暗譜?楽譜見えなくても?

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皆様、いかがお過ごしですか?
今年も冬の恒例行事「デュオリサイタル」のシーズンが到来しました。
今回で13回目になります。何が変わって、何が変わらないのかな?

楽譜を見ながら演奏できなくなった事が一番変わったことの一つ。
そこで、今日は私自身の「音楽の覚え方」について。

タイトルに書いたように楽譜を見ずに演奏することを一般的に「暗譜」とし言いますね。私は40歳ごろまで、視力が矯正すれば片目で0.4か0.5ありました。自動車の運転免許も辛うじて更新できていました。
楽譜を見て演奏することも出来てました。学生時代、オーケストラで初見演奏することも出来たので、プロオーケストラでエキストラのお仕事もさせてもらっていました。言い換えれば、その位の視力がありました。

13年前の第一回リサイタル当時、楽譜を見ながら演奏しました。
暗譜もしていましたが「保険」として譜面台を立てていました。
その後、次第に網膜色素変性症が進行し、視力も下がりました。運転免許の更新も諦めました。その頃から楽譜を覚えて演奏する「暗譜」で演奏する事になりました。楽譜を読みながらヴァイオリンを弾いて、楽譜を覚えて演奏することが「暗譜」です。

生まれつき全盲の演奏家がたくさんおられます。私にとって、その方たちの「音楽の覚え方」は想像でしかありません。ある方は点字楽譜という「楽譜」を覚えて演奏されているのだと思います。指で点字楽譜を読み取っては楽器を弾いて覚え、また指で…の繰り返しなんでしょうね。すごいことだと思います。演奏だけ聞けば、その方が全盲であることなど微塵も感じさせない演奏をされていることも驚愕の一言に尽きます。

今、私が演奏会に向けて練習する時の「音楽の覚え方」ですが、
音楽を聴いて覚えきれないような複雑な曲の場合には、楽譜の数小節を拡大し、その部分だけを覚えていく方法で「暗譜」します。コピーの拡大機能を使う場合には、1曲の楽譜がA3用紙で20枚とかになることもあります。
自分が演奏している音が楽譜のどのあたりにある音なのか、覚えることはありません。昔はそれも記憶の中にありました。

この頃は、演奏したい曲の「音のられつ」を記憶しているようです。
一音ずつ、音に係わる情報を覚えていきます。
・音の高さと音名・音色と強弱・弦の種類やポジション・弓の場所など。
その情報を覚えながら無意識でもそれが連続するまで繰り返します。ある意味「無理やり覚える」方法でもあります。厳密にいえば「暗譜」ではないですね。

先ほど書いた全盲の方の音楽の覚え方とも違うのかもしれません。点字も知らないので。一番、効率の悪い覚え方かもしれません。
何よりこの病気は、人によって病気の進行速度も程度も違います。
そのことが私たちは不安を与えます。見えなくなる日が来る不安。生活できなくなる不安。今できていることが、だんだんできなくなる不安は、以前出来ていたことが出来なくなった「絶望感」にもつながります。
全盲の方に比べても何の意味もないのですが、次第に見えなくなる不安は、それなりに大きなものです。

音楽を強引に覚える作業をするのは、自分の不安との戦いでもあります。
イラついたことも正直にあります。たかが!たかがこんな短い旋律が覚えられない。間違える。楽譜が見えれば、こんな曲なんでもないのに!
そのストレスを超えなければ新しい曲は弾けません。いつか、楽譜をまったく読めなくなる日が来たら?点字楽譜を習って覚えるのかな?それもありですよね。

私は、「覚えられる範囲の曲だけ弾こう!」とわがままに思っています。点字を読めなくても、聴音と暗譜の技術を使えば頭の中に楽譜を思い描けます。学生時代、大嫌いだった聴音です(笑)が、やっていて本当に良かったと本心で思います。耳コピが楽譜を頭に作れれば、演奏できるはずです。


楽譜を覚えるのが暗譜ですから、音の情報を丸暗記するのは?
あんおん?
アンマンみたいでダメか。
今回のリサイタルで、演奏する曲たちもこうやって覚えた音楽たちです。
もし、ご興味があって「しょうがないから行ってやろう」という、心優しい方(笑)がおられましたが、ぜひ!12/20(日)相模原のもみじホール(城山文化センター)か来年1/9(土)代々木上原ムジカーザに足を運んでいただけたら本当にうれしいです!
心優しい方へのご案内ページはこちら
http://www.merry649.com/duo/
をご覧ください。皆様のご来場を心からお待ちしております。
ヴァイオリニスト 野村謙介


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