なぜ?なぜ?ヴァイオリンアレンジ「謎のオブリガート」&「重音の嵐」

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 映像は、デュオリサイタル13での、ドボルザーク作曲「スラブ舞曲第2週より第2番」をクライスラーがアレンジしたものです。多少、アレンジをアレンジしてます。ご存知の通り、オーケストラで演奏される機会の多いこれらの音楽を「ヴァイオリンとピアノ」用にアレンジされると、どうして?なんで?と言いたくなるほど「重音だらけ」になったり、やたらめったら(笑)ヴァイオリンに「ヒャラヒャラ~」「ピロピロリ~」ってなオブリガートが出てきます。これ、嫌いなんです!(正直者)

 原曲がどうであっても、ヴァイオリンとピアノが演奏するための「楽譜」なら、それぞれの楽器の「良さ」だけ引き立てたアレンジで良いと思うのに、「こんなこと、できるんだよ!」とか「こんな技もあるんだよ!」挙句の果てに「すごいでしょ!」と言わんばかりのアレンジがやたら多いと思う私たち夫婦です。作曲家の書いた美しい旋律を、ヴァイオリンかピアノが演奏するしかないわけです。旋律をヴァイオリンが主演奏するのが自然だと思うのです。ピアノが主旋律を演奏するところで、ヴァイオリンを「休み」にしない理由が私たちには理解不能です。ず~っと二人とも、なにかひいていないと「死んでしまう」みたいな(笑)

さらに多いのが、このスラブ舞曲のような「重音の嵐」が吹き荒れるアレンジです。そもそも!ヴァイオリンって重音「も」演奏できる旋律楽器のはず。2パート分「ひけるよね?ね?」って強引に書かれてもなぁ…と思うのです。
 重音の良さは確かにありますが、2パート=2声部を演奏することで「失われる良さ=デメリット」があることをアレンジする人には考えて欲しいのです。
 私は少なくとも、一つの音=単音で演奏する弦楽器の音が好きです。二人の弦楽器奏者が演奏したときの「響き」と「重音」はまったく違うのです。
バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタや無伴奏パルティータのように、明らかにヴァイオリン1丁で「ポリフォニー」を演奏する試みをした曲には、美しさがあります。それと一緒にしないで欲しい!

「なんとなく重音ってカッコイイ」のでしょうか?「うまそう」なのか「むずかしそう」なのか。良くわかりませんが、派手ならいい!というのであれば、エレキヴァイオリンで演奏すると、めっちゃ派手な音にできます。乱暴に「ガシガシ」弾くと「情熱的」で「魂の演奏」なんですか?笑っちゃいますけど。
 ヴァイオリンの新しい可能性?のつもりなら、すでにバッハ大先生がやりつくされていますのでぜひ!弦楽器を「声楽」と同じように考えて頂き、アレンジをしてほしいと思っています。そして、聴く側も「もの珍しさ」ではなく、楽器の個性と演奏者が奏でる「楽器の声」を楽しんで頂きたいと思っています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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