聴く楽しさと弾く楽しさ

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 映像は、ミルシテイン演奏のヴィターリ作曲「シャコンヌ」
昔FMを録音したカセットテープが擦り切れそうになるまで聴いた演奏です。
なにが?どこが?好きなのか言葉にするのが「鬱陶しい」(笑)ですが、
強いて言うなら「聴いていて美しい」と感じるのです。
演奏がじょうずか?じょうずでないか?って問題ではないし、誰かと比べてどちらが好きか?と言う話でもないのです。自分の記憶の中にある、この演奏との「出会い」もきっと好きな要因の一つなのかもしれません。
いつも食べ物の例えばかりですが(笑)、昔に食べたものの美味しさを、忘れられないことってありませんか?それが「駄菓子」や「おふくろの味」だったりすることもあります。旅先で偶然立ち寄ったお店の「美味しさ」の風景を思い出すこともあります。グルメ評論家の「点数」より、懐かしい味が恋しいこともあります。明治のカールとか(笑)

 クラシック音楽は基本的に聴いて楽しむものです。見て「も」楽しめるオペラは特殊なものです。ポピュラー音楽の中でも「聴く楽しみ」が強い音楽もあります。ライブの演出が「見て楽しい」ものもあります。客席の連帯感が楽しかったり、演奏中の「掛け声」が楽しい場合もありますよね。
 多くのクラシック音楽は、演奏される「音」を楽しむ芸術です。
その楽しみを味わうために、時間をかけてコンサートホールに行って、チケットにお金を払うクラシックコンサート。聴く人が、聴くことに集中できる環境も大切ですよね。固くて座り心地の悪い椅子に、長時間じっと座って「心地良い」人はいません。それでも「聴きたい」と思う人もいるのは事実です。
立ち見でもホール客席の階段に座ってでも!演奏を聴きたいと思ったことも実際にあります。むしろ極別な「クラシックファン」だと思います。
 自宅で好きなクラシック音楽を聴いて楽しむ時を想像してください。
リラックスできる雰囲気で、好きな物美濃を飲みながらくつろいで聴く時間。
オーディオにこだわる人もそうでない人も「安らぎ」を感じるはずです。
自分だけの時間を満喫する「趣味」とも言えます。好きな音楽を好きな演奏で、好きな部分だけ聴くのが自然ですよね。

 映画を映画館で見る人もいれば、自宅で楽しむ人もいます。それぞれに楽しみ方があります。自分流の楽しみかたが、ますます多様化しているのが現代です。
手軽に自宅で楽しめる「良さ」もあり、映画館で見る「良さ」もあります。
音楽の聴き方も変わってきました。ウォークマンが発売された当時、屋外で歩きながら音楽を聴くことは「斬新」なことでした。「マイカー」で「カーステレオ」のカセットテープで音楽を楽しんだ時代もありました。オーディオ全盛期には大きなスピーカーが憧れの的でした。椅子が振動する「ボディソニック」が流行った時期もありました。次第に「簡単」が優先される時代になり、音楽を聴くことにかける「手間」も惜しまれるようになりました。
 最近、ビデオテープやLPレコード、カセットテープが見直される傾向が強くなってきました。「手間」の面白さが再認識されている時代です。
 クラシックの音楽を演奏する楽しさも「手間」の楽しさです。生活が「簡単」になって自分で作る楽しさや、出来た時の嬉しさが「懐かしく」感じられるようになった今、ヴァイオリンやピアノ、アコースティックギターなどの「自分で音を出す楽器」の良さが再発見される日が来たように思います。
 音楽は「聴く」楽しさと「演奏する」楽しさがあります。まったく違う楽しみ方のものです。少なくとも演奏してみると、聴く楽しさが何倍にも増えます。
言うまでもなく演奏するのは簡単な事ではなく、聴いたように演奏するためには、長い時間がかかります。それでも音が出せる楽しさがあります。難しさを知ることで聴く時の楽しみ方も変わります。
 プロの演奏者が「聴く楽しさ」を意識せずに演奏するのは傲慢と言うものです。どんな曲であっても、聴く人のための演奏であるべきです。演奏者のための演奏なら他人の前で演奏する意義はないはずです。客席で聴いてくださるひとが、初めて聴く音楽「かも知れない」と思って演奏することも必要だと思います。いつ終わるとも知れない音楽に感じるかも…と言う思いやりもあって良いと思います。クラシックマニアのかたには「勉強してから聴きに行け」と怒られそうですが、生まれながらのクラシックマニアはいません(笑)「初めてのクラシック」の印象も大切だと思っています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介
 

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