ヴァイオリンの基礎練習?

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 映像は2002年1月のメリーオーケストラ第1回定期演奏会。ふるさとを演奏する子供たちとプロの演奏家仲間です。
 今回のタイトルに基礎練習「?」とわざわざクエスチョンマークを付けたのには理由があります。Youtubeでこの言葉を検索をすると、山のように動画が見つかります。すべてを見たわけではありません。ただ、私に独自の考え方があるので、そのことについて書きます。

 たとえば、家を建てる時に基礎を作ります。
基礎だけでは人が生活することは出来ません。基礎の上に建物を作るためにあるのです。
 ヴァイオリンの基礎練習。何のために?基礎を作るのでしょう。
そもそも、ヴァイオリンの基礎とはどんな技術の事を言うのか?実は明確な定義はありません。むしろ、人によって基礎と思うことが違うのが当たり前です。
「基礎の練習をしないとうまく弾けない」とか「難しい曲を弾けるためには基礎が必要」とか。実にあいまいな言葉です。

 メリーオーケストラで演奏している子供たちは、演奏を楽しむために集まった子供たちです。決して練習するために…とか、上手になるために集まった子供たちではありません。演奏を楽しむために必要になる技術は、本当に様々ありますがざっくり言えば「弾ければ楽しめる」のです。しかも、誰かと一緒に弾くことは、ヴァイオリンという楽器の特性でもあり、ピアノと違う「合奏することを前提に作られた楽器」でもあるのです。一人で悶々(笑)と音階と練習曲と伴奏抜きのコンチェルトソロを練習しても、楽しいと思えないのが当たり前です。
 ピアノは一人で演奏を完結できる曲がほとんどです。ヴァイオリンは違います。無伴奏の曲はごく一部です。ヴァイオリン以外の楽器や何人かのヴァイオリンで一緒に演奏することが、本来のヴァイオリンの楽しみ方と言っても言い過ぎではありません。
 つまり「一緒に演奏する」ことが「建物」であり、その演奏の幅を広げるために必要になる技術が「基礎」だと思っています。

 極論すれば、一緒に演奏しながら上達できるなら、自然に基礎練習もしていることになります。事実、20年間、部活動オーケストラの練習で「基礎練習」は行いませんでした。メトロノームに合わせて合奏練習するのを「基礎」と勘違いしている団体が多いのですが、まったく効果はありません。むしろ時間の無駄です。
 合奏に参加するために、楽譜を覚えて演奏する。これ、無理だと思う人が多いのですが、皆さん小学校、中学校で合唱をした時、楽譜を読み名がら歌っていましたか?ほぼ100パーセントの子供が、自分の歌う歌詞とメロディーを「覚えて」歌っていたはずです。つまりは、覚えること自体は、それほど大変なことではないのです。むしろ、歌えない=弾けないことのほうが難しかったはずです。
 ほかのパートにつられて歌ってしまった記憶はありませんか?
楽器の演奏でも同じです。演奏できると言っても色々なレベルがあります。
どのくらい正確に、そのくらい綺麗な音で、どのくらい思ったように弾けるか?
それらを出来るようにするのが「基礎練習」です。
 どんなに音階だけが正確に弾けても、リズムがわからなかったり、音が穢かったり、音が小さすぎたり、音量を変えられなければ、合奏で他の人と一緒に演奏して満足できないはずです。
 一人でいくら上手に弾けても、他の人に合わせられなければ、合奏できません。自分以外の音を聴きながら、自分の音を聴き、ピッチや時間を合わせる技術は別の技術です。

 では合奏だけしていればうまくなるか?と言うと少し違います。
合奏するために必要な色々な技術をすべて短期間に身に着けることは無理です。
オーケストラで演奏する曲のすべての音をきちんと弾けるのは、おそらく特殊なトレーニングを受けた人です。下の動画をご覧ください。

 メリーオーケストラ第39回定期演奏会での演奏です。
この中のヴァイオリン、全員がすべての音を弾いている…
 いや?弾いていません。と言うか弾こうとはしていますが、現実には弾けているのは数名のプロだけです。「そんなこと言っちゃっていいの?」と言われそうですが、何も問題にしないのがメリーオーケストラなのです。弾けるように頑張ろう!と練習はしています。でも現実には無理です。では、この演奏は「へたくそ」でしょうか?もちろん、プロのオーケストラのような正確さはありませんし、傷だらけです。いくらプロの仲間や音大生が入ったとしても、オーケストラ全体で言えば傷はたくさんあるのです。それでも決して「へたくそ」と言い切れないと、プロのヴァイオリニストの私自身も思います。手前みそ…もありますが、本当に一生懸命演奏しようとする音、何よりもお客様の前で多くの仲間、プロの人と演奏できる「喜び」が音に出ていると思うのです。
 演奏がうまい…と言うのは、ただ間違えないだけの演奏ではありません。
それに気づくことができるのは、自分が誰かと一緒に演奏した時なのです。
評論家が偉そうに言うのは簡単です。自分が演奏を楽しんだ経験があれば、人さまの演奏に偉そうにコメントすることを職業にできないと思うのですが。

 結論。ヴァイオリン演奏技術を上達させければ、一緒に誰かと演奏することです。ひとりで練習できるようになるのは、演奏の楽しさを知ってからで十分です。基礎練習は誰かと一緒に演奏を楽しむための技術を「身に着ける」練習です。ボーイング=弓を動かす練習、音階、ポジション移動、指の独立=右手の速い運指、など。一緒に演奏を楽しむための技術なら、練習しても良いですよね?
基礎だけの音楽は、地球上に存在しません。
以上、すべて「個人の考え」でございました(笑)
気を悪くされた方、ごめんなさい。

NPO法人メリーオーケストラ創設者・理事長・指揮者
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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