映像はサン・サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」
今回のテーマは演奏する曲が「難しい」と感じる場合と「簡単」とまで言えなくても「難しくはない」と感じる「違い」について考える内容です。
自分が思ったように弾けない「と思う曲」をスラスラと演奏している人を見ると「すっごーい」と感動しますよね?実際に楽譜を手に入れて演奏に挑戦して「むりっ!」(笑)と諦めた経験はありませんか?
演奏を聴いただけで「難易度」を判断するためには実際にその曲を演奏できるまで練習した人だけが判断できるものだと思います。
他人と同じ演奏をする意味ではなく「楽譜」を「音楽」にする練習に時間をかけることで自分の弾きたいように演奏できるまで諦めなければ「いつか」演奏できるはずです。
自分の演奏技術で「難しい」と感じるのは技術足りない場合と「思い込み」をしている場合があります。
演奏が「難しい」と言われている曲の何が?どのように?難しいのか?感じ方は人によって異なります。楽器の構造的な問題と演奏者の手の大きさ・指の長さによっても難易度は変わります。構造的な事で言えば、ヴァイオリンの弦を3本同時に「長く伸ばす」ことは出来なくて当然です。また、4本の弦の両端=E線とG線をスラーで演奏し続けることも物理的に無理があります。作曲者がどんな意図でその楽譜を書き、どう演奏して欲しかったのかは本人に尋ねる以外ありません。バッハの「シャコンヌ」冒頭部分などもその一例です。
当然「演奏するテンポ=速さ」でも難易度が変わるケースがあります。演奏するテンポを決めるのは最終的に演奏者自身です。作曲者がメトロノーム記号でテンポを書き残している場合であっても、演奏者が常にメトロノームの速さで演奏し続けることは現実的に不可能です。
ゆっくり演奏すれば難易度が下がる曲もあれば、逆に遅くしたために弓が足りない・息が足りない・音が消えてしまうなどの問題が発生するケースもあります。
演奏を聴く側の立場で考えれば、好きな曲を好きなテンポ、好きな音色と音量で演奏してもらう事が「最高の演奏」になります・。
好みは人それぞれ違いますから、どうしても自分の好きな演奏だけを聴きたいのであれば録音された音楽を一人で聴くか、自分で演奏するしか方法はありません。
アマチュア演奏家が「難しいと感じる曲」を演奏するのはどんな時でしょうか?
演奏するとしたら、どうすれば少しで楽に演奏できるでしょうか?
プロは演奏曲を指定された場合「弾けません」と答えることは問題があります。他の人に演奏の仕事を奪われるリスクもあります。依頼する側の信頼を失う場合もあり得ます。
その点アマチュアは「演奏できる範囲」で演奏すれば誰も困りません。本人がいくら頑張って挑戦しても聴く人が満足する演奏技術に達しない場合もありますが、だからと言って怒る人もいないでしょう。
趣味で難しい曲に挑戦する理由は二つ考えられます。
1. 純粋に弾いていみたい気持ちがある
2.自分の演奏技術を向上させたい
どちらも素敵な事だと思います。誰にも止める権利はありません。
例え指導する先生だとしても、生徒が「弾いてみたい」と考えているなら応援するのが正しい姿だと私は思っています。「まだ無理」とか「弾けるようになってから」そんな答えの方が無茶苦茶だと思います。その生徒さんがいつになったら弾けるのでしょうか?そもそも生徒が弾けるようにする指導の「方法」が分からないから逃避しているように感じます。
難しいと感じる曲を演奏する方法です。
1. なにが難しいのか=自分に足りない技術を見つける
2. 足りない技術を身に付ける=時間のかかる練習をしながら、今できる範囲に難易度を下げて演奏する
3.演奏できる「完成度」を優先するより「楽しみ」を優先する
簡単に言えば「今出来ることで楽しむ」と言うことです。
完璧主義者には許せない(笑)でしょうけれど、音楽を完璧に演奏することは人間には不可能だという前提があります。他人が「完璧」と感じても本人が「失敗した」と思っている事がほとんどです。自分の演奏が「完璧だ」と思えるのはとても幸せな人です。他人の評価は一切無視すれば「自己評価100点満点!」もありです。それは極端な例ですが、多くの人は自分の演奏が限りなく「0点」に近く感じるものです。だからと言って「好きだけど難しい曲」から逃げていても楽しみは生まれません。
私はメリーオーケストラで初心者の子供たちが合奏に参加できるように、子供用のパート譜をアレンジして作ります。子供に限らず大人でも大いに利用可能です(笑)
楽譜通りに指揮者=私の求めるテンポで演奏できる人は楽譜の通りに演奏します。難しければ「多少」ごまかしてでも演奏します。ごまかさないで演奏するプロの演奏家も一緒に演奏しているので客席で聴いていると、子供も含め全員が同じ楽譜を演奏しているように聴こえます(笑)参加した=演奏した本人が満足できることが何よりも大切だと思っています。
最後に「簡単な曲なんて存在しない」ことを書き添えます。
一般に「楽譜の音符が少ない」「テンポがゆっくり」「臨時記号が少ない」「リズムがシンプル」だと「簡単な曲」と言われがちです。
私の持論ですが「それ、大嘘」だと思います。
2026年6月に演奏した「SAKUJRA」は友人の作曲家、久木山直氏が作曲したヴァイオリンとピアノのための小品です。私たちにとって「簡単」どころか「超絶難しい曲」でした。楽譜はシンプルです。だからと言って「中身」が簡単なわけではありません。ピアノの和声進行、ヴァイオリンの旋律に含まれるラインとこだわりを感じる「音の配置」などなど。しかも作曲者を前にして演奏する緊張感。
これが「簡単」だとしたら難しい曲なんてありません。
逆説的な言い方になりますが、どんなに楽譜が難しい曲でもこだわりを捨てれば簡単な曲になり得ます。「超絶技巧」が難しい、ゆっくりした音楽は「簡単」
それが大いなる勘違いだと言う事を伝えたくてこのブログを書きました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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