メリーミュージックブログ

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音から指使いを探る

音から指使いを探る

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 映像はイツァーク・パールマンが演奏するパラディスのシシリエンヌ。
初めてこの演奏を聴いてどうしても演奏したくなり楽譜を入手。楽譜に記されていた指使いやボウイングもありましたが、どうしてもパールマンの演奏を「真似」したかったので、ヘッドホンで演奏を何十回も聴きながら楽譜に指使いやスラーを書き込みました。
 今回のテーマ「音から探る」と言う内容はただ単に指使いを「真似する」目的ではなく自分の演奏の「土台」になる演奏を作るために他人の演奏を聴くことの重要性を考えるものです。

レッスンで「他の演奏を真似しない」事を先生から言われた経験のある人は多いのではないでしょうか?私自身は師匠から言われていませんが、学生時代に先輩たちから言われた記憶があります。自分より上手だと思う人の演奏を真似できるなら苦労しないわけですが(笑)
「芸は盗め」という言葉があります。伝統芸能で「習う」「教わる」と言う概念は通用しない。先人の芸を限界まで観察して自分で試すことの繰り返しで身に付けるのが本質だと言う考え方だと思います。
演奏の世界でも同じことは言えないでしょうか?師匠からの言葉や文字から得た知識は確かに重要です。自分が気付いていない課題を指摘してくれるのも師匠があってのことです。しかし言葉で習ったことは「言葉」として記憶される情報です。自分の耳と目で得た感覚は言葉とは違う記憶になります。そして何よりも自分の力で「技を盗む」努力が自分の演奏に生きてきます。音を聴いて「どうやって?この音を出しているんだろう?」と何度も聴いて観察・想像することは自分でしか出来ません。誰かに教えてもらうより遥かに時間も労力も必要です。以前のブログで登場したジャズヴァイオリニスト「ステファン・グラッペリ」は独学でヴァイオリンの演奏をスタートしプロになったヴァイオリニストです。もしかすると誰かにアドヴァイスを受けた事もあるかも知れませんが、もしそれが重要な事だったとしたら自身が経歴として書くはずですね。独学ではうまくならないと言うのが間違った定説だと証明しています。

 インターネットの普及で演奏技術に関する情報や演奏している動画を気軽にみられる時代です。「チュートリアル動画」があふれています。素晴らしいヴァイオリニストの演奏動画も無料で視聴できる上に再生速度をゆっくりにしてもピッチは維持されています。さらに画面の一部を拡大することも簡単に出来ます。本当に便利な時代です。
 一方で安直に情報を得られるために忘れられていることも多いのが現実です。「演奏を聴いて学ぶ努力」はその一つです。違う言い方をすれば考える時間が減っていると言えます。マジックの「タネ」をすぐに知ることができるとしたら?きっと楽しみが減りますよね?
自分で考えて自分の演奏を作る時間が「もったいない」でしょうか?
誰かに技術を教えてもらってその人の真似をする人と、自分で考えて迷いながら自分独自の演奏をする人がいます。効率を考えれば「教えてもらう」方が圧倒的に短期間で仕上がります。しかし迷いながら手探りで音楽を作る作業や、誰かの演奏を何度も聴いて観察する時間は決して無駄だとは思いません。
 私の持論ですが演奏家の評価はその演奏家の「最後の演奏」に集約されていると考えています。世界的に高い評価を受けた「今は亡き」演奏者たちすべてに若い頃の演奏があります。公開されていない演奏が殆どですが絶対にあります。当たり前ですが(笑)年齢と共に演奏が成熟し高齢になると「味わい」が感じられます。「枯れた演奏」と評されることもあります。人によっては最晩年は身体の自由が利かなくなる、聴覚も反応が下がった結果として若い時より演奏技術が下がることもあります。それも「歴史」の一つです。その演奏者だけが出来る演奏は「技術だけ」で語るべきものではありません。
 若い人の演奏は「成長の過程」での演奏です。どんなに演奏技術が高くても、10年20年30年と言う年月を経て「人として」経験を重ねる中で変化していく演奏が残せるか?独自の演奏が出来るようになったか?こそが演奏家の評価だと思います。

 レトルト食品のように手軽に短時間で仕上がる演奏が必要な場合もあるかも知れません。自分で味を確かめながら納得のいく味の料理を仕上げるように「音楽」を仕上げる技術は習えるものではありません。まさに自分だけの感覚で1回の演奏に到達するまでのプロセスを大切にしたいと思います。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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