クラシックコンサートに期待されるもの

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 演奏は、ヴィオラとピアノで演奏した、バッハのG線上のアリアです。
今回のテーマは、お客様がクラシックコンサートに期待することを考えたいと思います。演奏する側が本来、一番考えなければいけないことだと思います。

 大きく分けて二つの期待があります。
1.音楽=曲への期待。
2.演奏=演奏者への期待。
 クラシックのコンサートで演奏される曲は、多くの場合はすでに誰かがどこかで演奏している曲です。またこれもほとんどの場合、多くの演奏者が同じ音楽を演奏しています。聴く側の立場を考えると、曲名を見て「知っている」レベルが様々です。タイトルだけ聴いたことがある曲、タイトルを見ても曲が思い浮かばない音楽、一部分だけ知っている音楽など人によって大きく違います。
 第九を例にとれば、終楽章の「有名な」部分だけを知っている人は多くても、1楽章を聴いて「あ、第九だ」とわかる人は圧倒的に少ないはずです。
クラシック好きであれば話は別ですが、「曲名」だけに期待する人の場合、有名なタイトルの曲にしか「期待」しないのが現実です。
 ヴァイオリンとピアノでコンサートを開く場合、多くの人が知っている曲を選ぼうとすれば、どのコンサートもほとんどが同じ選挙区になるでしょう。
 有名どころを挙げてみます。
・ツィゴイネルワイゼン
・スプリングソナタ
・愛の挨拶
・タイスの瞑想曲
これでさえ、すでに怪しい気がしますが、さらに
・愛の喜び
・G線上のアリア
当然、いくらでも思いつきますが、タイトルを知っている曲はこの程度ではないでしょうか?
 それだけでコンサートを開くのが正しいとは思っていません。現実の問題です。

 演奏や演奏者に期待してコンサートに行く人を考えます。
・演奏者をテレビで見て演奏者に会えるのを期待する
この場合、日本では数人の演奏者に限定されるでしょうね。
・チラシの「経歴」に期待する場合
以前に書きましたが、これは案外大きいですね。
・誰かからの紹介=口コミで期待する場合
いわゆる「リピーター」から誘われていくケースです。
・チラシの写真が「かわいい」「かっこいいい」
どの程度いるのか不明ですが。関係ないとは思いません。
 知っている曲をどんな風に演奏をするのかに期待する場合と、演奏者を知っている=その人の演奏を聴いたことがあって、曲目より演奏者に期待する場合があります。

 クラシック以外のコンサート=ライブの場合だと、多くの場合はアーティストをテレビやCDで知っていて、生で聴いてい見たい、あわよくば見てみたいという「期待」です。どんな曲を演奏するのかも、大事ですがむしろ「生で聴く」ことに満足して帰るファンがほとんどです。その点がクラシックの演奏会と大きく違う気がします。一言で言えば、クラシックは「曲または演奏に期待する」ポップスは「歌手・アーティストを生で感じることに期待する」と言えます。

 演奏者自身が聴衆に演奏を期待されなければ、演奏家として生活していくことは不可能です。自分以外の人の演奏と、自分の演奏の違いを聴いてくれる人に伝える方法は、自分の演奏を一人でも多くの人に知ってもらうしかありません。
 昔はテレビかラジオしか方法はありませんでした。いまはインターネットと言うツールがあります。Youtubeは誰でもいつでも「ただ=無料」で音楽を聴いたり見たりできます。その現代にお金を払ってチケットを買い、交通費と時間をかけてまで「コンサート」に来てもらうのは、至難の業ですね。
 無料で見られる・聴くことのできる演奏と、コンサートで聴くことのできる演奏との違いを知ってもらうことが不可欠です。
録音された演奏や配信では感じられないものは「コンサートの空間」です。
・ホールの広さ=反響・残響
・演奏者との距離=直接音と反射音の融合
・ヴァイオリンとピアノ、それぞれの音の広がり方と伝わり方の違い
どんなにヘッドホンやスピーカーの性能が良くても感じられない、臨場感=リアルな空気振動がコンサートの魅力です。
会場が変われば音が変わります。同じ会場で演奏者が変われば、音楽も音色も変わります。同じ会場で同じ人が演奏しても、その時々で演奏は違います。
いつも同じ音色で再生される「機械の音」とは違う、「そのコンサートだけの音楽」こそが、生きている人の演奏=ライブです。

 クラシック音楽の演奏は、人間の奏でる音楽です。ジャズも同じです。
ロックやポップスの音楽は、ライブもスピーカーからの音で聴きます。
機械を通さないアコースティック=自然な音を楽しめるのが、クラシックコンサートです。
 一人でも多くの人に、生演奏の良さを体感してもらえるように、無料の音楽配信でクラシック音楽をもっと広めることが求められていると思っています。
ヴァイオリンのコンサートは面白いぞ!
最期までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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