映像は趣味で楽器の演奏を楽しむ生徒さんたちの演奏を切り抜いた動画です。あ。私と浩子さんも弾いてますが(笑)
楽器の演奏は、演奏する人にとって楽しい事のはずです。
しかし実際にはどうでしょうか?多くの人にとって楽器を弾く楽しさが徐々に薄れ、楽器や音楽に対する関心が無くなっていく流れは自然なことかも知れません。「音楽大学に合格するために!」や「コンクールで優勝するために!」と言う高い目標を持つ人なら話は別ですが、大多数のアマチュア演奏家にとって「モチベーションを維持する」事は楽器を上手に弾くこと以上に難しいことかも知れません
以前のブログで「部活動」で演奏レベルが高くなる理由を書きましたが、部活動で楽器を演奏する「目的」は様々です。部活動自体が目標を持っているケースもありますが本人が楽しいと思えば3年間の中学校生活・高校生活の間、楽器の演奏を楽しめます。
卒業しても楽器の演奏を続ける人は全体の1割に満たない人数だと思います。多くの人は「満腹」なのか(笑)卒業後に楽器から離れます。演奏の楽しさより「友達との時間」の楽しみが大きかったのかもしれません。
どうすれば長く楽器の演奏・練習を楽しむことが出来るのでしょうか?私自身の演奏経験と多くの生徒さんと関わってきた経験から「秘訣」を探してみます。
1.常に新しい目標を見つけること
2.一緒に演奏する仲間を作ること
3.自分の演奏を誰かに聴いてもらうこと
4.練習すれば上達することを信じること
この4つに集約されると思います。もちろん4つすべてを満たす必要はありません。ひとつでも十分にモチベーションは維持できます。
私自身は音楽大学卒業後、中学高校の専任教諭として20年間勤務した期間、ほとんどヴァイオリンの練習は出来ませんでした。現実的に仕事のない日に楽器を練習する気力も体力もありませんでした。
生徒たちの指導で楽器の音を出すことはありましたが「練習」とは言えません。長いときにはほぼ1年間、楽器のケースを開けることも出来なかった時期もありました。音大時代に毎日のように6時間、時には一日中、楽器を練習する生活をしていた自分が「就職」を境に楽器から離れた生活になったわけです。
楽器を弾けないストレスよりも仕事のストレスが膨大だったため(笑)楽器を弾きたいとも感じませんでした。不思議ですね。
退職後に自らの音楽教室を駅前に開き、朝10時から夜9時まで休憩も取らず、定休日もなく(当初はありませんでした)レッスンをし続ける日が始まりました。自分の楽器の練習をする時間が…作れませんでした。この時も楽器を練習するより「レッスンをする」事しか出来なかったので練習したいと考えることもありませんでした。
そんな日々からの転機は浩子さんとのデュオリサイタル開催でした。2007年から練習を開始して2008年に松本と相模原でのコンサート実施に向けて私の「リハビリ」が始まりました。学生の頃に戻ったような練習の日々が始まり、レッスンも月曜日を定休日に設定。人間らしい生活が始まりました。
1回目のリサイタルは「弾きたい曲は全部弾こう!」実際、2度目を開催できるかどうかも決まっていなかったので、今考えると「なんで?こんなにたくさん弾いたの?」と恐ろしくなるほどの曲数でした。私にとっては22年振りの練習でしたが「目標」がはっきりしていたこともあり毎日当たり前のように練習できました。
「秘訣」のひとつ「一緒に演奏する仲間を作る」事の実践です。もし私と浩子さんとの再会がなければ練習することもなかったかもしれません。「人任せ」に聴こえるかも知れませんが、人との出会いは自分以外の「誰か」の存在があることが前提なのです。音楽に関わった生活をしていても「演奏したい」と言う気持ちが無ければ練習は空虚なものになります。
「練習すれば上達すると信じること」は自分自身の考え方の問題です。以前のブログでも書きましたが、自分の演奏を客観的に聴くこと・観察することは最も難しいことです。
練習しても思ったように演奏できない時・練習する時間が取れない時に「負のスパイラル」に陥りやすいものです。人間にはバイオリズムと呼ばれる「周期的な波」があります。
身体的にも精神的にも「波」を感じるのは人間が持って生まれた生きるための防衛本能とも言われています。どんなに「頑張ろう」と意志が先行しても肉体がついていかないこともあります。逆に身体は健康なのに精神が不安定になることもあります。同時に落ち込むこともあります。つなり「休息」することが私たちのDNAにはプログラムされていて、脳と肉体に無理をさせないように出来ているのだと思います。
「練習・音楽に気が向かない」ことは誰にでもあることだと思います。まれに「練習が辛いと思ったことがない」と言う人の話を聴きますが私には信じがたい話です(笑)「常に新しい発見をする」ことがモチベーション維持の秘訣だと書きましたが、いくら練習しても新しい問題解決が見えない時もあります。
例えて言うなら「大好物」を毎食、毎日食べ続けたら?恐らく1週間もしたら「他のものを食べたい」と感じるのではないでしょうか?
人間の味覚は日々微妙に変化しますが、同じ香り、同じ味、同じ食感のものを食べ続ければ「飽きる」のは当然です。いくら目先を変えても大差はないでしょう。
楽器の練習でも毎日同じことをしていれば「飽きる」日がきます。まして「趣味」で演奏する人にとっては演奏レベルを高めることより「楽しむこと」が目的なのですから、楽しく感じなければやめたくなるのは当然ですよね?
「音楽が楽しい」と感じる瞬間は、音楽に接している時に感じるものです。そして音楽は一人で苦しんで練習するべきではありません。自分以外の人と「共感」しあえることが音楽の本質です。
すべての音楽は「誰かが誰かのために作る」ものです。作曲にしても演奏にしても同じです。「人に聴いてもらえる演奏ではない」と思っているのは自分だけです。もし自分の大切な人に自分で音楽を演奏して届けようと思ったら?「ヘタだから」と思うより喜んでもらおうと考えるはずです。それが音楽になります。
大切な人へのメッセージを言葉や行動ではなく「音楽」で伝えられる幸せは「最大のモチベーション」です。家族でも今はいない人でも「誰かのために」演奏してみてください。
きっと何かが変わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介
