レガートの中で子音を作る

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 映像はデュオリサイタル13。エンニオ=モリコーネ作曲「ガブリエルのオーボエ」をヴィオラとピアノで演奏したものです。演奏はともかく…素敵な曲ですね。こうした「レガート=滑らかな音のつながり」で演奏する曲の場合に、音の切れ目=発音がはっきりしない(輪郭がぼやける)音になってしまいがちです。レガートだから…と言って「ピンぼけ写真」のような印象になってしまえば、滑らかと言うよりも「もやもやした」音楽に聴こえます。
 演奏するホールの残響時間にも影響を受けますが、まずは演奏自体が「クリアな変わり目」であることが第一です。ポルタメントやグリッサンド、スライドなどで、音の変わり目を意図的に「点」ではなく「曲線」にする演奏技法もありますが、多用しすぎれば「気持ち悪い」「いやらしい」「えげつない」印象に聴こえてしまいます。
 歌の場合、特に日本語の歌詞の場合に「子音」が多く音の変わり目=言葉の切れ目を、聴く側が想像も加えながら聞き取れます。逆に子音が少ない歌の場合や、意図的に子音を弱く歌う歌手の「歌詞」は滑らかですが音の変わり目を、感じにくく、言葉の意味が聞き取れないこともあります。

 移弦を伴うレガートや、1本の弦で大きな跳躍を伴うレガートの場合には、それ以外の場合=同じ弦で2度、3度の進行との「違い」が生じます。
 同じ弦の中でのレガートでも、左手の指で弦を「強く・勢いよく」押さえることでクリアな音の変わり目を出そうとすると、固い音になりがちな上、弦を叩く指の音が大きくなりすぎる場合があります。むしろ、弓の速度・圧力を制御しながら、左手の指の力を抜いて「落とす」ことの方が柔らかくクリアな音の変わり目を作れるように思っています。
 移弦を伴うレガートの場合には、一般的な演奏方法なら「先に二つ目の音を指を押さえて移弦する」のがセオリーです。ただ、この場合に弓の毛が二つ目の弦に「触れる=音が出始める」瞬間に発音しにくくなります。音が裏返ることや、かすれることもあります。だからと言って、弓の「傾斜の変化」を速くすれば、一つ目の音との間に「ギャップ」が生まれます。レガートに聴こえなくなります。
移弦の時、弓の傾斜を変えるスピードは演奏者によって大きく違います。
例えて言えば次の弦に「静かに着地」する移弦の方法と「飛び降りる」ような速度で「着弦」する違いです。どちらにも一長一短があります。
 そこで考えられる方法が移弦する瞬間に、二つ目の音の指を「同時に抑える」方法です。弓の毛が二つ目の音を発音するタイミングと、左手の指が二つ目の音を押さえるタイミングを合わせる特殊な方法です。ずれてしまえば終わり(笑)
左手指で音の変わり目を「作る」ことで、レガートで且つクリアな移弦ができます。とっても微妙なタイミングですが、無意識に移弦するよりも何億倍も(笑)美しく移弦できると思います。お試しあれ!
 最後までお読みいただき、ありがとうとございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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