動画はレイナルド・アーン作曲「クロリスに」
私たちのお気に入りの1曲です。フランス語の歌曲がオリジナルです。
この時の演奏ではG-dur=ト長調で演奏していますが、以前に全音高いA-dur=イ長調で演奏したことがあります。そちらもヴィオラで演奏しました。それぞれの調で異なった良さがあります。
全音=長2度違うだけです。ヴィオラで演奏しているので最低音はC=ド、G-durで演奏する際には最低音がFis=Fシャープになるため、ヴィオラのC線を1度だけ使います。それ以外の音はヴァイオリンでも演奏可能な音域です。
一方でA-durで演奏すると最低音がGis=Gシャープになりヴァイオリンでもすべての音を演奏できる音域になります。
さて、音域や調性の話から「演奏の技法」に話題を変えます。
先述の通り原曲は歌曲ですから楽譜にはスラーや弦の指定は一切書かれていません。つまり音と音の間をレガートにするのか?発音の際にアタックをどの程度付けるのか?と言う指示がなく、使用する弦や指の指定もないので、移弦するべきなのか?一つの弦でポジションを移動して弾くのか?グリッサンドがあった方が?ない方が?などをすべて考えて決める必要があります。これは「クロリスに」」に限ったことではなりません。基本は「自分で考えて決める」のが演奏の個性になります。
この演奏で一番私がこだわったのはヴィブラートの「深さ」「速さ」「開始と終わりのタイミング」です。
ヴィブラートの「深さ」はピッチの変化量=波の幅です。この深さを変えることで倍音の含まれ方も変わりますが何よりも「揺らぎ」を感じる大きさが変わります。
次に「速さ」ですが、こちらは波の細かさ、例えるなら1秒間に何回の往復があったかと言う意味になります。速ければ良い…と思い込んでいる人も多いのですが必ずしもそうとは言えないと思います。速すぎるヴィブラートは「波・揺らぎ」ではなく「震え」に感じます。「ヴィブラートは振動と言う意味だから」と勘違いする人もいますが、すべての音が空気の振動ですからヴィブラートを「振動」と直訳するのは間違っています。ちりめんの布のように「しわしわ」に感じるヴィブラートが美しい…と言うよりも「目立つ」ことは事実です。オーケストラと一緒に演奏し独奏者・独奏ヴァイオリンとして「目立つ」事を優先すれば、高速ヴィブラートで演奏したくなる気持ちもわかります。ただ個人的な好みですが「震え」のように聞こえる音を聴いて心が穏やかになるとは思えません。その昔にヤッシャ・ハイフェッツが当時としては物凄い速さのヴィブラートで演奏し、16分音符にもすべてヴィブラートをかけて演奏している!と言われていましたが、実際に色々な演奏を聴くとそうでもないことがわかります。
ノンヴィブラートとヴィブラートの対比。そして「余韻・響き」を感じさせる時のヴィブラートと「熱量・アクセント」を表現するヴィブラートと。音楽を表現する時の大切な要素だと思います。 一つの音、一つのフレーズ、1曲の中での色=味の変化こそが人間の安らぎに繋がるのではないかと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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