映像はNPO法人メリーオーケストラ第42回定期演奏会より、チャイコフスキー作曲ピアノコンチェルト第1番より第1楽章。ソリストは高校時代・大学時代の同期で現在フェリス女学院大学で教授を務めている落合敦氏。
昨年夏の定期演奏会後に、この曲のソリストを引き受けてくれない?と相談したところ快諾してくれた恩人でもあります。
言うまでもなく、ピアニストとしてこの曲が体力的にも精神的にも難易度の高い曲であり、オーケストラとのアンサンブルも極めて高度でち密なものが求められる曲です。多くのクラシックファンにとってもアマチュアピアニストにとっても、あまりにも有名すぎる子の曲をメリーオーケストラが演奏してしまいました(笑)
さて今回のテーマは、アマチュアオーケストラが演奏会に臨むまでの練習や演奏会で「理想」とされる事と「現実」のギャップを考えるものです。
アマチュアオーケストラの演奏技術レベルは様々です。それこそがアマチュアであることの証でもあります。どんなに簡単そうな曲でもお客様に満足してもらえる演奏をするために、可能な限り練習するのは当然のことです。
ましてやこのコンチェルトやボレロを演奏するとなると、演奏者に求められる技術は相当に高いものになります。演奏したことのある人にしか理解できない「難しさ」でもあります。少なくともオーケストラで演奏会に参加したことのある人であれば、どんなレベルの演奏に対しても「下手だ」とは口にしません。当たり前ですね(笑)例えるなら、箱根の山を走って登ったことのない人がお正月の箱根駅伝を走る選手を「遅い!なんだこいつ!」と言えるはずがないのと同じです。
オーケストラの演奏会までに必要な「時間」「費用」「労力」があります。
それがプロであれ、アマチュアであれ最低限必要なものがあり、逆に言えば現実的にできる範囲でしかオーケストラの演奏会は開けないのです。
オーケストラで演奏しようとする曲に必要な「楽器ごとの演奏者の数」は違います。その人員を確保するために人件費がかかる場合がほとんどです。アマチュアオーケストラの場合はそのオーケストラメンバーの中に必要な楽器の演奏者がいないことが多くあります。ファゴット演奏メンバーがいなかったり、ヴィオラ奏者が一人しかいなかったりと様々です。足りない楽器の演奏者を外部から呼び演奏してもらう場合には謝礼を支払うのが通常です。それはプロのオーケストラ演奏会でもおこなわれています。「エキストラ」と言われる人たちの存在です。
エキストラを練習時に何回呼べるのか?は人件費を払う資金力で決まります。
二日呼べば二日分の謝礼が必要になります。当然ですよね。
ソリストを外部の人にお願いする場合も同様です。何回リハーサルを行えるか?はほとんどの場合はお金の問題になります。
アマチュアオーケストラの運営費用はメンバーが負担するのが通常です。
演奏会時のプログラムに広告を掲載し広告料をもらう…それも一つの方法ですがこの不景気な現代にそんな余裕のあるお店や企業は少なくなりました。
入場料収入を運営に充てるアマチュアオーケストラもあります。アマチュアオーケストラだから入場料を取ってはいけない!なんて大嘘ですよ(笑)むしろ頂けるならそれが理想ですが、現実には入場料が500円でも!来場者は減ります。
以前にも書きましたがメリーオーケストラは入場無料で演奏会を開いています。
広告収入はNPO法人の定款に書かれていない事業収入になるため基本的には受け取れません。
半年に一回、定期演奏会を開いています。毎月1日だけ公開練習を実施しています。エキストラ演奏者に参加してもらえるのは演奏会当日、午前中の舞台リハーサルと演奏会の本番だけです。ソリストと一緒にリハーサルを行えるのは本番当日以外、1回が限界です。常にその状況です。練習が少なすぎる!
会員は全員がアマチュア演奏者です。月に一度の公開練習時に指導者を数人呼ぶのが資金的に限界です。練習会場費、演奏会の会場費や舞台上で使用するすべての機器備品に係る設備使用料もあります。それらの費用を賛助会員の方々からの賛助会費(年会費2,000円)と会員たちの月々の会費3,000円、演奏会参加費を会員たちがさらに拠出して運営しています。それが現実です。
もっと何回もソリストを呼んでリハーサルをすれば、オーケストラとずれることも避けられます。エキストラ演奏者を何回も呼べれば演奏のクオリティが格段に上がることは誰でも知っています。それは「理想」です。現実の世界で行われる演奏会なのです。出来る範囲で出来ることをするのが現実です。
メリーオーケストラがいつまで?活動できるのかは誰にも分りません。
今、出来ることを頑張っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介