クラシック音楽は古い音楽?

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 映像は、ぷりん劇場第4幕より「Mr.Lonly」をヴィオラとピアノで演奏したものです。50年ほど前にこの曲に出会いました。
 クラシックという言葉には、いくつもの定義があります。「長い年月を経たもの」と言う意味もあります。
音楽の世界で「クラシック音楽」と言われる音楽があります。それらは、現代の音楽の「土台」になった音楽でもあります。

 「クラシック音楽は嫌い」と言う人が、「ロックやポピュラー音楽は好き」と言うケースがあります。それらの人にとってのクラシック音楽のイメージは様々です。多くは「古臭い」「長い」「つまらない」などの感覚だと思います。
 演奏する姿を考えれば確かに、クラシックの演奏会とポピュラーのコンサートは明らかに違います。「見る楽しさ=見せる演出」の有無です。
 ただ、クラシックでもオペラの場合は、見る楽しさもありますが、多くの演奏会は「無心に演奏する演奏者」を「明るく照らす照明」だけですよね。

 音楽そのものの「音=サウンド」で比較してみます。
クラシック音楽とポピュラー音楽の大きな違いは?
・楽器の役割=クラシックの場合、リズム楽器という概念がありませんが、ポピュラーの場合はドラムセット、ピアノ、ベースなどが音楽のリズムを作る基本になっています。
・音量=クラシック音楽の多くは、ポピュラーよりも大きな「音量変化」が1曲の中にあります。逆に言えば、ポピュラーの場合は、1曲の音の大きさはあまり変わりません。
・演奏される楽器の種類=ポピュラーで使われる「シンセサイザー=電子楽器」は一つの楽器で多くの音色を演奏できます。しかも一人で操作・演奏できる楽器です。クラシックの場合、オーケストラではそれぞれの楽器を一人ずつの人間が演奏するので、楽器の種類を考えてバランスをとるためにさらに多くの演奏者が必要になる場合もあります。
・1曲の演奏時間=クラシックの場合、どこまでを1曲とするのかにもよりますが、明らかにポピュラー音楽よりも演奏時間は長い曲がほとんどです。ポピュラーの場合は、レコード片面に収まる演奏時間がひとつの基準になりました。また、テレビで多くの歌手を出演させるためにも「時間制限」が設定されていました。クラシックに「演奏時間」の基準がないことも、「クラシックは長い」と思われる要因だと思います。

 クラシック音楽があったから、現代の音楽が生まれてきたことは紛れもない事実です。それを否定するのは「無知」でしかありません。コードネーム一つを取って考えても、バッハの時代に築かれた「技法」に英語で名前を付けただけです。ジャズは自由な音楽です。クラシック音楽は「楽譜」に従って演奏しますが決して「不自由」な音楽ではありません。ジャズの演奏をクラシック音楽のように「楽譜」にすることができるのがその証です。どちらが優れているかと言う問題ではありません。それぞれに異なった「自由」があるのです。
 違う言い方をすると、ジャズピアニストの中には「楽譜通りに演奏するのはとても難しい」と言う人もいます。クラシックピアニストの中には「楽譜のない状態で曲を作りながら即興で演奏するのは難しい」という人もいます。両方できる人もいます。違った難しさがあるのです。どちらかを学び、極めた人には、それがわかります。

 歴史的に考えれば、現代の音楽=ポピュラーの基礎を作ったのは、クラシック音楽です。音楽が進化し変化することは、今に始まったことではありません。
クラシック音楽が「出来るまで」にも様々な音楽があったのです。
 演奏する楽器の種類が違う。1曲の長さが違う。演奏会での演出が違う。歌い方=演奏豊富尾が違う…などなど、違う点はたくさんあります。
 クラシックと言うから「古い」と言うイメージがついてまわりますが、それぞれに違った音楽である「だけ」で、古いだけではありません。古いと言うなら、ミスターロンリーはクラシックです(笑)言葉の「落とし穴」ですね。
 音楽以外にたとえるのは難しいですが、フルコースの料理で出てくる「順番」があったり、懐石料理でそれぞれに「名前」があったりします。これも一種の決まり事です。それにとらわれない料理もあります。
 モノづくりにも言えます。伝統的な手法と工程で作られるものもあれば、機械化で短時間に作られる「同じようなもの」もあります。手作業で作られる車もあれば、ロボットがほとんど作る車もあります。伝統的な踊りや歌、料理や日用品、建物がどんどん消えている現代に、悲しさを感じます。
「便利な方がいい」のは確かです。「新しい方がいい」と決めつけるのは間違いです。不便だから古いものは壊す、捨てると言うのも間違いです。
 先人の築いた「文化・芸術」を古臭いと切り捨てることは、人間のおごりです。もっと、古きよきものを大切にする「心」を持ちたいと思っています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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