想像力をふくらませよう!

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 映像はだいぶ前のデュオリサイタルで演奏した、ピアソラのリベルタンゴ。
アレンジがシンプルでカッコイイ!のに楽譜はすでに絶版です(涙)
この演奏に限りませんが、楽譜に書かれた音符と休符、強弱、速度などの指示「だけ」で演奏しても、楽器の個体差による音色と音量の違いしか「演奏による違い」は出せません。演奏するホールの響き、聴く人の感性によって生まれる「違い」は演奏とは別のことです。作曲者の「想像力」と演奏者の「想像力」、聴衆の「想像力」それぞれの人によって違う「イメージ」があります。
 演奏者が楽譜を音楽にしながら、想像する「イメージ」について考えます。

 まず「想像」と言う言葉から連想されること・もの←これも想像力です。
・空想・幻想・妄想・仮想・発想・着想・発明・創意工夫などなど
中には、ネガティブな印象を受ける言葉←これも想像…もありますよね。
「想」と言う文字が入る言葉には、人間の頭で考えると言う意味があるように感じます←これまた想像。私のブログでも「思う」という言葉が多いのは、断定できない・逃げの表現と言う意味合いもありますが、普段の会話の中で何気なく「想像」で相手に話していることの方が多いのではないでしょうか?

 音楽を演奏する時に働かせる想像力は、音楽表現の個性に繋がります。
具体的なものや風景・人物や出来事を創造するとは限りません。私の場合、ほとんどは抽象的で漠然とした「感情」のように思います。
 もちろん、演奏する場所や音楽によっては「母」を思ったり、勝手な登場人物を創造したり(笑)、風景を創造することもあります。
 たとえば、上の動画のリベルタンゴを演奏している時に想像していること…
「情熱的な…なにか」「瞬間的な動き」「い音的なズレ=重さ」「昇り詰める感情」「イレギュラーなアクセント」かな?
 楽譜に師事されていない「ポルタメント」は、その場所を何度も練習している時に試しにやってみて(笑)、自分の想像するものに近いと思えば「採用」しています。それが「邪魔!」と思う人もいらっしゃって当然です。

 以前にも書きましたが、私は「ラジオ」が好きです。テレビに比べて自分で勝手に想像できる「人物」「風景」「もの」「色」があるからです。音だけで表現できないことがあるのも事実ですが、逆に音は「視覚に頼らない」想像力が働きます。文学もラジオに近い想像力が働きますよね。人間の五感の中で、嗅覚」「味覚」「触覚」を伝えられないのがテレビ、ラジオ、文字です。もちろん電話も同じです。いつかこれらの感覚も伝えられるようになるのでしょうね。でも、私は自分の想像力で香りや味を想像する方が好きです。
 梅干を見ると唾液が出る現象を、「パブロフの犬」と言いますが人間の記憶で条件反射的に体が反応することを指しています。
同じように自分が「泣いた記憶のある音楽」を聴くとその時の記憶が呼び起こされます。おそらくその「記憶の繰り返し」はDNAとして遺伝しているのではないかと思います。動物の本能もその一つです。危険!と感じると反応する身体は、教わらなくてもできるのです。

 音楽を聴いて「悲しさ」「楽しさ」「激しさ」「穏やかさ」を感じる理由は、短調か長調かの違い、テンポの違い、同時に演奏される音・楽器の数、などが考えられます。
演奏する曲の楽譜を、指定された楽器で、指定されたテンポ・強弱で演奏した場合に、感じる印象は人によって多少の違いはあっても、それほど大きな差は無いかもしれません。つまり「想像されるイメージ」がそれほど大きな差がないことになります。その先にある想像力って、どんなものでしょうか?

「妖艶」「虚(うつ)ろ」「苦悩」「甘美」などの形容詞で表す感情があります。多くの場合、年齢経験を重ねる中で感じる感情かも知れません。
小学生に「妖艶」なイメージを理解しろと言ってもねぇ(笑)
 音楽を聴いて特定の「風景」「場面」を想像するのは、記憶とつながっている場合です。たとえば、スキー場で良く流れている「歌」があります。その歌を聴くと、スキーを連想する人もいます。サザンやチューブの音楽を聴くと夏の海岸を連想したり、聴いたことのない音楽でも、なんとなく想像する場所や風景があるのも不思議です。

 音楽から連想するイメージは、人それぞれに違います。演奏者の想像力が聴衆に伝わらなくても、それは表現力が低いからではありません。
 演奏する人が何も感じない音楽だとしても、聴いている人が勝手になにかを連想するかもしれませんが、演奏しながら自分の「イメージ」を持つことは大切だと思います。単に「音」としてではなく、演奏しながら感じる感情を「探す」能力も必要だと思います。教えてもらえることではありません。その人の体験や記憶は、その人にしかないのです。なにも感じない…「無色透明」「無味無臭」な音楽はないと思うのです。演奏しながら想像力を膨らませていく「感性」こそ、音楽の個性です。感情のない演奏は、香りのないコーヒー(クリープではない)です。自分の好きな風景や、香り、草花、絵画、手触り…なにを想像しても構わないのです。もとより、音楽は「聴覚」で感じるものです。それ以外の五感を連想することも、人間の想像力なのです。
 ぜひ、演奏しながら想像力をふくらませて、新しい魅力を探してください。
最期までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介
 

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