本日のお題は、演奏を楽しむ人に共通の願いである「うまく弾きたい」という願望を叶える「秘訣」について。
「そんなもん、あるわけねぇ!」と言わないで(笑)お読み頂ければ幸いです。
練習するしかありません。以上。
って、おいおい。そうじゃなくて、練習を持続させるための秘訣です。
初心者でもプロでも、練習しなければうまくはなりません。
初心者の多くの方が「プロは練習しなくても上手に弾ける」と勘違いしています。プロの中には悲しいことに「弾けない人の気持ちが理解できない」という不幸な人もいますが、そんなプロも内心は「もっとうまくなりたい」と思っているのですから。
何かができるようになる「実感」を、最近あなたは感じましたか?
大人になればなるほど、その実感を感じない日々が多くなるのかも。
子供の頃、鉄棒で、逆上がりがなかなかできなかった思い出。
自転車の補助輪を外した時の不安。そんな記憶はありませんか?
出来るようになった瞬間の喜びは、自然に湧き上がるものです。教わるものではありません。本能に近いものなのでしょうね。
練習していると、できないことの方が強く感じます。できるようになったことを忘れて、常にできないことが目の前にあります。本当は、少しずつ出来るようになっていることに気付かない場合もあります。逆上がりのように、はっきりと「出来た!」と感じられない「小さな出来た」を見つけることが秘訣なんです。
へ?それだけ?
はい(笑) 人間は喜びを感じられないことを好きになることはありません。好きになれないことが上達することはありませんし、仮に上達しても嬉しくありません。
要するに、楽器を上手に弾きたいという気持ちが「出来ない」ことだけの連続で、やがて薄れていき、上手に弾けない、上手に弾けないからやめたい。という負の連鎖に行きついてしまいます。
自分で自分の練習の中に、小さなできた!を見つけるのは、実はとても難しいことなのです。プロだって、自分の演奏に完全に満足している人は、世界中に誰もいないと思います。傍から見れば「神のような技術」を持っている人でも、恐らく自分の「出来ない」を持っていて、日々出来るようになる為の練習をしていると思うのです。その昔、巨人軍の長嶋茂雄選手が、4番バッターになってから、それまでより何倍も練習していることをニュースで聞いて、子供ながらに「すごいな~」と思いました。
趣味で楽器を演奏している人には、当然のこととして、まだ出来ないことがたくさんあります。それを、少しずつ出来るようにしていくのは、本人の練習と「出来るようになった」ことを、先生が教えてあげることが絶対不可欠です。生徒さん自身は、出来るようになった実感がなかなか持てないのが現実です。「先生は気を使っておだててくれた」と思うかもしれません。それでも、本当に少しでも出来るようになっていることを、「しつこく」誉めることが、アマチュア育成には必要なことだと私は信じています。
楽器の演奏が上達する道は、凸凹だらけの、上り坂、下り坂、壁の連続です。そのゴールのない、長い道のりを歩く限り、必ず少しずつ出来るようになっています。それに気付けるようになることこそが、歩き続けるための秘訣だと思うのですが。
偉そうに書きながら、今も自分のリサイタルに向けた道の半ばで、めげそうになっている私です(笑)この練習の「ご褒美」はリサイタルでお客様から頂く笑顔と、拍手です。自分の師匠が天国から「右のひじ。左手の親指力を抜く」という「メモ」がヒラヒラと落ちてくるのが、怖い。
生徒の皆さんも、先生方も、音楽を楽しみましょう!
メリーミュージック 野村謙介