《演奏解説シリーズ》ノクターン

ガマの油(自己分析)

新カテゴリー《ガマの油》第2弾。
「夜盲症がノクターン=夜想曲ってさぁ」(笑)
なんのこと?と言う方のために。私=野村謙介は生まれつき「網膜色素変性症」と言う眼の難病を持っています。進行性の病気で未だに治療法が無く「難病指定」されています。ひとつの症状として「夜盲症」昔風に言えば「鳥目」健常者なら普通に見える夜の風景、星空などの弱い光を感じることが出来ない病気です。
 子供の頃から「暗順応」つまり暗い場所で目が慣れる状態になる検査をしても「反応なし」と言うのが私の両目です。一人で夜道を歩く時に道路は見えませんし、自分の手、足を見ることも出来ません。明るい街灯があると街灯の光だけは見えますが、その下の道路は見えません。強力な懐中電灯で足元を照らしながら、歩きなれた道なら歩くことが出来ました。
 そんな私が「夜」と言う言葉で連想するのは「無理」(笑)とか「嫌い」と言ったネガティブな気持ちです。オシャレな間接照明の薄暗いお店での食事やお酒…ありえません。そもそも店内に入れませんから(笑)

 ノクターンと言うタイトルの付いた曲はたくさんあります。
多くの作曲家が様々な楽器、編成で演奏する「ノクターン」を書き残しています。
音楽に付けられたタイトルが「絶対」ではありません。作曲者自身ではなく没後に名前の付けられた曲も多くあります。音楽の形式=例えばソナタなどのような「タイトル」もあれば「練習曲」「即興曲」「幻想曲」など多くの「タイトル」があります。「交響曲第〇△番」と言ったシンプルなタイトルもあります。
 ノクターン「だから、こう演奏しなければいけない」と言う定義はありません。そもそも作曲者の頭の中で「ノクターン」のイメージがあったかも知れません。「夜想曲」だからゆったりした眠りを誘う音楽…とも限りませんね。夜になると昼間より活動的になるタイプの人も大勢いますから(笑)
 仮に「静かな夜」で「心が穏やか」で「幸福感に満たされている」としたら?
私なら寝ますが。それでは「子守歌」ですね。
 「物思いにふける」「切ない感情」「思い出が浮かぶ」そんなイメージが夜想曲に似合うかもしれませんね。もちろん決まったものではありません。

 1曲目のシベリウスの作曲したノクターン。
短い前奏の後ヴァイオリンで始まるテーマはこの後にも再現されます。
短調の曲で短三和音=マイナーコードの部分が非常に多いことで、悲しみや切なさが強く感じられます。
 2曲目のアザラシヴィリのノクターン。シベリウスとは対照的に長三和音=メジャーコードが多用され、旋律は穏やかで安らぎを感じ、アルペジオと長い音階で音楽の高揚感を感じます。
 ショパンのノクターン。言うまでもなくピアノで演奏するのがオリジナルです。
ピアノ曲の旋律部分をヴァイオリンやフルートなどで演奏するアレンジの場合、ピアノが単純に「旋律の引き算」だけになる場合もあり、アンサンブルとして「つまらないアレンジになりがちです。この曲も短調で暗く聴く人の内面、悲しい記憶を思い起こさせます。

 ノクターンに限ったことではありませんが、旋律を演奏するヴァイオリン・ヴィオラの楽譜だけで音楽の全体像を読み取ることは不可能です。
ピアノが副旋律を演奏すれば当然「和音」が生まれます。
ピアノが和音やアルペジオを演奏する場合も、音域や含まれる音の配置、さらにリズムのすべてがヴァイオリンと絡み合い、溶け合い、一つの音楽になります。
 同じ旋律をヴァイオリンで演奏する場合でもピアノのアレンジによって音色、音量が変わります。
長調の曲で用いられる短三和音、逆に短調の曲で使われる長三和音など、作曲家の「こだわり」を感じ取ることが必要です。
 極端な例えで言うと、幼稚園や保育園で子供が「ちょうちょう」の歌を歌っている時、先生がすべて「ドミソ」だけをピアノで弾き続けたら?かなり前衛的な音楽になります(笑)「音が濁るのは一瞬だから我慢して」いやいや(笑)
どんな料理にもマヨネーズをかけて食べる人「マヨラー」にとって、他の調味料や味つけよりも「マヨネーズが好き」なのだと思います。好みなのですが「ちょうちょう」の歌の後半「レレレレ レミファ~」の旋律に「ドミソ」で同時に演奏する強引さ?無神経さ?はさすがに子供には好ましくない気がします。

 旋律は音楽の一つの要素です。時には「主役」にもなりますが基本は一緒に演奏する「他の音」との関係性を理解することが何よりも大切です。
和声の変化、音域、リズムの組み合わせなどを理解した上で「感じ取る」ことは一朝一夕に出来ることではありません。様々な曲を演奏する経験と、理論を学ぶことを積み重ねて初めて自分なりの演奏が出来るものです。
 すべての曲に個性があります。1曲が始まって終わった後の「余韻」までを聴く人が堪能できるように演奏することを心掛けたいと思っています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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