左手と右手の分離

多くの生徒さんに見受けられる現象ですが、
片方の手の力を抜くと、もう一方の手の力も抜ける。
同じことは、力を入れる時にも起こります。
例えば、弦を指板まできちんと押し付ける左手の力を入れようとすると、弓を持つ右手にも無意識に力が入ってしまい、コントロールできなくなる。
また、違う例では、左手の指の形を崩すないように意識をすると、右手の指も無意識に硬直する。
右手の力を抜くと、左指の押さえ方が弱くなる。
初めてビブラートをかけようとすると、右手が勝手にダウンアップで動いてしまう。
そんな「無意識な連動」は人間にとって、ある意味では自然な運動です。
ただ、意識しなくてもできるようになると、それぞれの運動は独立します。
お箸を右手で持ち、左手が同じように動くことはないでしょう。
車の運転をしていても、両手が同時に動くことはないはずです。

なれない運動をすると連動する。

初めてドラムセットを両手両足を使って、それぞれの手足が「違うリズム」を演奏しようとすると、すべての手足が同じ動きをしてしまうものです。
私たちの脳から出る「命令」がそれぞれの筋肉を動かします。
「動かそう」と思えば思うほど、強い命令が他の手足にも出てしまいます。
慣れてくると、強く思わなくても、片手だけ、片足だけを動かしたり、走ったり、飛び跳ねたりできるようになります。

ヴァイオリンを演奏するときに、それぞれの手、指、腕、肩、背中を意識しながら「一つの運動」をすることから始めます。

例えば、左手の形、押さえ方だけを意識して修正したければ、右手に弓を持たず、ピチカートで弦をはじく練習も有効です。
右手の動きだけを確認したければ、左手は使わず解放弦で練習することがおすすめです。

二つの運動(右手と左手)を同時に練習するとき、同時に二つのことに集中することは、

不可能です。

ただ、注意することを「短い言葉」にして次々に違うことを注意することはできます。
コンピューターの「演算速度」に近いものです。同時に二つのことを考えるのではなく、短い周期でいくつかの「注意」を繰り返す方法です。

例えば「右手」「左手」「肩」「頭」「腰」「場所」「角度」「音程」「圧力」などの単語と、集中するべき運動を関連付けます。
一つの運動に長い時間、注意が行ってしまうと、他の運動がどんどん崩れます。そうならないように、短い言葉で注意を繰り返します。
「指」という単語で左手の指の押さえ方を直そうとし、
「小指」という単語で右手の小指を丸くしているかに集中する。
この二つの単語を交互に思いながら(必要なら声に出してみるとよいでしょう)曲を弾きます。
「頭」という言葉で頭の位置、重心を修正し、
「角度」で弓の直角を確認する。この二つを繰り返すのもひとつの方法。

要するに、何も考えないでも二つ以上のことがコントロールできるようになるまで、「口うるさく注意を繰り返す」ことです。

ひとつのことだけでもできません。

必ず生徒さんは答えます。
そうです。その一つひとつの難しさを知ったうえで、同時にいくつものことを無意識に、ある時は連動させ、あるときは独立させ、動かすのが「楽器の演奏」です。だからこそ、慣れが必要です。なれるまで、何日でも、何か月でも、何年でも時間をかけて繰り返しましょう。

「右手と左手はね。男と女と一緒なんだよ。わかる?」

大学生の時、久保田良作先生にレッスン中に言われた言葉です。
「????」当時、なんのことなのか、どんなジョークなのかさえわかりませんでした。
このネタは、子供には使えず、大人の生徒さんに使えば「セクハラ」になりますので、「格言」として私の中にしまっておきます。

というわけで今回はここまで。

野村謙介

弓を操る(最終回‥肘~肩)

ボウイングについての考察。
最後は、いわゆる「腕」の使い方について。

肘から手首までの前腕、肘から肩の関節までの上腕。そして、上腕を動かす、首と背中、主に肩甲骨周りの筋肉までを「腕」と考えます。
特に腕の付け根はどこ?と生徒に聞くと「肩」と答える人が多いのですが
実は肩の周りの筋肉も腕を動かすための筋肉です。

指から始めた話ですので、手首の次は肘の関節と前腕の使い方。
前回書いたように、掌を回転させる運動は前腕の回転です。
右肘の骨を反対の左手でつかみ、右手の掌を上、下に回転させてみてください。
肘の骨が動かないようにしても、掌が回せます。掌の回転は、弓の傾斜を変えられます。どの弦を弾くか。また、弦に圧力を加える仕事もできます。弓を弦から離すこともできます。
この前腕の回転運動に加え、肘の曲げ伸ばしの運動がダウン、アップの運動の主役になります。

弓先を使うとき、肘が伸びます。同時に手首の関節を左方向に曲げることで、弦と弓の毛の直角を保つ意識を持ちます。手首を上下方向に安直に曲げないで、出来るだけ掌と弓のスティックを平行に保つことを久保田先生は指導してくださいました。小指をスティックから出来るだけ離さないためにもこの手首の運動は重唱であることは前回書きました。

肘を直角に曲げたときに、手の指の形が一番「ニュートラル」の状態に出来ます。肘から右手の4本の指(親指以外)の第2関節までが「市間の板」のようになります。

肘の高さは‥

このニュートラルの状態で、肩から肘、肘から指の第2関節までが「1枚の板」の状態になるイメージで移弦します。この運動は「上腕」を上げ下げする運動です。肘を高くしすぎると手首と掌が下がりすぎ、腕の重さを弓に転化できません。下げすぎても同じように無理な力を使わないと腕の重さを利用できません。
肘の上下は弓中央から弓元にかけての「元半弓」でも利用します。
中央から弓元に移動するにつれ、肘を「上げる(身体から離す)」
元から中央に移動するにつれ、上がった肘を「下げる(身体に近づける)」
この運動は常に均一に動かすことが重要で、動きにムラがあると弓の圧力に大きな変化が起こり、弓がバウンドする原因になります。

肘は身体(お腹・胸の全面)より、常に「前方」に維持します。
この位置が前後に動くと弓を弦に対し直角に動かすことが困難になります。
身体の真横から誰かに見てもらい、ダウン、アップで肘が前後に動いていないか確認してもらうのが一番わかりやすい練習方法です。
肘(上腕)の上下運動は背中の筋肉を意識します。大切なことは

肘(上腕)は高くしても肩は上げない!

ことです。肩を首の方向(頭の方向)に引き寄せると方の関節が上方に上がります。首の筋肉に不要な力が入るうえ、自由な運動を妨げます。

常に肩を一番下げた状態で、肘(上腕)を上下に動かす練習が必要です。

弾く弦によって、弓の傾斜が変わり、肘の高さが変わります。さらに、元半弓を使うときはそこからさらに上方に上がります。

この複雑な運動は自分の眼で確認することは不可能です。
鏡を見ても、真横からの視点、真上からの視点はありません。

弓の動きを確認するうえで、最も大切なことは「音を聞く」ことです。
直角が崩れたときの音色、肘が高すぎたり低すぎたときの音色、移弦の際の雑音がないか。ダウンからアップ、アップからダウンになる瞬間の音色。

すべては音に現れますから、その音の特徴を聞き分ける集中力が必要です。
小さい子供に教える時は、実際に指、手首、肘、上腕に手を添えてあげることが最善の方法だと思います。大人の場合、弾きながら自分の身体の各部位を意識する練習が大切です。

長々と書きました。

言葉にすると、難しいですが、実際にボウイングすることはもっと難しいものです。

久保田先生の門下は、ボウイングが美しいと私は思っています。

美しいボウイングこそ、美しい音色を出す根源だと思っています。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

メリーミュージック代表
野村謙介

弓を操る(その弐‥手首編)

前回の指に引き続き、ボウイングの考え方です。
手首の関節は、掌を真下に向けた状態で左右と上下に動かせます。
左右に動かす自由度は上下に比べて少ないものです。左右と言っても実は「弧」描く円運動です。この運動をそのままボウイングに使うと、弓も直線的には動きません。弦と弓の毛が直角に接していることが、摩擦を最大限に引き出して良い音を出す基本ですから、この円運動はある意味で要注意です。

上下の運動は、肘から手首までの部分「前腕」を水平にしたとき、
脱力すると掌の重さで掌が下がります。掌(手の甲)を水平にすると前腕と手の甲が一直線(平ら)になります。さらに曲げると掌が少し上がり前を向く形になります。

ここで手首の関節だと勘違いしていることを一つ。
掌を前腕に対して。左右に回転させる動きは、手首の関節の動きではなく、前腕の回転運動によるものです。
例えていうと、ドアのノブを左右に回すときの運動です。手首を見てみるとわかりますが、親指側と小指側に骨があり、手首だけを回転させることは物理的に無理です。つまり、掌の回転(掌を上にしたり下に向けたりする運動)は手首の運動ではありません。

久保田先生は、この手首の上下の動きについて、
「前腕と手の甲を平らにする」ことを基準にするように指導されました。
時に弓の中央部‥右ひじが直角に曲げた時の弓の位置で、手の甲と前腕が曲がっていると怒られました。
弓元に来た時の手首の曲げ方については、後ほど「肘の使い方」で詳しく書きますが、多くのヴァイオリニストが手首を曲げ、弦と弓の直角を作るのに比べ、弓中央部の時の一直線の状態を保つように指導されました。

先弓に来た時、手首を安直に曲げ(へこませ)がちです。
先弓で弓の動き、圧力を自由にコントロールするために、手首の関節の「左右の動き」を使います。

弦と弓の毛を直角に保ちながら、手の甲を弓の傾斜(E線A線D線G線)と大きく変えないこと。

弓先で掌を安直に外側(身体に対し右側)に向けてしまうと、小指がスティックから遠くに離れてしまいます。この運動は「前腕の回転」です。手首の回転ではありません。具体的に例えます。

弓中央から弓先にダウンボウする場合です。
中央で一直線だった前腕と手の甲の「面の方向」を維持し、
弓先まで直角に肘を伸ばすとき、掌は身体から少しずつ前方に離れていきます。
その際に、手の甲(掌)の弓の毛との「面」を保ったまま、肘を伸ばします。
その時に、手首を前腕に対し左側に曲げます。窮屈な感覚、引っ張られる感覚があると思います。手首の左右運動が少ないほど、窮屈に感じます。でも、小指はスティックに乗せた状態を維持できます。
手首を上下に曲げ、前腕を左側(内側)に回転させると掌は、外(右方向)に向いてしまい、小指が何もできなくなります。

文字にすると複雑ですが、上腕と手の甲をできるだけ一直線にしたまま、ダウンで弓先まで伸ばし、小指をできる限り、弓から離さないことを意識します。

手首の柔軟性は上下運動より、左右の運動範囲を大きくできるようにすることが難しいのです。

指がついている掌(手の甲)の関節、その次の第二関節を耐雷にする。
「グー」をしたとき、手の甲と指が直角に近くなりますね。
「パー」をすると、手の甲と指先までが一直線になりますね。
「ひっかくぞ!」の手の指の曲げ方。手の甲と指の第二関節までを平らにする形です。
この形を保って弓を持つイメージ。難しいですが、久保田先生はこの形を毎回のレッスンで厳しく注意してくれていました。

実際に弓を動かす「肘(前腕)」と「肩から肘(上腕)」の動きはまた、次回。

弓を操る(その壱‥指編)

ヴァイオリンの音色を大きく左右する「運弓(ボウイング)」について。

演奏者それぞれに、弓の持ち方と腕の使い方は微妙に違います。
どの方法が正しいというお話ではありません。
弦をこすって音出す弓の毛。弓の毛を支え、指で持つためのスティック(弓本体)、弓の毛と弦との摩擦を作るための松脂(ロジン)
このシンプルな要素の弓を右手の指、掌、手首、手首から肘までの腕、肘から方の関節までの上腕、腕を支える首と背中の筋肉。それらを意識することはとても難しいことです。
当然のことですが、弓に触れているのは指ですが、指だけで弓を大きく動かすことは不可能です。ですが、指の関節の柔らかさと強さのバランスはとても重要です。
恩師久保田良作先生は弓の持ち方にこだわられました。
親指を曲げることは、力のかかる方向を考えれば曲げることが理にかなっています。
親指が、「てこ」の原理の一点になります。
弓の毛と弦が触れている部分も「一点」です。
そして、弓の毛と弦の摩擦を増やすためにかける「圧力」は、人差し指が、もう一つの点となります。
実は薬指も人差し指ほどの力はありませんが、圧力をかけることができます。
毛箱に薬指の腹を付け、スティックに対して上方(親指の力の方向と同じ向き)に引き上げることで、弱い圧力をかけることができます。
小指は「丸くする」ことを久保田先生は厳しく指導してくださいました。
人によって小指をほとんど使わない演奏方法や、小指を伸ばしたままの演奏方法も見受けられます。これが「悪い」とは思いません。
小指を丸くすることの意味の一つは、力の方向性です。
簡単に言えば、人差し指が圧力をかける役割をするのに対し、小指は圧力を弱める役割をします。これが、圧力を弱める時の「一点」になります。
親指との距離が長いほど、少ない力で圧力を弱くできるのは、てこの原理です。
圧力を弱くする必要なんてあるのか?と思う生徒さんもいるでしょうが、弓の重さ(約60グラム)を少し弱くしたり、弓を持ち上げてダウンを連続したりするときに、親指より外側(スクリューのある側)に力点がなければなりません。
薬指は先ほど「圧力をかける役割の補助」ができると書きましたが、実は真逆に「圧力を弱める役割の補助」もできます。小指の補助的な仕事です。
それらの指をすべて柔軟、かつ瞬発的な運動が出来るように意識し、関節と筋肉(腱)を動かします。
弓先になれば、小指が届きにくくなります。それでも、完全に離してしまわないことを久保田先生に習いました。これも必要な技術です。
そして弓元で小指と親指で圧力と弓の方向をコントロールすることがとても大切です。

弓をダウン、アップで動かすときに指を「必要以上に動かさない」こと。

実は私は学生時代、「関節を動かしてはいけない」と思い込んでいました。
実際には、指の関節と筋肉のコントロールで、より微細な弓の速度と圧力をコントロールできることを、リハビリを始めてから感じました。
ただし必要最低限!で。
手首から始まり、背中の筋肉に至るまでの使い方については、次の機会に!

お読みいただき、ありがとうございました。
野村謙介

私にとってデュオリサイタルは‥

音楽のレッスンを受ける生徒さんにとって、楽器を弾く目的は様々です。
私(野村謙介)の演奏への思いをつづってみます。

音楽高校、音楽大学で専門家になるための基礎知識を学び、多くの仲間からの刺激を受けました。
大学生時代の演奏アルバイトも、演奏家として必要なスキルを学ぶ機会でした。
大学を卒業して、演奏家ではなく「学校の先生」として20年間、授業と会議、事務仕事と部活(オーケストラ)指導にに没頭し、ヴァイオリンを練習する時間も気力もありませんでした。
退職し、音楽を教えて楽器を販売する生活に変わりました。
20年間のブランク。自分の演奏技術を見直すゆとりは、教室を開いた当時には感じなかったのが現実です。
浩子(以後先生を省略します)と「リサイタルを開こう」と話し、自分の演奏技術を振り返ったとき、初めて楽器を練習していなかった20年という長い時間を思い知りました

それからの10年。

中学1年生から大学を卒業するまでの時間、不出来な生徒(私)に根気強く演奏の技術を惜しげなく教えてくださった久保田良作先生の声を思い続けています。
ヴァイオリンを演奏する「技術」は一人で黙々と練習することで、ある程度は習得できます。もちろん、そのレベルは練習の内容と時間で大きく変わります。
浩子と一緒に演奏することは、私にとって特別なものなのです。
先ほど書いたように、学生時代にも多くの人から演奏の刺激を受けていましたが、その刺激とは少し違う感覚です。

自分の過去と現在と未来

大げさに思われるかもしれませんが、人それぞれに今日まで生きてきた歩みがあるわけです。
人との出会いと別れ。
記憶に鮮明に残る体験。
今現在、抱えている不安。
明日、来年‥の自分。

浩子とデュオリサイタルに向けて練習するとき、楽器を練習している自分が、すべての過去につながっていることを感じます。
ヴァイオリンと心から向き合える時間が、どれほど貴重な時間であるかを感じます。
人様に聞いて頂ける演奏技術ではない‥と思い込んでしまえばそれまでです。生徒たちに自分が言っている言葉「舞台では自分が一番です」なのですが、練習の時は真逆に「へたくそ!」と自分に苛立ちます。
それでも!一緒に演奏してくれる大切な人と、自分の好きな音楽だけを練習できることは、至福の時間なのです。
演奏することに幸福感を感じられるのは、演奏家への神様からのご褒美です。
そのご褒美は浩子という「女神」が持ってきてくれたのだと思うのです。

ここまで読んで「けっ!いい年してうすきみわるっ!」と思われた方には、もうしわけございません。
最後までお読みいただき、ありがwとうございます。

メリーミュージック
野村謙介

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ある生徒さんのレッスン記録

教室にはたくさんの生徒さんが通ってくれています。
今年の9月で13期目を終え、14年目に入ったメリーミュージックです。
登録している生徒さんの数、713名。すべての生徒さんの個人カルテが保存されています。
すべての生徒さんが私たちの大切なお弟子さんです。

そんな中のおひとりを。
K君。現在高校1年生男子。1回目のレッスンは2005年11月9日金曜日11時から。当時4才でした。

おとなしく、素直な生徒というのが第一印象でした。毎週、欠かさずレッスンに通ってくるうちに、彼の個性がはっきりしてきました。
コツコツと毎日練習してくる几帳面な子供。ただ、姿勢を維持することが苦手でした。
貸し出していた分数ヴァイオリンはことごとく指板が削れるくらいに練習していました。
手に汗をかく体質で、その汗がとても酸性が強いようで弦がすぐにさびてしまうのも特徴でした。
コツコツコツコツ‥少しずつ上達し、やがて大まかな教本を終えたところで、本格的な基礎教本を使い始めました。
小学校高学年になり、毎日塾に通う日々の中、それでも毎日練習を欠かしませんでした。
受験が間近になり、一時的にレッスンをお休みしたときも、「絶対にやめませんから」というお母さんの言葉が忘れられません。
中学受験で志望校すべてに合格し、国立の中学校へ進学。すぐにレッスンが再開されました。
当時、歌うことが恥ずかしかったのか、表現が平面的でした。
練習曲集が大好き!という男子。次第に自分の考えや感情を言葉にするようになり、レッスンが一段と楽しくなってきました。
そして、とうとう私の身長を越えていまいました。(男子生徒が私より高くなると「破門」というルールがあります)
自分の好きな演奏、自分の弱い面、課題を的確に答えます。几帳面でありながら、はっきり「これは苦手」と線を引く強さもあります。
前回のレッスンで470回目でした。これもすごい数字ですが、私と彼の間に「師弟関係」がいつの間にかできていました。左手に関して言えば、もう教えることはほとんどありません。そのくらい上達してくれました。
将来はもっと数学の勉強をしたいと。音楽を趣味として、もっと上手になりたいという気持ちを持ち続けてくれています。
お母さんが毎回のレッスンに必ずついてこられます。私が師匠に「中学を卒業するまではお母さんもレッスンに来てください」と言われたことを彼とお母さんにお話ししたことも理由の一つのようです。
もちろん、彼一人でもレッスンに何の問題もありません。それでも、毎回教室でお母さんと待ち合わせをして学校からレッスンに来るK君は私の中では4歳の頃のかわいいちびっこのままです。

継続は力なり

まさに言葉通りです。どんな生徒さんにも個性があります。誰が一番‥ではなく、みんなが一番なのです。

これからも多くの生徒さんの成長を見守りたいと願っています。

野村謙介

練習の心得

「自分の好きな音で演奏できるようになりたい」
趣味として演奏を楽しむ方にも、仕事として演奏する私たちにも、共通の願いですね。
自分の好きな音が出せないという気持ちを、少し斜めから考えてみます。
そもそも「好きな音」は記憶に残っている外部から聞こえてきた音です。
自分の楽器を他の人が弾けば、全く違う音に聞こえます。
「先生が弾くと私の楽器もいい音がするんだけどなー」と幾度どなく生徒さんがおっしゃいます。

自分が楽器を構えて演奏しているときの音を冷静に聴くことが何よりも大切です。
どんな音が出ているのかを常に楽器に問いかけます。
少しだけ弾き方を変えて、また楽器の音に耳を澄まします。
楽器が「こんな音になるよ~」とあなたに答えてくれるはずです。

楽器を自分の技術でねじ伏せようとする人がたくさんいます。ちょっと楽器が可愛そうです。
力や技術で楽器より演奏する自分が「上」に立ってしまうと楽器はただの道具になってしまいます。

私たち演奏者自身の「筋肉」「関節」を自分自身がコントロールすることが一番難しいのです。

楽器を自分の身体の一部に感じるために、楽器と接する身体のどの部分もが、繊細な感覚を持っていなければ、楽器の響き、動きを感じ取ることができず、感じられなければコントロールすることもできないという、連鎖に陥ります。

楽器を構える前に、そして、音を出す前に、自分の身体の足先から頭のてっぺんまでのすべての部位を自分がコントロールできているか確かめてみましょう。

私の恩師、久保田良作先生の教えは「腰を安定させる」ことに大変厳しく、太ももに力を入れ、お尻の筋肉を内側に向かって力を入れ、つま先が少し浮くくらいのくるぶしに重心が来るように立ち、肩を下げ、あごを引き、頭を上に引っ張り上げる¨という「立ち方」にこだわったものでした。これはメニューインの指導書にも書かれていることです。

こうして立ちながら、楽器を構え、音を出すのはとても難しいことです。

音を出すことに神経が集中してしまいます。音に反応して体が硬くなります。

そうならないように、常に太ももと腹筋に力を集中することで、上半身の不要な力が抜けることが、やがて実感できるようになります。

姿勢は単にカッコよく見せるためにあるのではありません。自分の身体をコントロールするために大きな筋肉である太もも、足、おなかに力を集中し、首、上腕、手首、指の力を「必要最低限」に使うことが大切なのだと、この年になって感じるようになりました

話を戻し、自分の好きな音を感じられるようなるまでの道は、とても長いものです。言い換えれば、どんなに練習してもたどり着けない「見えない頂上」です。でも、だからと言って、諦めたらそこで終わりです。

かといってストレスだけを感じながら練習するのは意味がありません。

少しでも自分の好きな音を出すために、時間をかけて楽器と対話し続けること。

それこそが、楽器と仲良くなることの意味だと思います。

生徒の皆さんと同じように、私も日々自分の音を探し続けています。

頑張りましょう!

メリーミュージック

野村謙介

保育園コンサートの宝物


今年も保育園でのコンサートを実施しています。
先日のコンサートは60名程ほちびっこと近隣の方々に聞いて頂きました。
愛の挨拶、アニーローリー、リベルタンゴ、歌の翼に、ガブリエルのオーボエ、どんぐりコロコロ、大きな古時計、シネマパラダイス、チャルダッシュ、スペイン舞曲。1時間のコンサートを、子供たちはノリノリで楽しんでくれました。

演奏後、子供たちから写真の「手作り金メダル」を浩子先生と二人、授与されました!

何よりもうれしいプレゼントです。11月にはあと1回、12月には今年も「神奈川医療少年院」でのクリスマスコンサートが予定されています。

音楽の持つ不思議なやさしさで子供たちが安らいだひと時を過ごしてくれることがとても光栄です。

そして、12月24日のリサイタル、1月6日のリサイタルに向け、いよいよ準備の追い込みです。

野村謙介

2017弦楽器フェアに

2017fair
東京弦楽器フェア2017
元教え子君でクレモナで活動中の高橋修一くんと再会。テレビで見た窪田氏のビオラとバイオリンも味見(笑)
コメントありがとうございます!
保育園コンサートで疲れた背中の脂身(笑)追い打ちかけて背中は膏薬(ふるっ!)だらけ。
2010年の弦楽器フェアで陳さんと出会い今愛用しているビオラくんと出会い、その後縦型ケースの出品もありました。
今回、生徒さんの使う楽器のリサーチ目的と教え子君に会うために数年ぶりに行きました。
私が45年、使い続けている楽器の素晴らしさとこの楽器を迷うことなく私(の両親)に勧めた今は亡きバイオリン職人田中ひろし氏との出会いに感謝します。
自分の楽器が一番好き!と言い切れる自分に出逢えました。生徒さんに楽器店のオーナーとして紹介する立場です。結論から言えば一生のパートナーとなるバイオリンを選ぶ時、無理をしてでもオールドを手に入れるか、新作楽器から気に入った楽器を選ぶか?二つに一つだと言う結論。
オールドの信頼できる楽器は安くても一千万近い。それを考えると新作ですね。
弾き手で楽器の音色は変わるのです。自分にあった楽器を信頼できるバイオリン弾きと楽器店(職人)を見つけることができればあとは予算です。
現在で言えば150万前後が妥当な価格のようです(新作の場合)
でも高いよなー。(笑)