今回のテーマは私自身の経験をベースに考えるものなので「正論」とは言えないものです。その点を踏まえてお読みください。
一言で「こども」と言っても幼児期もあれば思春期も「こども」です。一人一人、環境も違い体力、能力、個性も違います。
他人と比較してしまうのが、人間の「つまらない知恵」です。「他人と協調する」こととと混同する人が多いのも事実です。
幼児期は特に「成長速度の違い」が大きく表れます。また、同じ家族でも兄弟姉妹がそれぞれに異なった能力、性格を持っています。
ましてや、違う環境で育った幼児が同じような能力を持つことはあり得ないことです。
「できる・できない」や「はやい・おそい」で子供の成長を比較するのはあまりにも安直で、なんの意味もありません。
歩くこと、走ること、読み書き、計算など幼児期に「出来るようになる」事は誰にとtっても「通り道」かも知れません。ただ、それが遅いとか、どれかが出来ないという事で「劣っている」と考えることが間違いなのです。人間の「乳児」は誰かの手を借りなければ成長できない弱い生き物です。ハ虫類の生き物や昆虫のような生きものよりも「生存力が弱い」とも言えます。
幼児期に大切なことは大人が「保護すること」と「知的な刺激を与えること」です。
その中に「音楽」と言うひとつの「刺激」もあります。音を感じることのできる子供であれば「人の声」を他の「音」と聞きわける本能を持っています。そして「音」と「音楽」の違いを感じるのも「知性」を持つ人間の子供ならではです。
音楽を「演奏する」ことの面白さを意識できるようになるのは、言葉を発することで自分の意思を誰かに伝えることの「面白さ」を実感できる時期です。それより前の乳児では、痛みや空腹、不快感を感じて「泣く」ことと、快感を感じて「笑う」ことしかできません。音が連続して聴こえる「音楽」も恐らく感情を査収することはないようです。
歌を歌う。音楽にあわせて動く(踊る)。この行為にも個人差があります。環境でも変わります。歌を歌う「環境」が多ければ歌うことが好きになる可能性も増えます。音楽に合わせて動いたり踊ったりすることも同じです。その環境を作れるのは、子供の周りにいる大人です。
楽器で音を出し、音楽を演奏する「能力」は、幼児が言葉を理解し記憶する時期に最も効果的に「学習」できます。当然のこととして「個人差」があります。言葉を理解することも、文字を読んだり書いたりすること個人差がるように、音楽の学習能力にも個人差があります。
この幼児期の「学習経験」はその後の段階「思春期」にも関わります。自我に目覚め、他人と自分を比較することを覚えます。「どうすれば他人に勝てるか」を考えるようになります。そのための「努力」が必要なことも理解するようになります。自分を高めること=自分の弱さを認めることができるようになるころに、やっと思春期が終わり「成人期」に入ります。
中学生・高校生の頃を「思春期」だけだと思っている人もいますが、人によってはすでに「大人」の意識を持てる子供もいます。
言うまでもなく、自分を観察することが一番難しいことです。
「勉強ができない=成績が悪いから、塾に通う」子供を見ると、その向こうに親の考えが透けて見えます。塾に通えば学校の成績が良くなるでしょうか?そもそも、学校の成績が悪い原因を考えればわかることです。
学校に行くことが「嫌」な子供もたくさんいます。理由も様々あります。友達が嫌いだったり、先生が嫌いだったりと「嫌な場所」であれば、行きたくないのは自然なことです。理由も確かめず「とにかく学校へ」と言うのは子供の生命にさえ危険を及ぼします。
学校で勉強しなくても勉強はできます。むしろ、学校以外で勉強したほうが「学習」できる子供もたくさんいます。塾に行けば成績があがると思うのは「迷信」です(笑)
楽器の演奏技術を「楽しみながら高める」体験をした子供は、どうすれば勉学の成績を上げられるかを「無意識に」学びます。
ただ楽器で音を出すだけでは曲を演奏できないことを「体験」します。さらに、考えて練習すれば上達することを「体験」します。まさに勉強法と同じです。
演奏能力を高めたいと言う「意欲」を、他に転用することは簡単です。意欲がなければ上達や向上することは不可能です。
意欲があっても「成功体験」がなければ、欲を実現=具現化することは不可能です。
曲を間違えずに演奏できるようになる「練習」を積み重ねた経験が「成功体験」なのです。しかも音楽には「100点」はなく「終点」もありません。だから常に上を目指せるのです。テストで100点を取れば、どんな子供でも喜びます。ただ、その後も100点を取り続けることは「重荷・ストレス」になります。
大人は自分の経験で子供を育てたがります。自らの成功体験と失敗体験を、子供にも当てはめたがります。そういう私自身もその一人です。だからこそ「子どもの個人差」をまず第一に優先することが重要です。たとえ自分の子供であっても、自分とは違うのです。一人の子供に当てはまったから、違う子供にも当てはまるとは限らないのです。自分の子供を育てるのは、すべての親にとって「初めての体験」なのです。だからこそ、自分の子供にだけは、他の子供とは違った「欲」を持つのです。
子供の能力を信じることだけが、親の務めだと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介