ヴァイオリンとピアノ

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 動画は以前、私と妻浩子のデュオリサイタル時に、ケーブルテレビ局「むさしのみたか市民テレビ」の取材を受けた際の番組です。
 今回のテーマは、ヴァイオリン演奏とピアノについてです。

 私たちのように夫婦でヴァイオリンとピアノの「デュオ」が出来るケースは多くありませんが、ヴァイオリンだけで曲が完成する音楽は、それよりずっと少ないのです。つまり、ヴァイオリンの曲の多くは、ピアノと一緒に演奏して初めて完成する音楽がほとんどだという事です。
 私自身、中学2年生の時に、師匠の門下生発表会に初めて参加させていただき、ピアノの「伴奏」とレッスンで「伴奏合わせ」をした時の感動を記憶しています。それまで、ヴァイオリンを弾くと言うのは「ひとりで弾く」ものだとしか考えていませんでした。ヴァイオリンの教本や練習曲を練習して、レッスンに持っていき「合格」すると次の曲に進む…。その繰り返しがヴァイオリンの練習でした。
 通っていた公立中学校のクラブ活動で「音楽部」に入り、ヴァイオリンを弾いて合奏する楽しさを、初めて知りました。それでもレッスンは「別物」でした。
 発表会でハイドンのヴァイオリン協奏曲第1楽章を演奏し、少ない伴奏合わせの後、銀座のヤマハホールで演奏したときの緊張感も覚えています。

 音楽高校に進み、年に2回の実技試験や、友人との遊びアンサンブル。その経験から他の人と共に音楽を作る、楽しさと難しさを体感しました。
 親友とのアンサンブルで、光栄なことに、演奏するアルバイトの機会も頂けるようになりました。先輩に声をかけて頂き、室内楽のメンバーに入れてもらって演奏したのも刺激を受ける学びの場でした。
 やがて「人間関係」が「音楽の核(コア)」であることを感じるようになりました。見ず知らずの人とでも演奏は出来ます。練習を重ねる間に、親しくなることもありますが、本当に心を通わせられる人との演奏とは、根本的に何かが違う気がし始めました。
 大学生時代、プロのオーケストラにエキストラとして参加させてもらったり、アマチュアオーケストラでのエキストラ、レコーディングスタジオでの演奏など、お仕事としてヴァイオリンを弾かせてもらえる機会が増えて「間違えず演奏できること」で、次の演奏の仕事をもらえることを知ります。
 それがいつの間にか、レッスンに通って合格し、次の曲を練習することと、大差なくなっていることに気が付きました。
それは私の「不勉強」と心構えの問題です。多くの仲間は、それぞれの演奏で新しい事を吸収していたのだと思います。

 20年間の教員生活を経て、再び演奏をを主体としてヴァイオリンを弾く生活に戻りました。その後、リハビリに多くの時間を費やしました。
 私たち夫婦の演奏で、ピアノを伴奏とは考えていません。
演奏形態として、ヴァイオリン独奏・ピアノ伴奏という「呼び方」は確かにあります。また、曲によっても、そう(伴奏)と呼ぶ曲もあり、ヴァイオリンソナタのように、それぞれが「ヴァイオリン・ピアノ」と独立して紹介される音楽もあります。どんな形式の曲であっても、その曲がヴァイオリンだけでは完成しない音楽である以上、「一緒に音楽を作る」意識が何よりも大切だと思っているから、「デュオ=2重奏」という紹介をしてもらっています。

 ヴァイオリンの楽譜には、ピアノの楽譜は書かれていません。
一方でピアノの楽譜には、大譜表の上段にヴァイオリンやヴィオラの楽譜も書かれています。つまり「スコア」を見ながらピアニストは演奏しています。
私の場合、ヴァイオリンやヴィオラの楽譜を演奏する事は出来ても、ピアノの楽譜をヴァイオリンでも、ましてやピアノでも演奏する技術がありません。一方で、ピアニストは、ヴァイオリンの楽譜を「ピアノ」で演奏することが当たり前のように出来るのです。
 私の場合は、自分のパートを弾けるように覚えるまで練習します。
その曲の「音源」がある場合は、色々な演奏を聴いて、自分の「弾かない音」を確かめます。音源がない場合、妻のピアノを聴いてそれを確かめます。
 そのうえで、改めて自分のパート(ヴァイオリンやヴィオラ)を練習しなおします。さらに、ふたりで一緒に弾きながら、修正をお互いの楽譜に加えていきます。

 信頼関係とお互いを認められる気持ちがなければ、ひとつの音楽は完成しません。
 それ以前に、ヴァイオリニストは自分以外の「楽器」と一緒に演奏することを前提にして練習することが不可欠なのです。
 自分「だけ」で弾けるだけでは「アンサンブル」は出来ません。
自分が弾きながら、ほかの人が何を弾いているのか?どんなリズムでどんな和声になっているのか?を聴きながら演奏する「余裕」を持たなければ、音楽が完成しないのです。ピアノを弾ける必要は、絶対とは思いませんが、せめて自分のパートを「暗譜」するぐらいの練習は必要な気がします。
 あくまでも、アマチュアの場合の話です。プロはその技術を身に着けているから「プロ」なのだと思います。暗譜しなくても、他の音を聴く技術や、楽譜を注視しながら音を聴く能力です。聴音、ソルフェージュなどの「トレーニング」は、演奏家を目指す人なら、絶対に必要不可欠だと思っています。それを学ばずに卒業できる「音楽学校」に大いに疑問を感じます。

 長くなりましたが、音楽を楽しむ以前に、挫折してしまう人が多いのが趣味の音楽です。特にヴァイオリンは、ひとりで練習していて「つならない」と感じて当たり前なのです。ピアノのように和音が演奏できるわけでもなく、音の高さが定まらず、高さを考えれば音色が汚くなる…うまくなった実感が持てない楽器だからこそ、ぜひ!ピアノと一緒に演奏する「感動」を味わってください。
その楽しみを得るために、楽譜を見なくても弾けるようになることを目標にするのも、モチベーションの維持につながると思います。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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