弓を選ぶ

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今回はヴァイオリンの弓について。


ヴァイオリンの音を出す仕組みを考えてみて下さい。

弦を弓の毛で「こすって」音が出ます。当たり前!と思いがちですがもう少し深く考えてみます。

弦を指ではじいて音出すピチカートをするとき、弦を横に引っ張って離した瞬間、弦は横に振動して音を出します。

強く引っ張れば大きいピチカート、弱く引っ張って離せば小さなピチカートの音がでます。


当たり前?


それでは弓の毛でこすって音を出すときには、どうでしょうか。



「どうしたら大きな音が出せる?」という問いに

「弓を速く動かす」「弓をたくさん使う」と答える生徒さん、特に中学生・高校生のオーケストラ部員が答えてくれます。


実は「強くこする」ことが正解です。


弓の毛と弦は摩擦で音が出ることは想像できますが、よく考えると少し「ん?」と思うことがありますよ。

弓でダウン(下げ弓)の状態で音を出すとき、弦は演奏者から見て右側に引っ張られ「続ける」ことになりますよね。あれ?ピチカートの話で弦が左右に振動して音が出ることは書きました。あれれれれ?


いつ、弦は左に戻り、また右に(ダウン方向)に引っ張られているのでしょう?


みなさんご承知のように、弓の毛の表面にある凸凹に、粘着質(粘り気)のある松脂の粉がつくことで、馬のしっぽの毛にある小さな凸凹が大きなネバネバした凸凹になって、弦に引っかかって音が出ます。


弓の毛に引っ掛けられて、ダウンなら右に引っ張られた弦は摩擦より大きな力で反対方向(ダウンの場合は左)に滑って戻ってまた引っ掛けられて、引っ張られて‥の繰り返しをしています。


つまり、弦の振動の上で弓の毛は常に細かく滑っていることになります。


大きな音で弾くと弦が大きく振動します。弓の毛も振動します。弓の毛を弓の両端で引っ張っている、弓の木(スティック)も振動しています。


このスティックの振動を弓を持っている右手の指で、感じられます。「え?」と思う方は、すぐに試してみてください。


弓の木は弦や、ヴァイオリン本体と違い、音を出しません。

が、弦を振動させる弓の毛を、支えるという、とても大切な仕事もしています。


ところで「良い弓」とはどんな弓でしょうか?


まれに「弓はとりあえず何でもいい」「楽器ほど重要ではない」と間違っている方がいます。

まさに「おおまちがい」なのです。弓は楽器本体とまったく同じ重要性を持っています。


弓の重さと長さには規定があります。というより、ヴァイオリンが今の形になってからも、しばらくの間、弓は形の変化がありました。現在の弓の「モデル」となったのが「トルテ」という作家の弓と「ペカット」という作家の弓です。現存する二人の作品は非常に少なく1000万円を超える価値があるともいわれます。

ヴァイオリンそのものより、修理できる部分が少なく、折れてしまうと復元は不可能で全損扱いとなります。



弓の重さの重心は、弓の木の真ん中‥ではないこともご存知ですよね?「え?」と思われたら、ご自分の弓でお試しください。真ん中よりはるかに「元」よりに重さの重心があります。


弓を持った時、軽く感じる弓と重く感じる弓があります。実際にはかりで計測すると全く同じ重さの弓でも!


それは弓の重さのバランスによるものです。先が重ければ重く感じます。先の重い弓は大きな音を出すのが楽です。弓先で大きな音を出すためには、右腕が伸びている状態で親指と人差し指で重さを加える(薬指を上に引き上げる力も少しは使えますが)ことが必要ですので、先が重たいとその点で有利です。


ただし、先が重いと素早い移弦が難しくなります。慣性の法則です。先が軽いほど、振り回されないことになります。
が、軽ければよいわけでもないのです。


そして、弓の弾力の強さがあります。「縦と横」の強さがあります。


弓を持って、左手に弓先を乗せ、弓の毛の方向に曲げようとするのが「たて」の力、

その90度方向(弦に乗せたときには前後方向)が「よこ」の力です。


一般に強い弓と言われるのは、縦方向、横方向に曲がりにくい、硬い木の弓を言います。


強い弓ほど良いでしょうか?


答えは「いいえ」なのです。


硬すぎると弓の毛の弾力と弦の弾力を、弓の木が感じられず、結果として演奏者の指への振動の伝達がなく、
「毛と弦の音」しかしなくなります。


柔らかすぎると、フォルテを出したいときに、弓中央で腰が砕けた状態になり、また横方向に弱いと音色の変化を出すことができなくなります。




「バランス」「強さ」のどちらともに演奏者の好みが大きく分かれます。

弾きやすさにも大きな違いがあります。弾く曲にもよります。


「音量が出せて、音色の変化量が大きく、扱いやすい弓」


はっきり言えばともて希少です。楽器を選ぶより難しい時代です。なぜならば


弓に使われるフェルナンブッコという種類の木が原生しているブラジルから、ワシントン条約によって、原木の形での輸出が禁止されたからです。弓の形をしていれば輸出も、日本からの輸入もできます。ブラジルで作られた弓‥ってあまり見ないですね。ありますけれど、数は少ないです。現在の弓は昔、手に入れた原木を大切に使って作られているか


代用の木


で作られています。そして「カーボンファイバー」が代用として使われる時代になりました。


残念ながら、木の振動の伝わり方までは現在のカーボン弓には求められません。


強さ、バランスは最高の弓と同じレベルのものを大量に、当たり外れなく作ることができるので

木の弓の「セカンドボウ」としてなら、大いに活用できます。また、代用の木でできた弓と同じ値段なら私はカーボンの弓をお勧めします。なぜなら、将来、自分の気に入った弓を手に出来たとき、代用の木で作られた弓は腰が抜けて使い物にならなくなっている可能性が「極めて高い」のです。カーボンは長く使えます。




いかがでしたでしょうか?

弓の重要性、少しは伝わったでしょうか?


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メリーミュージック代表


野村謙介