私の個性的な「眼」

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網膜色素変性症という治療法のない眼の病気です。
進行性の病気で原因も不明。多くの場合、失明に至ります。
その進行の速さや内容は人によって大きく違います。
日本だけでも約3万人の患者がいる「難病指定」の病気です。

私の場合、3歳ごろに夜盲の症状があって両親が気付き、この病名だとわかりました。
進行が遅かったので、20代までは夜盲症状以外、日常生活に支障がなかったので車の運転も、教員生活にも困ることはありませんでした。

45歳を過ぎたころから、視野の狭窄(見えない部分がどこかきまっていません)と夜盲の症状が進みました。
10年前は普通の大きさの楽譜を見ながら演奏することもできました。
次第に楽譜が見えずらくなり、A3サイズの紙横向きに数段の楽譜を拡大し、暗譜しながら弾くようになり、今はそれも辛くなり、21インチのタブレットに楽譜をアクロバットファイルにしたものを好きなだけ(笑)大きくして、覚えては弾く、覚えては弾くの繰り返しです。

そんな生活ですから、夜、駅前教室でレッスンが終わって、外に出る時は白い杖を持っています。
白い杖を持っていると「全盲」、つまりまったく光を感じられれない人だと思われるので、電話をしようと携帯を出したりすると「にせもの?」という目で見られてしまいます。「半盲」という言葉があります。私が今そうです。見えるものもあるが、見えないものが多い。
視覚障害1種2級の手帳も持っています。でも人から見て、どのくらい見えないのかはわからないのが現実です。

ステージが暗転するときややステージ袖。
私には「真っ暗闇」の世界で、光っている電球「だけ」が見えます。
そんな病気なのです。

その夜盲の私が幼いころから「夢」だったのが「夜見えるメガネ」
魔法のような世界、あったらいいな、ドラえもんに近い夢でした。

とうとう、できました。

メディカルウエラブルというメガネの形をしたカラーで透明な有機LEDディスプレイに高感度カメラの映像を映し出す道具。

12月に発売予定でしたが、さらに改良を加えるため、来年1月に量産のモデルを手にします。その前に、最新のプロトタイプ(試作品)をリサイタルまでにお借りすることになりました。

「0.5ルクスの明るさで歩くことができる」というお話。
この明るさは「月夜で街灯のない道の明るさ」だそうです。
私には街灯がどんなにあっても「街灯」だけしか見えませんが、このウエラブルを付けると真昼のように見えます。

まだ、厚労省が「補装具」として認めてくれないので全額負担です。
開発にかかった費用、高感度カメラの価格などを考えると40万円は高くないのです。むしろ、私たちの「目」がこの値段で買えるのなら。

楽譜はどうやっても見えないのは同じですから、少しでも見える間に、少しでも多くの曲を暗譜したいと思っています。

リサイタルで演奏する16曲。頭に書き込みました。
舞台から客席の皆様の顔が見えませんでした。暗いので。
今度のリサイタルでは皆様の表情が見えます。
気持ちよくお昼寝している方の表情や、喜んで腐っている方の表情が見える。
夢のようです。
リサイタルのステージに、似つかわしくないサングラスをして登場します。
そんなヴァイオリニスト、世界で今は一人です。楽しんで下さい。

野村謙介

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