ヴァイオリン奏者が考える弦楽器の録音と音作り

今回は「録音」について書いてみます。
言うまでもなく、演奏をホールで聴く「ライブ」「コンサート」と録音された音を、ヘッドホンやイヤホン、スピーカで聴くことは、全く違う「音」です。どんなにお金をかけても、会場で響く音を完全に再現することは不可能です。
 一昔前、録音と言えばカセットテープやオープンリールテープに録音するのが当たり前でした。現在は「PCM録音」簡単に言えば、テープの代わりに音をデジタルデータにして、パソコンのハードディスクやSDカードに記録する方式になりました。
 昔と変わらに事もあります。
録音する際に必要になる「マイク」です。
演奏する会場が音楽ホールであれば、舞台上の天井に「三点吊りマイク」が設置されている事もあります。さらに言えば、そのマイクを使って録音するための機材も備えられているホールもあります。ホールに依頼すれば有料で、録音をしてくれるケースもあります。
 ただ、必ずしもそんな環境ばかりではありません。当然、録音を仕事にしている業者に頼めば時間単位での支払いで録音してくれますが、かなり高額になります。
 個人で演奏会を開催し、限られたスタッフの人数で実施する場合、どんな方法で録音すれば良いのか?そして、その録音したデータを、どう処理すれば自分の気に入った「音」に出来るのか?教えてくれる人は少ないものです。

 まず、用意するべきものは以下の機材になります。
1.コンデンサーマイク2本
2.マイクスタンド1本+ステレオアープ+マイクホルダー2個
もしくは、マイクスタンド2本とマイクホルダー2個
3.録音するためのレコーダー
4.マイクとレコーダーを設読するマイクケーブル2本(長さはマイクの位置とレコーダーの位置で変わります)
5.レコーダーの音を確認するためのヘッドホン(できるだけ密閉型のもの)
当然、電源も必要になります。
レコーダーに記録するためにSDカードが必要な場合もあります。

 マイクですが、何dも良いとは言えません。
多くの場合、マイクには「ダイナミックマイク」と「コンデンサーマイク」のどちらKです。ダイナミックマイクは、電源を必要とせず主にカラオケやボーカル、司会など絵で使われるもので、大音量に耐えられ頑丈ですが、繊細な音を録音するのには適しません。
 コンデンサーマイクはレコーダーからマイクケーブルを経由して、48ボルト(実施には非常に小さい電流です)の電気をマイクが受けて使われます。最近はUSBケーブルで電源を供給するマイクが多いのですが、会場で弦楽器の演奏を録音するのは向きません。コンデンサーマイクは繊細な音を収録するためのマイクですが、この中でも音源(楽器や人間の口元)に数センチの距離まで近づけて録音することに適したマイクが殆どで、会場で演奏者から離れて録音することに適しマイクは限られいてます。
 ちなみに私は「SeElectoro」というメーカーのペアマイクを使っています。このマイクには周囲の音360度をまんべんなく録音する「無指向性マイク」と根らっと方向の音を録音するための「指向性マイク」があります。無人の会場で響きをすべて録音するのであれば、無指向性マイクが良いのですが、ほとんどの場合客席にはお客さんがいて、物音を立てますので、指向性マイクが適しています。
 似たようなマイクで2本セットで2~3万円の案かマイクもあります。探す時には「ぺzマイク」で検索すr事をお勧めします。

 会場でマイクを設置するばよですが、演奏する環境によって違います。
 舞台上にマイクスタンドを設置する方法は、ピアノの録音の場合に一般的ですが、弦楽器とピアノの「デュオ」を録音する場合には、ヴァイオリニストから2~3メートル前方でヴァイオリンの高さに2本のマイクを設置するのが理想的です。が!お客様から見ると「邪魔!」「目ざわり!」と思われます。
 その場合には、スタンドの高さを低くして客席から目立たない程度に下げるしか方法はありません。ヴァイオリン演奏者の「下」から、あおって録音するのでどうしてもピアノの音を大きく拾ってしまいます。

 基本的なことですが、録音した音から雑音をある程度除去することは可能です。例えば、お客様の咳払いとか、何かが落ちる音は特別なソフト(アプリ)を使えば相当小さくできます。ただ、エアコンのノイズは、一定の音量で一定の周波数で鳴り続けているため、完全に消そうとするとその周波数の「演奏の音」も小さくなってしま詩ます。
 ピアノとヴァイオリンの「バランス」も録音後に変更することはほぼ、不可能です。ヴァイオリンの出す音の高さとピアノの音の高さは基本的に「重なっている」ためです。ヴァイオリンの出せない低い音を弱くすr事は後から出来ますが、低温の少ない痩せた音になります。つまり、リハーサル時にレコーダーにつないだヘッドホンで、ヴァイオリンとピアノの「バランス」がちょうどよくなる位置にマイクを設置することは、絶対に不可欠なことなのです。

 レコーダーですがマイクミキサーを兼ねた大掛かりなものもありますが、捜査が難しく自分たちで録音する場合には不向きです。
 私はTASCAM(昔のTEACティアック)社の4本マイクが設読できるコンパクトなレコーダーを使っています。通常は2本のマイクで録音しますが、ピアノとヴァイオリンにそれぞれマイクを近づけて録音したい場合、4本のマイクが接続できて音量も変えられるレコーダーで重宝しています。ビデオカメラのレコーダーの上に載せて撮影し、ビデオカメラのマイク端子にレコーダーの音を送ることもできて便利です。

 最後に録音した音を「創る」作業です。
パソコンを使うのが一般的です。私はAdobeの「Audition」というソフトで音を加工しています。このアプリはラジオ局などで多く使われていたもので、ほとんどの音作りがパソ故日大で可能です。このソフトでなくてもいくつか編集ソフトがありますが、多くはDTM・DAWと呼ばれる「パソコンで音楽を作る人」向けのソフトです。録音物を加工するのには不向きなソフトも多いのが実状です。
 基本的には、ノイズの除去と音の高さごとの強弱=イコライザー処理、音場=空間の響き・残響なでの追加が主になります。
 ヘッドホンとスピーカーで、聴こえ方が全く違いますので、両方を聴き比べしながら思考さう後して最善の音を作ります。
 この作業によって、音色はどうとでも変更可能です。スチール弦で演奏した音を、ガット弦の音にすることも可能です。逆もできます。
 ただ先述のように、録音された音がもやもやしていたり、ピアノの音が大きすぎる場合には手の施しようがありません。録音に失敗すると思った音に仕上げることは大変な作業になります。
 加工した音は「WAV」という形式で保存するのが理想です。MP3は圧縮して保存する形式なのでお勧めしませんが、配信する時などにはデータのサイズ=大きさGあ小さくなるので助かります。
 あまり細かいことは書きませんでしたが、大まかにこんなところですね。
 参考なれば光栄です。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介