プロの演奏を真似したいと思うのは、なぜかプロを目指す人「音大生」に多く、アマチュア演奏家には少ないのが現実です。
スポーツでも音楽でも「憧れ」を感じたひとの「真似」をしてみたい気持ちは、純粋な憧れの表れです。子供が忍者になり切ったりしますが、大人の場合は?
「コスプレ」特に日本のアニメに登場する人物にあこがれる、外国人がセーラームーンのコスプレをしている映像、見たことありませんか?
ロックバンド全盛だった頃に、女の子バンドにあこがれた「昔女子高生、今△△△△」もいれば、未だに「布袋モデル」のギターが押し入れにある男性諸氏もいたりします。多くは「形から入る!」のが鉄則でした(笑)
クラシック演奏の特徴を考えた場合「カラオケ」のように歌い方を「真似る」ように、演奏の仕方を真似る事が難しいですよね?
原因を考えます。
・一曲が長いので真似しきれない=覚えきれない。
・楽譜の通りに演奏すること「さえ」難しくそれ以上なにもできない。
・ただ「うまい」「すごい」と感じるだけで「なにが?」を言語化できない。
・自分にはできないと思い込んでいる。
今更のそもそも論ですが(笑)たとえば「もっと速いテンポで演奏したいのにできない」という気持ちも自分の好きなようにひけない!のひとつです。
曲の中である音を「少しだけ長く大きく」演奏したり、「少しだけ短く弱く」演奏したりすること、つまり「楽譜には書かれていないこと」があります。
「そんな経験をしたことがない!」と思い込むのがアマチュア演奏家です。
いやいや!(笑)実は毎日、誰でもやっています。
誰かと会話することは珍しい事ではありません。
多くの日常会話は、その場で原稿を読まずに思いついたままに話しますよね?
相手によって、またはその場のシチュエーションによって、話し方も使う言葉も変わってきませんか?
初めて会う人に、道を尋ねる時に「あのさ~、●●ってどこ?」って聞きます?小学1年生までなら許せます(笑)
毎日、顔を合わせる家族同士や友人との会話もあれば、仕事で相手に不快な思いをさせないように配慮する時の話し方もあります。これが「話し方のTPO」です。他方で、同じ文章でも「言い方」が変われば印象が変わることも、みなさんご存知のはずです。
「ありがとう」あるいは「ありがとうございます」
これを誰かに話す時を例にとってみればすぐに分かります。
文字にすれば「ありがとう」でも、本当に相手に対して感謝があふれるような場合の「ありがとう」と、本当は嬉しくないけれど「社交辞令」で相手に言う「ありがとう」は、芝居をしない限り全然違う「ありがとう」の言い方になるはずです。
楽譜は言語に例えれば「文字」です。文字を並べて意味のある「言葉」にしてさらに助詞などを使って「文」ができます。その文を連ねて「文章」ができます。会話をそのまま文字にすることもできますし、「詩」のように読む人がそれぞれに違ったイメージを持つ文章もあります。それらを読む能力が「楽譜を音にする能力」です。楽器がなにも演奏出来なくても「声」で歌うことができる楽譜もあります。要するに文字も楽譜も「音にできる記号」なのです。
その楽譜を音にして演奏すると音楽になります。一言で音楽と言っても、一度聞いて耳になじむ=覚えられる音楽もあれば、メロディーを記憶さえてきないような音楽もあります。そのことを文字に置き換えると「意味を知らない単語」や「読めない漢字」が該当します。仮にカタカナで書いてある言葉でも意味が分からない場合は多くあります。
「これはファクトです」とか「インバウンドが」などニュースでさえ聴いていて意味が分からない「横文字」?」を耳にする事、ありますよね?
楽譜を音にして「なんだ?これであってるのか?」と思う場合がそれです。
正しく楽譜を音にできたとします。その音楽を聴いて感じる「感情」が部分的、あるいはもっと全体的に、きっとあります。何も気にせずに音楽を聴く場合にそれぞれの音は「聞こえている」だけで終わります。
並みの音を聴いて、海岸や浜辺の風景を想像する…という聴き方と、ただ「音」として聴く場合があります。後者の場合、頭の中で想像するものはなにもありません。同じ音でも感情が絡めば「連想」が出来ます。音楽を演奏しようとする時、ある1小節を演奏して悲しい感情を感じる場合もあります。楽しく感じる音楽もあります。音の高低、リズム、和音を聴いて感じる感情です。
自分の好きな演奏を見つけるために、必要なのは?
・観察力
・音の長さ・強さ・音色を大胆に変えて実験すること
・他人の演奏に縛られない自由さ
・〇〇しなければいけないという発想から離れる勇気
・ミクロとマクロ←以前のブログ参照を考えながら試す
・音は常に時間経過と共に変化し続けることを忘れない
平坦な音楽は、一昔前のコンピューター「読み上げ音声」のようなものです。
言葉を語り掛けるように演奏することが「歌う事」です。
思った表現を可能な限り大げさに試すことが大切です。
自分に感じられる程度の変化は、他人には伝わりません。
絵画に例えるなら、少しずつ色を足す技法より、まず原色ではっきりしたコントラストを確認してから色を薄めていく方法です。
味つけは少しずつ、足していくのが原則ですが音楽は逆に、まずはっきりした味を付けてから薄めていくことが「好きな演奏」に近付けます。
個性的な演奏を目指して、実験をする気持ちで音楽を描きましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介