音楽の形容詞

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国語のお時間です(笑)
音楽の演奏を表現する時、「じょうず=うまい」とか「すごい」とか「素晴らしい」などの言葉を使いますよね。形容詞とは「物事の状態や性質が「どのようであるか」を表現する言葉です。現代日本語における形容詞は、例え「かわいい」美しい」のように終止形が「-い」で終わる語形であり、もっぱら述語」または「連体修飾語」として用いられます。」だそうです。
今回は特に「音色」と「演奏の印象」を表す言葉について考えてみます。

一般的に色とは、視覚的なことを現します。音の色とは?
実際には目に見える「色」のことで無いことは確かです。
音を色に例えて表現する、それが仮に「音色」の意味だとします。
明るい・暗い・淡い・グラデーション・暖かい・深い・濃い・薄い
などの他にも「色」を表す言葉があります。
音を表現する際に、これらの言葉を使うのは、とても面白いことだと思います。
色の表現以外にも、人間には五感と言われる感覚があります。
視覚・聴覚・嗅(きゅう)覚・味覚・触覚の五つの感覚です。
聴覚が音と深い関係なのは当然です。
嗅覚。香りや匂いを表すときに「〇〇のような香り」例えば「バラの花のような香り」とか「にんにくの香り(むしろ匂い?)」、嫌な臭いは「くさい」と表しますね。演奏を聴いて、香りを連想することは、あまり…ほとんど無いかもしれません。でも、人間の記憶の中には「香りの記憶」が強く残ることがあります。
母親の使っていた香水の香り。父親の香りは…マンダムだったり(笑)
好きな香りを想像させる「音」もあってよさそうです。
四つ目の「味覚」は、どうでしょうか?
甘い・からい・酸っぱい・にがい・しょっぱい
甘い匂いという表現がありますから、もとより味覚と嗅覚は近い感覚とも言えます。味の表現は、音色の表現と似ている面があります。
ちょうどいい甘さ
思い浮かぶと思います。ヴァイオリンの音を聴いて「心地よい」と感じる時、自分にとって「ちょうどいい塩梅(あんばい)」だという意味でもあります。
人によって、好みの甘さ加減、塩加減が違います。音色でもそうです。
ちょっと辛すぎる「音」や、甘すぎる「音」もあるように思います。
最後の「触覚」は、音の表現に持って来いです。
柔らかい・固い・暖かい・熱い・冷たい・滑らか・ざらざらした・吸いつくような・湿った・乾いた
他にも色々思いつきますが、これらの「触覚」を表す言葉の後に「音」とか「演奏」「音楽」を付けても違和感がありません。
暖かい羽根布団のような音
吸いつくように滑らかな音
固く冷たい音
いかがでしょうか?

私は自分の音や演奏を考える時に、出来るだけ想像しやすいイメージを思い浮かべます。
もっと「優しい手触りの音にしたい」とか「アツアツでガツンとした味付けにしたい」とか、「聴いていて涙が出るような演奏をしたい」など。
理想でしかありませんが、単に「大きく」とか「きれいに」「速く」ではないイメージのほうが好きです。結果として「心地よい演奏」だったり「惹きつけられる音」だったりすることを目指しながら。
生徒さんにも、わかりやすいイメージを伝えたいと心掛けています。
人間は必ずしも五感が揃っているとは限りません。
その人なりの「イメージ」があるはずです。そして、多くは自分の記憶の中にある「感覚」に頼っています。悲しかった思い出や、懐かしいと思う香りや手触り。自分の五感で感じたものを「音」「音楽」にして、人に伝えることは、とても楽しいことです。できないけれど「おいしい料理」をお客さんに食べてもらったり、良い香りの香水を作ったり、手触りの良い食器や布を作ることに似ています。
音楽が「人間の記憶を呼び起こす」芸術だと思っています。

視覚の代わりに嗅覚が強いヴァイオリニスト 野村謙介

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