音楽の印象を変える演奏方法

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 映像はデュオリサイタル10で演奏したピアソラのリベルタンゴです。
すべての音楽は演奏者によって異なります。仮にまったく同じ楽譜を演奏したとしても演奏者が違えば、テンポも音色も音量も違って当たり前です。
 同じメンバーで同じ楽譜を演奏しても、弾き方を変えれば印象は変わります。
リベルタンゴは過去に何度も演奏してきました。また11月の木曽町でも演奏しようかな?と思って過去の自分の演奏を見直しています。

 こちらのリベルタンゴはデュオリサイタル4で演奏したときのものです。
冒頭の演奏と聴き比べて頂くと、違いを感じて頂けるかと思います。
楽譜はデュオリサイタル4で演奏したときのものがベースです。このアレンジに手を加えたのがデュオリサイタル10の演奏です。楽譜が違うだけ?ではありません。アクセントの強さ、音色も変えた「つもり」ですが(笑)
 好みが分かれることはどんな音楽を演奏しても、聴いてもあって当然です。
演奏者が演奏の「スタイル」を変えることは、リスクを伴うものです。YOUTUBEでもCDでも、同じ演奏が気に入れば何度も繰り返して聴いたり見たりするものです。演奏の細かい部分までが聴こえるようになることも珍しくありません。その演奏の「個性」として感じるようになります。言い換えれば「特定の演奏が好き」になることです。そのお気に入りの演奏に期待して、ライブ=コンサートでの生演奏を聴きに行ったひとが「違和感」を感じることもあります。「ライブあるある」なのですが、ポピュラー音楽でもこの話題は耳にします。歌手、演奏者によっては「ライブだからこそCDと違う演奏を聴いてほしい」と考える人と、逆に「CD=以前の演奏とと同じ演奏を心掛ける」人に大別されます。演奏者の「考え方」の違いです。クラシック音楽でも珍しい話ではありません。演奏するたびに「変化」するのが自然だと思っています。それが仮に「一か月」という短い時間経過であっても、演奏は変わるものだと思います。
ましてや何年も経てば、演奏者自身の成長と変化があります。成長は年齢とは無関係ですが、肉体的な衰えがあるのも極めて当たり前のことです。衰えた筋力や運動能力を「経験」で補い成長することもあります。

 弾き方を変える「理由」にはどんなことがあるでしょう。
ただ思い付きで「行き当たりばったり」に代わるのはむしろ練習不足だと言えます。練習の段階で、今までのひき方に疑問を感じる場合もあります。さらに年齢を重ねて「感じ方」が変わる場合もあります。若いころには魅力を感じていなかった曲の「良さ」を感じたりします。逆の場合もあります。単に「飽きた」という事ではなく、魅力が薄れて感じられる場合も珍しくありません。
 演奏方法がいつも変わらない人を「悟りを開いた」(笑)ある領域に到達した人だと見ることもできます。聴く側にすればそれでも問題ありません。好きな演奏をいつでもしてくれるのですから(笑)つまり「特定の演奏」が好きになるのは「録音された音楽」でしかありえないのです。それを演奏者が生演奏で再現する必要があるでしょうか?録音と同じ「音」を生の演奏会場で完全に再現することは、物理的に不可能です。CDとまったく同じ「音」の演奏をライブ=生演奏に期待すること自体が間違っています。ライブの「良さ」は、その瞬間の良さです。再現は出来ないのがライブです。私自身が、自分たちのライブ映像をたくさんアップしている理由の一つはそこにあります。
 クラシック音楽は「生演奏」こそが楽しめるものだと思うようになりました。
その自分が演奏会で、どんな演奏をするのか?を自問自答しています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

 

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