今回は、ヴァイオリンの弦を使用した「本音レポート」です。
普段、ピラストロのオリーブというガット弦を張っています。
昔から一番信頼し、馴染みのある弦です。
たまに、他の弦を使って生徒さんの相談に答えられるようにしています。
今回は、トマステーク社の出している「ドミナント・プロ」のセットを試してみました。
トマステークの「ドミナント」は現在、もっともポピュラーな弦ですね。
ナイロン弦の一種です。どんな弦にも長所と短所があるものです。
ドミナントに限らず、ナイロン弦は一般に「良い音の出る期間が短い」ことが代表的な短所です。一方でガット弦に比べて、張ってから安定するまでの期間が短いのが長所とされています。
実はそうでもありません。
事実、ドミナントのA線は安定するまで、張ってから毎日1~2時間弾いては調弦し、また弾いては調弦しを繰り返し、完全に安定するまで1週間ほどかかります。え?G線じゃないの?
実はA線の方が伸びるのに時間がかかります。
そして、張ってから2週間…どんな環境でもほとんど変わりません…で
突然、音色が変わります。開放弦で、はじいてみるとすぐにわかります。
はじいた瞬間の音量・音色が、すぐに余韻のない「ポ」という音に変わります。余韻が短くなると言っても良いですね。
当然、弓で弾いていても余韻が短くなっています。
「こもった音」になります。この状態を「弦のご臨終」と私は呼んでいます。この「お亡くなりになった音」はこの後、ず~~~~~~~~っと!
おそらく錆びて切れる直前まであまり変わりません。
つまり。
張ってから2週間から切れるまで「音は出る」状態になるわけです。
ガット弦は?
張ってから安定するまでの期間は、G→D→Aでおよそ2週間ぐらい。
そのあとは、本当に少しずつ音色が変わっていき、私の場合3か月ほどでどうしても張り替えたくなります。
つまり、弦の寿命として言えばバット弦が遥かに長い。
さて、今回試してみた「ドミナント・プロ」です。
まず第一の特徴は、
・張った翌日には演奏会で使えるほど、弦の伸びと安定が早い。
・張った直後の音量と明るい音色は、ドミナントとはけた違い。
・張ってから1週間ほどで、ギラついた音から少し柔らかい音に変化。
・張ってから3週間目頃に、明らかに余韻が減り、共振も少なくなる。
・その後はそのまま。ここで「ご臨終」
家格的には、ドミナントの1.5倍ほど。でも、ピラストロのオリーブや、ピラストロのパッシォーネに比べるとだいぶ安い。
何をもって「プロ」と名付けたのかは大いに疑問ですが、
ドミナントにないパワーと明るさは確かにあります。
好みの分かれるとことですが、今までにパッシォーネが気に入っている方にはお勧めです。ただ、寿命はパッシォーネとは比べようもありません。
演奏会のために張り替えるなら、確かにコストパフォーマンスは悪くありません。
が…これも好みの分かれるところ。ガット弦の温かさと柔らかい音色が好きならお勧めできません。
また、ペーターインフェルドのように、指がいたくなる硬さでもありません。
数あるナイロン弦の中で、コストパフォーマンスから考えても、トップクラスかな?とも感じました。
と、いうお話でした。お粗末。
メリーミュージック 代表
能村謙介