「仕事」を音楽的に考える 

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 映像は「悲しみのクラウン」2台のカメラで撮影した映像を動画編集ソフトを使って編集したものです。音声も音声加工ソフトで音色や残響を編集しています。
 さて今回のテーマは社会人として生活する人の「仕事」を音楽を演奏する作業・日常に置き換えて考えるものです。
 どんな業種であれ「仕事」は誰かのために働くことです。
対価をお金でもらう場合も、そうでない場合…例えば家事全般を日常的にこなす人にとって、家事は立派な仕事です。
 それらの仕事を行う私たちは、その仕事が好きな場合・理想に近い場合もあれば「苦手な内容」だったり「我慢して」仕事をする場合もあります。
人によって価値観も違います。体力も能力も違います。その人にあった仕事が出来ない場合も珍しくないのが現実なのです。
 私自身の場合、音楽大学で教員免許を取得し卒業後に20年、私立中学校・高等学校で「音楽の先生」として働きました。当初2~3年で辞めて演奏活動を始めるつもりでしたが「生活のため」にやめるにやめられなくなっていました。
 そんな20年間で多くの事を学べました。特に「組織の中で働く」意味を知り、さらに「仕事のスキル」がどれほど重要なものかを学びました。
 組織で働く…これは「家族」という単位であっても大企業であっても基本は同じです。自分一人だけで仕事をする場合との違いです。一緒に働いたり生活した生活宇する「他人」との共同作業が不可欠です。自分だけの価値観や好みより「集団」で求められる価値観と目的を優先させなければ社会人として生活できません。自分の得意なことであれ苦手なことであれ、組織が求める仕事をするのが組織人としての最低限の仕事です。
 スキルの重要性。これは組織であれ個人であれ、仕事をする人にとって欠かすことのできないことです。如何に仕事を正確に、円滑に、能率的に行うか?それがスキルです。この「正確性」「適応性」「能率性」のどれかが下がれば結果としてスキルは下がります。自己評価だけが許されるのは「趣味の世界」です。仕事として何かをする場合、自己評価だけで「仕事をした」とは言えないのが社会のルールです。一緒に仕事をする人に対しても、あるいは取引先・納品先・対面するお客様が納得できるスキルがなければ「仕事をした」とは言えません。

 これらの「仕事」を音楽を演奏するための「練習・本番」に置き換えてみます。演奏は「趣味」であっても「プロ」であっても同じです。
 上記の「組織」「スキル」という点で考えた場合、組織は「アンサンブル」に当てはまります。「スキル」は個人の演奏技術・能力です。
誰かと一緒に音楽を演奏することは、ピアノ以外の楽器を演奏する場合には「当たり前」の事です。ピアノと一緒に演奏する。何人かで演奏する。一人で音楽が完成するピアノが特殊な楽器だと言えます。相手に「会わせる」事は単に演奏技術だけでは事足りません。思いやりや優しさ、寛容性。言ってみれば「人間性」が重要になります。
 ピアノ一台で演奏したとしても、演奏会でスタッフやお客様への「配慮」がない人は、演奏する資格を問われます。
 演奏のスキルアップ。これは「練習」に尽きます。仕事で考えればひとつの業務が「完了」するまでのすべての作業が練習に当てはまります。
 演奏の練習は楽譜を読むことから始まり、少しずつ・一歩ずつ、自分の目指す音楽を演奏できるように時間をかけて作り上げることです。
 妥協すれば、どこまでもスキルは下がります。逆に求める気持ちがあれば、スキルは無限に上がるものです。自己評価と「聴いてくれる人の評価」が近づくことを目標にすることが練習の「成果」を確かめる方法です。
 自分で「うまくいった」「失敗した」と評価する面と、聴いてくれた人が感じた内容を並べて「考える」ことが次のスキルアップにつながります。
 仕事でのスキルアップも同じです。仕事の相手が満足してくれているか?自分の仕事に問題はないか?を両立できなければ、スキルアップは望めません。

 音楽大学で真剣に音楽を学んだ学生を、一般企業がこぞって採用するようになってからずいぶん年月が流れました。昔は「音大卒はつぶしがきかない」と言われました。むしろ音大を出て一般企業で働くことが「恥ずかしい」と感じていた時代でもありました。そのプライドが災いし、企業側は「つかえない人材」と決めつけていたのだと思います。
 現実に音大で楽器の練習スキルを身に着けた学生は、一般企業で新しい仕事、業務内容に対しても短期間でスキルアップできる「テクニック」を持っています。それは一般の大学卒業生に比べて、はるかに高いスキルです。
 仕事をしながら楽器を演奏して楽しむ「趣味の演奏家」にとって、仕事は辛いもの・演奏は楽しいもの(笑)になりがちですが、両立させることで「いいとこどり」できるはずです。仕事のスキルと楽器の練習内容は、多くの人の場合「比例」するように思います。練習のうまい人は、どんな仕事でもスキルアップが早い。当然、個人差があります。その人なりの「生き方」があるように、許されるボーダーラインの中であれば、仕事は成立します。音楽も仕事も「楽しみながらこなせる」ことが何よりも重要だと思っています。
 命を懸けて…仕事をするのは間違っています(笑)命あっての仕事ですから。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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