好奇心と音楽

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映像はメリーオーケストラ定期演奏会で恒例の「指揮者体験コーナー」
今回のテーマは「好奇心」です。音楽を演奏したいと思う人の多くが、好奇心旺盛な人だと感じています。プロの演奏家の中で、音楽以外に興味を持たない人も、まれに見かけます。ちょっと偏っているように感じることもあります。

 

 いろいろなことに好奇心を持つ人の特徴は、「飽きっぽい」ことかも知れません。「浅く広く」趣味を持つ人と「深く狭く」な人に大別されることがありますが、「広く深く」もあるでしょう。「狭く浅い」趣味の人の事を「趣味がない」と言うのでしょうね。ちなみに私は理想が「広く深く」で現実は「浅く広く」です。性格的なものかな?

 好奇心は動物が持つ本能だと思います。子犬や子猫は初めて見るものに好奇心を持ちます。学習するうちに「警戒心」が芽生え、好奇心よりも自制心が強くなります。好奇心が薄くなって、いつも寝てばかりの生活になる、人や動物を目にします。本人がそれで満足なら、他人が口を出すことでもありませんね。

 音楽を演奏してみたいと言う好奇心は、いつの間にか薄らいでしまうものです。実際に楽器を手にして、音が出た時の感動も、時間と共に薄らいでいきます。楽器や音楽への好奇心が、変化するのは当然のことです。音楽以外の事に、好奇心が向くのも自然なことです。それは、小さい子供を見ているとよくわかります。次から次に新しいおもちゃを欲しがる子供もいます。でもやがて飽きて使わなくなるおもちゃの方が多くなります。大人の場合はどうでしょうか?
 大人になってから、それまで関心のなかったことに、好奇心を持つこともあります。高齢になってから新しい趣味を見つける人もいます。素敵なことだと思います。

 一般に「奥が深い」と感じることがあります。
表面的な事と違う魅力や難しさを指す言葉です。好奇心の多くは「表面的な事」への関心です。実際に練習して初めて知る「難しさ」があります。それが新しい好奇心になれば、掘り下げることができますが、好奇心を失えばその時点で「おしまい」になります。ひとつの好奇心から、新しい好奇心が生まれ、それが続くことこそが「上達の道」だと思っています。

 プロの場合にも同じことが言えます。周りの人から「素晴らしい」と言われ慣れてしまい、自分の演奏への好奇心を失ってしまう人を見かけます。
 逆にコンプレックスばかりが強くなって好奇心を失い、音楽から離れる人もいます。
 仕事として何かをする人にとって、常にその仕事に対して好奇心を持てるか?が分かれ目になります。同じ仕事でも、見方を変えることが出来ないと、マンネリ化します。演奏も同じだと思います。

 ただ楽器を演奏し続けていても、何も変化しないと思います。
曲に好奇心を持ったり、自分の身体に好奇心を持ったり、季節ごとの楽器の変化に好奇心を持ったり。いくらでも「知らないこと」があります。
 自分の考えを変えられない「偏屈」な人がいます。良く言えば「一途」とも言えますが、頭の中が幼稚園児のまま、大人になったような人っていますよね。
 そういう人の多くは、知らない事への好奇心よりも自分の知っている世界観の中だけで満足しているのでしょうね。成長が止まっているとも思えます。

 音楽の持つ、本当の奥の深さは私にはまだわかりません。
どこまで掘り下げても、新しい「謎」が出てきます。違う場所から掘ってみると、さらに新しい「謎」が生まれます。答えのない禅問答を繰り返している気がします。
 それでも趣味の音楽を楽しむ生徒さんたちには、少しずつでも手応えのある「質問」を投げかけ続け、出来る喜びを感じ続けられるように心がけています。
教室を2004年に作ってから今日までに、800人以上の人たちに音楽の楽しさを伝えていますが、当時から今もなお、習い続けてくれている生徒さんにも、常に新しい好奇心を持ってもらえるように、自分自身の好奇心を掻き立てながら、音楽生活を送っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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