メリーミュージックブログ

演奏家夫婦が優しく丁寧に指導

TEL.042-782-1922

※原宿南教室〒252-0103
神奈川県相模原市緑区原宿南2-26-1

演奏の技術

弓を操る(最終回‥肘~肩)

ボウイングについての考察。
最後は、いわゆる「腕」の使い方について。

肘から手首までの前腕、肘から肩の関節までの上腕。そして、上腕を動かす、首と背中、主に肩甲骨周りの筋肉までを「腕」と考えます。
特に腕の付け根はどこ?と生徒に聞くと「肩」と答える人が多いのですが
実は肩の周りの筋肉も腕を動かすための筋肉です。

指から始めた話ですので、手首の次は肘の関節と前腕の使い方。
前回書いたように、掌を回転させる運動は前腕の回転です。
右肘の骨を反対の左手でつかみ、右手の掌を上、下に回転させてみてください。
肘の骨が動かないようにしても、掌が回せます。掌の回転は、弓の傾斜を変えられます。どの弦を弾くか。また、弦に圧力を加える仕事もできます。弓を弦から離すこともできます。
この前腕の回転運動に加え、肘の曲げ伸ばしの運動がダウン、アップの運動の主役になります。

弓先を使うとき、肘が伸びます。同時に手首の関節を左方向に曲げることで、弦と弓の毛の直角を保つ意識を持ちます。手首を上下方向に安直に曲げないで、出来るだけ掌と弓のスティックを平行に保つことを久保田先生は指導してくださいました。小指をスティックから出来るだけ離さないためにもこの手首の運動は重唱であることは前回書きました。

肘を直角に曲げたときに、手の指の形が一番「ニュートラル」の状態に出来ます。肘から右手の4本の指(親指以外)の第2関節までが「市間の板」のようになります。

肘の高さは‥

このニュートラルの状態で、肩から肘、肘から指の第2関節までが「1枚の板」の状態になるイメージで移弦します。この運動は「上腕」を上げ下げする運動です。肘を高くしすぎると手首と掌が下がりすぎ、腕の重さを弓に転化できません。下げすぎても同じように無理な力を使わないと腕の重さを利用できません。
肘の上下は弓中央から弓元にかけての「元半弓」でも利用します。
中央から弓元に移動するにつれ、肘を「上げる(身体から離す)」
元から中央に移動するにつれ、上がった肘を「下げる(身体に近づける)」
この運動は常に均一に動かすことが重要で、動きにムラがあると弓の圧力に大きな変化が起こり、弓がバウンドする原因になります。

肘は身体(お腹・胸の全面)より、常に「前方」に維持します。
この位置が前後に動くと弓を弦に対し直角に動かすことが困難になります。
身体の真横から誰かに見てもらい、ダウン、アップで肘が前後に動いていないか確認してもらうのが一番わかりやすい練習方法です。
肘(上腕)の上下運動は背中の筋肉を意識します。大切なことは

肘(上腕)は高くしても肩は上げない!

ことです。肩を首の方向(頭の方向)に引き寄せると方の関節が上方に上がります。首の筋肉に不要な力が入るうえ、自由な運動を妨げます。

常に肩を一番下げた状態で、肘(上腕)を上下に動かす練習が必要です。

弾く弦によって、弓の傾斜が変わり、肘の高さが変わります。さらに、元半弓を使うときはそこからさらに上方に上がります。

この複雑な運動は自分の眼で確認することは不可能です。
鏡を見ても、真横からの視点、真上からの視点はありません。

弓の動きを確認するうえで、最も大切なことは「音を聞く」ことです。
直角が崩れたときの音色、肘が高すぎたり低すぎたときの音色、移弦の際の雑音がないか。ダウンからアップ、アップからダウンになる瞬間の音色。

すべては音に現れますから、その音の特徴を聞き分ける集中力が必要です。
小さい子供に教える時は、実際に指、手首、肘、上腕に手を添えてあげることが最善の方法だと思います。大人の場合、弾きながら自分の身体の各部位を意識する練習が大切です。

長々と書きました。

言葉にすると、難しいですが、実際にボウイングすることはもっと難しいものです。

久保田先生の門下は、ボウイングが美しいと私は思っています。

美しいボウイングこそ、美しい音色を出す根源だと思っています。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

メリーミュージック代表
野村謙介

弓を操る(その弐‥手首編)

前回の指に引き続き、ボウイングの考え方です。
手首の関節は、掌を真下に向けた状態で左右と上下に動かせます。
左右に動かす自由度は上下に比べて少ないものです。左右と言っても実は「弧」描く円運動です。この運動をそのままボウイングに使うと、弓も直線的には動きません。弦と弓の毛が直角に接していることが、摩擦を最大限に引き出して良い音を出す基本ですから、この円運動はある意味で要注意です。

上下の運動は、肘から手首までの部分「前腕」を水平にしたとき、
脱力すると掌の重さで掌が下がります。掌(手の甲)を水平にすると前腕と手の甲が一直線(平ら)になります。さらに曲げると掌が少し上がり前を向く形になります。

ここで手首の関節だと勘違いしていることを一つ。
掌を前腕に対して。左右に回転させる動きは、手首の関節の動きではなく、前腕の回転運動によるものです。
例えていうと、ドアのノブを左右に回すときの運動です。手首を見てみるとわかりますが、親指側と小指側に骨があり、手首だけを回転させることは物理的に無理です。つまり、掌の回転(掌を上にしたり下に向けたりする運動)は手首の運動ではありません。

久保田先生は、この手首の上下の動きについて、
「前腕と手の甲を平らにする」ことを基準にするように指導されました。
時に弓の中央部‥右ひじが直角に曲げた時の弓の位置で、手の甲と前腕が曲がっていると怒られました。
弓元に来た時の手首の曲げ方については、後ほど「肘の使い方」で詳しく書きますが、多くのヴァイオリニストが手首を曲げ、弦と弓の直角を作るのに比べ、弓中央部の時の一直線の状態を保つように指導されました。

先弓に来た時、手首を安直に曲げ(へこませ)がちです。
先弓で弓の動き、圧力を自由にコントロールするために、手首の関節の「左右の動き」を使います。

弦と弓の毛を直角に保ちながら、手の甲を弓の傾斜(E線A線D線G線)と大きく変えないこと。

弓先で掌を安直に外側(身体に対し右側)に向けてしまうと、小指がスティックから遠くに離れてしまいます。この運動は「前腕の回転」です。手首の回転ではありません。具体的に例えます。

弓中央から弓先にダウンボウする場合です。
中央で一直線だった前腕と手の甲の「面の方向」を維持し、
弓先まで直角に肘を伸ばすとき、掌は身体から少しずつ前方に離れていきます。
その際に、手の甲(掌)の弓の毛との「面」を保ったまま、肘を伸ばします。
その時に、手首を前腕に対し左側に曲げます。窮屈な感覚、引っ張られる感覚があると思います。手首の左右運動が少ないほど、窮屈に感じます。でも、小指はスティックに乗せた状態を維持できます。
手首を上下に曲げ、前腕を左側(内側)に回転させると掌は、外(右方向)に向いてしまい、小指が何もできなくなります。

文字にすると複雑ですが、上腕と手の甲をできるだけ一直線にしたまま、ダウンで弓先まで伸ばし、小指をできる限り、弓から離さないことを意識します。

手首の柔軟性は上下運動より、左右の運動範囲を大きくできるようにすることが難しいのです。

指がついている掌(手の甲)の関節、その次の第二関節を耐雷にする。
「グー」をしたとき、手の甲と指が直角に近くなりますね。
「パー」をすると、手の甲と指先までが一直線になりますね。
「ひっかくぞ!」の手の指の曲げ方。手の甲と指の第二関節までを平らにする形です。
この形を保って弓を持つイメージ。難しいですが、久保田先生はこの形を毎回のレッスンで厳しく注意してくれていました。

実際に弓を動かす「肘(前腕)」と「肩から肘(上腕)」の動きはまた、次回。

弓を操る(その壱‥指編)

ヴァイオリンの音色を大きく左右する「運弓(ボウイング)」について。

演奏者それぞれに、弓の持ち方と腕の使い方は微妙に違います。
どの方法が正しいというお話ではありません。
弦をこすって音出す弓の毛。弓の毛を支え、指で持つためのスティック(弓本体)、弓の毛と弦との摩擦を作るための松脂(ロジン)
このシンプルな要素の弓を右手の指、掌、手首、手首から肘までの腕、肘から方の関節までの上腕、腕を支える首と背中の筋肉。それらを意識することはとても難しいことです。
当然のことですが、弓に触れているのは指ですが、指だけで弓を大きく動かすことは不可能です。ですが、指の関節の柔らかさと強さのバランスはとても重要です。
恩師久保田良作先生は弓の持ち方にこだわられました。
親指を曲げることは、力のかかる方向を考えれば曲げることが理にかなっています。
親指が、「てこ」の原理の一点になります。
弓の毛と弦が触れている部分も「一点」です。
そして、弓の毛と弦の摩擦を増やすためにかける「圧力」は、人差し指が、もう一つの点となります。
実は薬指も人差し指ほどの力はありませんが、圧力をかけることができます。
毛箱に薬指の腹を付け、スティックに対して上方(親指の力の方向と同じ向き)に引き上げることで、弱い圧力をかけることができます。
小指は「丸くする」ことを久保田先生は厳しく指導してくださいました。
人によって小指をほとんど使わない演奏方法や、小指を伸ばしたままの演奏方法も見受けられます。これが「悪い」とは思いません。
小指を丸くすることの意味の一つは、力の方向性です。
簡単に言えば、人差し指が圧力をかける役割をするのに対し、小指は圧力を弱める役割をします。これが、圧力を弱める時の「一点」になります。
親指との距離が長いほど、少ない力で圧力を弱くできるのは、てこの原理です。
圧力を弱くする必要なんてあるのか?と思う生徒さんもいるでしょうが、弓の重さ(約60グラム)を少し弱くしたり、弓を持ち上げてダウンを連続したりするときに、親指より外側(スクリューのある側)に力点がなければなりません。
薬指は先ほど「圧力をかける役割の補助」ができると書きましたが、実は真逆に「圧力を弱める役割の補助」もできます。小指の補助的な仕事です。
それらの指をすべて柔軟、かつ瞬発的な運動が出来るように意識し、関節と筋肉(腱)を動かします。
弓先になれば、小指が届きにくくなります。それでも、完全に離してしまわないことを久保田先生に習いました。これも必要な技術です。
そして弓元で小指と親指で圧力と弓の方向をコントロールすることがとても大切です。

弓をダウン、アップで動かすときに指を「必要以上に動かさない」こと。

実は私は学生時代、「関節を動かしてはいけない」と思い込んでいました。
実際には、指の関節と筋肉のコントロールで、より微細な弓の速度と圧力をコントロールできることを、リハビリを始めてから感じました。
ただし必要最低限!で。
手首から始まり、背中の筋肉に至るまでの使い方については、次の機会に!

お読みいただき、ありがとうございました。
野村謙介

私にとってデュオリサイタルは‥

音楽のレッスンを受ける生徒さんにとって、楽器を弾く目的は様々です。
私(野村謙介)の演奏への思いをつづってみます。

音楽高校、音楽大学で専門家になるための基礎知識を学び、多くの仲間からの刺激を受けました。
大学生時代の演奏アルバイトも、演奏家として必要なスキルを学ぶ機会でした。
大学を卒業して、演奏家ではなく「学校の先生」として20年間、授業と会議、事務仕事と部活(オーケストラ)指導にに没頭し、ヴァイオリンを練習する時間も気力もありませんでした。
退職し、音楽を教えて楽器を販売する生活に変わりました。
20年間のブランク。自分の演奏技術を見直すゆとりは、教室を開いた当時には感じなかったのが現実です。
浩子(以後先生を省略します)と「リサイタルを開こう」と話し、自分の演奏技術を振り返ったとき、初めて楽器を練習していなかった20年という長い時間を思い知りました

それからの10年。

中学1年生から大学を卒業するまでの時間、不出来な生徒(私)に根気強く演奏の技術を惜しげなく教えてくださった久保田良作先生の声を思い続けています。
ヴァイオリンを演奏する「技術」は一人で黙々と練習することで、ある程度は習得できます。もちろん、そのレベルは練習の内容と時間で大きく変わります。
浩子と一緒に演奏することは、私にとって特別なものなのです。
先ほど書いたように、学生時代にも多くの人から演奏の刺激を受けていましたが、その刺激とは少し違う感覚です。

自分の過去と現在と未来

大げさに思われるかもしれませんが、人それぞれに今日まで生きてきた歩みがあるわけです。
人との出会いと別れ。
記憶に鮮明に残る体験。
今現在、抱えている不安。
明日、来年‥の自分。

浩子とデュオリサイタルに向けて練習するとき、楽器を練習している自分が、すべての過去につながっていることを感じます。
ヴァイオリンと心から向き合える時間が、どれほど貴重な時間であるかを感じます。
人様に聞いて頂ける演奏技術ではない‥と思い込んでしまえばそれまでです。生徒たちに自分が言っている言葉「舞台では自分が一番です」なのですが、練習の時は真逆に「へたくそ!」と自分に苛立ちます。
それでも!一緒に演奏してくれる大切な人と、自分の好きな音楽だけを練習できることは、至福の時間なのです。
演奏することに幸福感を感じられるのは、演奏家への神様からのご褒美です。
そのご褒美は浩子という「女神」が持ってきてくれたのだと思うのです。

ここまで読んで「けっ!いい年してうすきみわるっ!」と思われた方には、もうしわけございません。
最後までお読みいただき、ありがwとうございます。

メリーミュージック
野村謙介

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

中学校弦楽オーケストラ指導

今年も茨城県の総和中学校ストリングオーケストラ部の指導に呼んでいただきました。

毎年恒例になっているこの出張指導は、20年中学校高校でオーケストラ指導をしていたころの経験と、その後のメリーミュージックでの指導経験を自分自身が確認するチャンスでもあります。

子供たちは、毎年入れ替わり、時には部員数が減ることも増えることもあります。
また、顧問教諭も異動することが宿命となります。私が伺い始めてから、3人目の顧問が指導の中心になっています。

そのアンサンブルは月に2度ほどのトレーナー指導と、ほぼ毎日の部活動で演奏会、ディズニーでの演奏など子供たちの発表の機会もきちんと認められています。ある意味で恵まれた環境です。

学校によっては、外部の指導者を招いてはいけない!ディズニー「なんか」で演奏することに教育的な意味はない!と言い切る三流の学校も「ありました」そんな学校は置いておいて‥

総和中学校の生徒たちに毎年違うことを伝えます。
今年は例年に比べ、伺った時期が早かったので、音の出し方、歌い方、それを表現する技術についてレクチャーしてきました。

腕の運動だけで楽器を弾いてしまう子供たちです。たった二つの音だけでも、弓が逆になると弾けないことに、本人たちが驚いていました。また、当たり前になんとなく弾いている旋律を「あたりまえでなく」弾いて見せました。その変化にも食い入るような眼で私を見ていました。

子供たちが何に向かって練習するのかをいつも問いかけます。
上手に弾くということが「間違えずに弾くこと」とは違うことを教えます。

また今年も新しい感動と課題をもらって帰ってきました。

演奏中の「集中力」

練習であっても、レッスンの時でも、発表会、演奏会でステージの上にいて演奏するときでも、「何を考えているのか?」ということがとても大切なことです。

今日はその「考え事」を考えます。
趣味で演奏している方に試してもらいたいのが「目を閉じて音を出す」体験です。

暗譜をして弾くという意味ではなく、むしろ無意識に見ている風景を消すことに目的があります。
楽譜を見なくても音は出せますよね。もちろん、楽器を構えて音を出す準備をするまでは目を開けてしっかり準備して良いのです。さぁ、音を出してみると、何かが違うはずです。

何気なく見ているもの

が、わかるはずです。楽譜や指、弓を見ないことで私たちの五感は鋭くなります。
聴覚、指先の感覚、あごや肩に伝わる振動‥いつもは見過ごしている感覚に気づくでしょうか。

音が出始めてから出終わるまで、常に集中していること。この連続が「音楽」になります。
何も考えないで、音楽に没頭し、まるで自己陶酔しているかのように見えるプロの演奏ですが、何も考えていないわけではなく、自分の出す音にすべての神経を集中しているのです。
ただ、集中するといっても、何に集中するのかが問題です。

楽譜を思い出すことに集中していては音は聞けません。
指使いやボーイングだけに気を取られ続けていても音は聞こえません。

「音を聞きながら、次にすべきことを考え、出した音に集中する」
その繰り返しです。音の中に、技術のすべてが含まれています。そんなに難しいことではありません。かすれていたり、つぶれていたり、ピッチが外れていたり、硬すぎたりといくらでも聞き取ることができます。

もう一つ大切なことは、考えるという感覚は、同時にに一つのことしか考えられないという現実です。一度に二つのことを同時に考えうることはできません。考えずに体を動かすことはできます。例えれば‥

車の運転(自転車の運転でも)を考えてみてください。
無意識にいろいろな操作を同時にしているはずですが、一つ一つを考えてはいません。
考えなくても体が動いているのです。
楽器を演奏するときも、同じように「できます」が「しない」のです。

少しでも短い時間、一瞬にあることに注意を払い、すぐに違うことに注意をむけます。
右手、左手
右手でも手、手首、肘、肩
左手は指、掌、手首、肘、肩
たくさんの「部分」がありますが、短い単語で注意する部分(体の部位)に注意が向けられます。

練習するとき、陥りやすい落とし穴。
一つのことに、こだわり過ぎることです。
例えば、左手首に注意を集中した「まま」でずっと弾き続けると、他のことは考えられないままで音を出し続けてしまうことになります。気が付いた時には、音も聞かず、左手首のことしか頭になくなっています。

音楽を感じることは、技術ではありません。感情です。
感情のない音楽は「音楽」ではない「音の羅列」にすぎません。
どんな音楽であれ、演奏する人の感情を、技術で音にするのです。
「こんな音を出したい」「こんな音色で弾きたい」「こんな音楽にしたい」
それを具体的に、どうすればできるのかが、技術ですから音を出すこと自体が「技術」なのです。
音は出せても音楽にならないのは、まず自分がどんな音を出したいのかというイメージがないからです。いくら音をつなげても、音楽にはなりません。
いくら練習しても、きれいな音が出ない‥思ったように指が動かない‥
時間をかけて、体が無意識に自分の出したい音を出せるようになるまで繰り返すしかありません。

目を閉じて、自分の音に集中できれば
きっと「目をつぶってもできる」ことの意味が分かるはずです。

お試しあれ。

メリーミュージック代表
野村謙介

ケースを選ぶポイント

ヴァイオリンケースを選ぶとき、どんなことに重点を置きますか?


私、野村謙介は「ケースマニア」を自称しております。あくまで自称ですので。


そもそも、ケースは何のために、いつ使いますか?


「楽器を持って移動するとき」「保管するとき」


雨の日、楽器をもって出かけるのは気を使います。大きな傘をさしても風が吹くとケースはびしょぬれ(涙)

雨に濡れたケースから、雨水が中に入る(染み込む)と楽器が濡れます。致命的です。

ケースそのものをカバーする「ケースカバー」が市販されています。最近の製品は、ケースを背負ってもカバーできるように作られています。ただ、



「たかい!」


一番安くて、かつ、かっこ悪い(ダメだけど)防水対策は「45リットルポリ袋」です。
もちろん、90リットルサイズでも。使い捨てるもよし。ゴミ袋として再利用するもよし。しかし、白色・黒色は街中でかなり!目立ちます。透明なものをお勧めします。


ケースカバーがない状態で、ケースが雨にぬれるとどのくらい、中に染み込むのか?

自分の楽器とケースで実験したくないですよね!わたしも当然。でも

やった人たちがいます。


実は私、ヴァイオリンケースを開発・製造・販売までしたことがありまして、その時の製造メーカーが各社のケースを新品で買い求め、ホースで水を30分かける!という過酷なテストを行いました。結果‥


どんな高いケースも中に水か染み込みます。


ただ、その量はケースによって大変な違いがありました。

どの製品が?

申し訳ありません。はっきり申せませんが。

「値段が一番高いケースがよいとは限らない」

ケースの主素材がカーボンであっても、FRPであっても、「開口部(咬合部)」「ヒンジ部」から水が入ります。ケース表面主素材が布地の場合、生地が撥水加工してあっても次第に水が染み込んでしまいます。


ファスナー(ジッパー)が防水と、うたわれていても、水が入ります。

結論。雨の日は、カバーをかけましょう。


ケース選びのポイントその2。

「堅牢性(丈夫さ)」です。


満員電車の中で、抱えて持っている楽器ケース。他の方の「じゃまなんだよっ!」という無言の圧力と視線に耐えたとしても、実際、人に押される圧力に耐えられないケースもあります。

昔のケースは木枠に布カバーをつけた構造でした。高いケースはとにかく丈夫でした。長いバス移動の際には足元に置いて足を載せていられたそうです(汚れを気にするとできません)


発泡スチロール素材のケースはあっさり潰れます。楽器を守れなければ「ケースではない」


次のポイントは「重さ」


軽くするためにはどうするか?

素材を軽くする&パーツを軽くする&余分なパーツをつけない


軽い素材は?「炭素繊維(カーボン)」です。が!

実はカーボン繊維は同じ厚さ、同じ面積だと他の樹脂素材(FRPなど)より重いのです!これホントです。


ただ、強いのです。FRPで、ある硬さ(強さ)を得るために必要な厚みを、カーボンではずーーーっと薄くて硬さが出せます。つまり


カーボンケースは本来強いケース


なのです。軽いケースと思い込むより本来丈夫なケースなのです。


重さはカタログ数値より、実際に手にしてみないと実感できません。

カタログにかけない、バランスとハンドルの形状、ケース全体の凹凸計上で重くも軽くも感じます。ケースを楽器店で選ぶとき、ぜひ、楽器・弓・小物を入れてみて、手にもって比べてください。必ず違いがあります。


色・かたち


これは好みなので、あえて触れません(笑)が、ケースを開けたときに、蓋(ふた)が完全に向こう側に開ききるタイプ(日本以外はこちらが主流)と、90度に開いたところでひもがストッパーになるタイプがあります。一長一短です。これもお好みで。

色のバリエーションが多いものと少ないものもありますね。これもお好み。





実は一番、気にしてほしいポイント


留め具の「開き、にくさ」・‥開きにくいほうがいいのです


知らない間に留め具が外れ、背中でケースのふたが開いていた!これ、私の経験です。

鍵がかかる留め具もあります。ダイヤル式なら問題ないですが、「鍵」を使って開けるタイプは、忘れたら壊すしかありません。

簡単に開けられる=あいてしまう!

ファスナー(チャック)式だったころには考えられない事故です。

カーボンなどの樹脂製ケースの場合、留め具に注目してください。


ちなみに私はヴィオラのケース(BAM)の留め具を改造して、フライトケースに使われるロータリー式に取り替えました。動画もございます。

改造ビオラケース

私の「お気に入りケース・トップ3」


第1位‥自分で開発したケース(すみなせん!生産販売終了していて入手は困難です)

第2位‥BAM社製ハイテックシリーズ


第3位‥フューメビアンカ(白川総業)


そんなところですね。あくまで、好みの問題ですが、

良いケースを持ちましょう!


メリーミュージック

野村謙介

弓を選ぶ

今回はヴァイオリンの弓について。


ヴァイオリンの音を出す仕組みを考えてみて下さい。

弦を弓の毛で「こすって」音が出ます。当たり前!と思いがちですがもう少し深く考えてみます。

弦を指ではじいて音出すピチカートをするとき、弦を横に引っ張って離した瞬間、弦は横に振動して音を出します。

強く引っ張れば大きいピチカート、弱く引っ張って離せば小さなピチカートの音がでます。


当たり前?


それでは弓の毛でこすって音を出すときには、どうでしょうか。



「どうしたら大きな音が出せる?」という問いに

「弓を速く動かす」「弓をたくさん使う」と答える生徒さん、特に中学生・高校生のオーケストラ部員が答えてくれます。


実は「強くこする」ことが正解です。


弓の毛と弦は摩擦で音が出ることは想像できますが、よく考えると少し「ん?」と思うことがありますよ。

弓でダウン(下げ弓)の状態で音を出すとき、弦は演奏者から見て右側に引っ張られ「続ける」ことになりますよね。あれ?ピチカートの話で弦が左右に振動して音が出ることは書きました。あれれれれ?


いつ、弦は左に戻り、また右に(ダウン方向)に引っ張られているのでしょう?


みなさんご承知のように、弓の毛の表面にある凸凹に、粘着質(粘り気)のある松脂の粉がつくことで、馬のしっぽの毛にある小さな凸凹が大きなネバネバした凸凹になって、弦に引っかかって音が出ます。


弓の毛に引っ掛けられて、ダウンなら右に引っ張られた弦は摩擦より大きな力で反対方向(ダウンの場合は左)に滑って戻ってまた引っ掛けられて、引っ張られて‥の繰り返しをしています。


つまり、弦の振動の上で弓の毛は常に細かく滑っていることになります。


大きな音で弾くと弦が大きく振動します。弓の毛も振動します。弓の毛を弓の両端で引っ張っている、弓の木(スティック)も振動しています。


このスティックの振動を弓を持っている右手の指で、感じられます。「え?」と思う方は、すぐに試してみてください。


弓の木は弦や、ヴァイオリン本体と違い、音を出しません。

が、弦を振動させる弓の毛を、支えるという、とても大切な仕事もしています。


ところで「良い弓」とはどんな弓でしょうか?


まれに「弓はとりあえず何でもいい」「楽器ほど重要ではない」と間違っている方がいます。

まさに「おおまちがい」なのです。弓は楽器本体とまったく同じ重要性を持っています。


弓の重さと長さには規定があります。というより、ヴァイオリンが今の形になってからも、しばらくの間、弓は形の変化がありました。現在の弓の「モデル」となったのが「トルテ」という作家の弓と「ペカット」という作家の弓です。現存する二人の作品は非常に少なく1000万円を超える価値があるともいわれます。

ヴァイオリンそのものより、修理できる部分が少なく、折れてしまうと復元は不可能で全損扱いとなります。



弓の重さの重心は、弓の木の真ん中‥ではないこともご存知ですよね?「え?」と思われたら、ご自分の弓でお試しください。真ん中よりはるかに「元」よりに重さの重心があります。


弓を持った時、軽く感じる弓と重く感じる弓があります。実際にはかりで計測すると全く同じ重さの弓でも!


それは弓の重さのバランスによるものです。先が重ければ重く感じます。先の重い弓は大きな音を出すのが楽です。弓先で大きな音を出すためには、右腕が伸びている状態で親指と人差し指で重さを加える(薬指を上に引き上げる力も少しは使えますが)ことが必要ですので、先が重たいとその点で有利です。


ただし、先が重いと素早い移弦が難しくなります。慣性の法則です。先が軽いほど、振り回されないことになります。
が、軽ければよいわけでもないのです。


そして、弓の弾力の強さがあります。「縦と横」の強さがあります。


弓を持って、左手に弓先を乗せ、弓の毛の方向に曲げようとするのが「たて」の力、

その90度方向(弦に乗せたときには前後方向)が「よこ」の力です。


一般に強い弓と言われるのは、縦方向、横方向に曲がりにくい、硬い木の弓を言います。


強い弓ほど良いでしょうか?


答えは「いいえ」なのです。


硬すぎると弓の毛の弾力と弦の弾力を、弓の木が感じられず、結果として演奏者の指への振動の伝達がなく、
「毛と弦の音」しかしなくなります。


柔らかすぎると、フォルテを出したいときに、弓中央で腰が砕けた状態になり、また横方向に弱いと音色の変化を出すことができなくなります。




「バランス」「強さ」のどちらともに演奏者の好みが大きく分かれます。

弾きやすさにも大きな違いがあります。弾く曲にもよります。


「音量が出せて、音色の変化量が大きく、扱いやすい弓」


はっきり言えばともて希少です。楽器を選ぶより難しい時代です。なぜならば


弓に使われるフェルナンブッコという種類の木が原生しているブラジルから、ワシントン条約によって、原木の形での輸出が禁止されたからです。弓の形をしていれば輸出も、日本からの輸入もできます。ブラジルで作られた弓‥ってあまり見ないですね。ありますけれど、数は少ないです。現在の弓は昔、手に入れた原木を大切に使って作られているか


代用の木


で作られています。そして「カーボンファイバー」が代用として使われる時代になりました。


残念ながら、木の振動の伝わり方までは現在のカーボン弓には求められません。


強さ、バランスは最高の弓と同じレベルのものを大量に、当たり外れなく作ることができるので

木の弓の「セカンドボウ」としてなら、大いに活用できます。また、代用の木でできた弓と同じ値段なら私はカーボンの弓をお勧めします。なぜなら、将来、自分の気に入った弓を手に出来たとき、代用の木で作られた弓は腰が抜けて使い物にならなくなっている可能性が「極めて高い」のです。カーボンは長く使えます。




いかがでしたでしょうか?

弓の重要性、少しは伝わったでしょうか?


ご質問などありましたら、お気軽にメールでお問い合わせください。


office@merry649.com


代表野村まで、どうぞ!みなさまのご感想などもお待ちしております。



メリーミュージック代表


野村謙介


趣味の楽器とプロの楽器

特にヴァイオリンは「高い」と思いますね。
もちろん、ピアノだって高いのですが、一番安いヴァイオリンと一番高いヴァイオリンの「差」が桁違いですね。

一番安いヴァイオリン、ケースまでセットで新品1万円以下で手に入ります。でも!これを「ヴァイオリン」と言えるのか?と真剣に問われれば「いいえ」と答えます。

ヴァイオリンがヴァイオリンとして認められる条件で一番大切なのは、使われている材料です。木材もニスも含め、本物のヴァイオリンというために「これを使って、こう作る」というセオリーがあります。それを無視して形と色だけ、マネをしたものは「レプリカ」と言えます。

そうはいっても、趣味で使う道具にどれだけお金を使えるでしょうか?人によって違いますが、少なくともその道具「楽器」でお金が得られるのでなければ、まさに「贅沢」かもしれません。中には、安く買って高く売って利益を得る「コレクター」と呼ばれる方もいますが、趣味で演奏する方とは楽器購入の目的が違います。

演奏して楽しみたい。でも自分が自由に使えるお金は、ここまで!でまず予算が決まります。その金額によって、手に出来る楽器を選ぶ際の選択肢が増えると考えてください。

先ほど述べたヴァイオリンとしての条件を満たしている楽器の中で、「音色」「音量」「造作の美しさ」が選ぶポイントになります。演奏技術によって出せる音色、音量は変わります。プロが演奏すると音色、音量をコントロールできます。趣味で初めて楽器を手にする方にはその技術はなくて当たり前です。ですが!

初心者だからこそ、楽器の持っている音色、音量が重要なのです。

「私にはもったいない」という言葉と「技術がないから差が出ない」という言葉。
一番良く耳にする言葉です。気持ちは理解できますが、間違っています。

趣味の方の「今の技術」を見極めて、その技術がこれから伸びていくことを計算に入れて、楽器を選定できるのは「プロ」です。つまり、純粋に楽器の良しあしだけでなく、その生徒さんの予算と技術、すべてを考えて少しでも趣味で楽しめる楽器を選ぶことが私たちプロの演奏家の仕事でもあります。

プロが使う楽器は同じヴァイオリンであっても、用途が違うと言えるでしょう。演奏するホール、地域、曲の編成など、様々な必要条件をクリアできる楽器でなければ、お客様に満足してもらえる演奏はできません。無理をしても楽器を買うのは、そうした必要に迫られてのことです。その結果として10億円を超える値段が楽器につきます。ありえないような金額ですが、これは「ビジネス」の世界の結果なので土地の値段が場所によって違うのと同じです。金額の根拠はないのです。10億円のヴァイオリンが10万円のヴァイオリンの‥えーっと1万倍?(間違っていたらごめんさない)いい音がするのか?大きい音がするのか?といえばそんなはずがありません。手間が1万倍違うわけでもありません。
「ほしいから買う」「買うために今の楽器を売る」の繰り返しも値段が上がる理由の一つです。古ければよい音が出る¨とは限りません。古ければ高い¨とも限りません。間違えてはいけません。古くてもダメなもの、さらに言えば「ヴァイオリンのレプリカ」だってあるのです。

趣味で楽器を選ぶなら、信頼できるプロの演奏家で楽器を選ぶ経験の豊富な人に選んでもらうのが最善策です。間違っても、お店で「あれ、ください」だけはやめましょう。

次回は「弓の選び方」について。

メリーミュージック代表
ヴァイオリニスト 野村謙介

弓の持ち方、弓の動かし方

連続の投稿になりますが、ヴァイオリンを弾いて自分の音に疑問や不満がある方は多いですよね。
難しい曲をパラパラといとも簡単に弾いているプロの演奏をまねたい気持ちはアマチュアに限らず、プロでも持つものです。
良い音を出したいといつも考え続けること。これは簡単なことではありませんが、一番大切なことです。
それでは、どうすればよい音が出せるのか?という疑問に突き当たります。
私の師匠は数多くの演奏家を育てた教育者であったと同時に素晴らしい演奏家でもいらっしゃいました。
その久保田良作先生が私たちに常におっしゃっていたことの一つが「弓の持ち方」と「右腕の動かし方」でした。
子供だった私自身、そのレッスンの中で「どうして?」という気持ちになっていたのも事実です。ただ先生のおっしゃることをできるようになるまで、ひたすら自宅で練習し、レッスンに伺い先生の判断をお聞きすることの繰り返しでした。
弓の持ち方について、少し書いてみます。
1力を余分に入れずに、形を崩さない。
2親指を掌に近づけた状態で弓に親指の指先を当てることで、小指と薬指の第1・第2関節を曲げることができ、掌に一番近い指の関節は、右手の甲と平らな状態にできる。
3可能な限り、弓先でも小指を伸ばさず、手の形を変えないことで素早く元の形に戻すことができる。
4弓の先半分は右ひじの曲げ伸ばし、元半分は右腕の上下運動を加えることで、手の方の変化を抑えることができる。
ほんの一部ですが、この4つのことを考えながら音を出すことはとても難しいことです。
常に一定の圧力と一定の速度で弓を動かし続けることが出来なければ、自分の思った音は出せません。
さらに、気が付かないうちに弓を強く持ってしまっています。特に親指は自分から見えない位置にあるため、無意識に強く持ってしまいます。そうすると、すべての指に反発する力が加わるため、弓を柔らかく持つことができません。
弓を持つ手が、車で言うならサスペンション、またはショックアブソーバーの役目を果たします。
弦と直接摩擦で擦れあう弓の毛も1本ずつはとても弱く細いのですが、演奏時に使う弓の毛の量を考えると大きな弾力性を持っています。
また、弓の木についても同じことが言えます。
アマチュアの方が「柔らかい」と評される弓の場合、弓中央部の剛性が足りない場合もあります。
また逆に「強くて多き音が出る」と言われる弓は、弾力が少なく重たい場合があります。
私の師匠は弓の張り方にも注意をされました。弱い張力、つまり張りすぎず弓の中央部の木と毛の距離を見極め、弓の木の弾力と弓の毛の弾力を感じられる、ちょうど良い張り具合を見極めることが大切なのです。
指も人差し指以外のすべての指がクッションの役目を果たすために、曲げられる状態を維持する形が大切です。
弓の持ち方を見れば、自分の同門を見つけられる¨と私は思っています。そのくらい、久保田良作先生の指導は徹底していました。私もできる限り、先生の教えを生徒さんに伝えたいと思い、日々レッスンをしています。
天国から厳しく優しい目で、「ちゃんとレッスンしなさい」と言われているようです。