動画はリサイタルのリハーサル風景。一種の「練習」でもありますが演奏会直前のリハーサルは演奏する場所=ヴァイオリンの立ち位置の確認や、会場の響きと舞台上での聴こえ方の確認と言う意味もあり「通常の練習」とはだいぶ目的が違います。
今回のテーマはまた哲学っぽい(笑)話ですが、私も含めて「演奏者」プロでもアマチュアでも「うまくなりたい」から練習する事に違いはないと思うのですが「なんで?なんのために?」うまくなりたいと思うのかと言う素朴な疑問を考えるものです。お付き合いください。
「楽器を弾くのが好き」「歌う事が好き」と言う理由だけで演奏や歌を楽しむ人もたくさんいます。素敵な事です。理想的な姿だと思います。練習してうまくなることよりも「好き」「楽しい」事を大事にしている方に「練習したら?」と言うのは「愚問」だと思います。
じょうずに弾けなくても本人が楽しいと感じることで誰か困るでしょうか?まぁ家族なら「うるさいなぁ」ぐらいは言うかもしれませんが、それさえ乗り越えれば問題なしです。
練習してもっと「うまくなりたい」と思うのに似ているのがスポーツで「もっと強くなりたい」と感じる気持ちかも知れません。競技種目の場合に勝敗・順位が明確にあります。ボクシングで「プロになりたい」から「世界チャンピオンになりたい」果ては「4団体統一タイトルを取りたい」まで。そしてそのタイトルを何回も防衛する「強さ」に憧れる人もいます。
音楽の世界でも「プロになりたい」と言う夢を叶えるために小さい頃から遊びも我慢してテレビもゲームも漫画も我慢=親に禁止されるケースも…ひたすら練習して音楽学校に進み、留学して…と言う人もいます。その人たちの努力は「お金と名誉」として形になります。
もちろん「お金の為じゃない!」と言う声もありますが「プロの演奏家」と言う言葉には「職業音楽家」と言う意味が含まれます。職業である以上「対価」で生計を立てることも当然のことです。極論すれば「うまくなってお金が稼げるようになりたい」と言う「夢」でもあります。
プロとして演奏する人はごく一部の人です。これもスポーツと同じです。テニスやスキー、サッカー、野球、スケートなどで「アマチュア・プロ」の違いで、ルールが違う場合もあります。ボクシングなら頭部を保護する「ヘッドギア」の装着義務があったり、フィギアスケートなら「バク転の禁止」など。競技スポーツの場合にはアマチュアでも「序列・順位」が明確に付けられます。
アマチュア演奏家の場合に「序列」はスポーツと比べて明らかに合理性・客観性がありません。「日本〇〇連盟」なる団体が主催するコンクールで「金賞」を目指して日曜も祝日も犠牲にして練習する姿に恐怖しか感じません。「青少年の思い出」そんな薄っぺらい綺麗な言葉で子供の貴重な時間を奪う権利は誰にもないはずです。「ダメ金」と言われる金賞があります。「金賞だけど次のステップ=予選に進めたい金賞」がダメ金。そもそも演奏に「ダメ」が付く時点で音楽を根本的に理解していないコンクールだと感じます。
さて通常の「健全なアマチュア演奏家」にとって目標は何でしょうか?
うまくなったと言う自覚を持てるようになる人は残念ながらほとんどいないものです。
プロでもアマチュアでも自分の演奏に対する評価が一番厳しいことは以前のブログでも書いています。「うまくなりたい」と思いながら「うまくならない」日々が延々と続けば?
「何のために練習しているのだろう?」と言う疑問に突き当たるのが自然です。無理もありません。プロのようにお金の為でもない。コンクールに出たいとも思わない。人に聴いてもらうなんてとんでもない!(笑)と考えるアマチュア演奏家が99%以上では?
結局、うまくなりたいと思う気持ちより「好きだから」だと思うのです。
練習すれば少しでも出来なかったことが出来るようになった「気がする」だけでも楽しいものです。それで十分だと思います。実際に練習すればうまくなります。内容=考えながら練習する事の方が時間より大切なことは多くのソリストたちが言葉を残しています。
アマチュアの演奏家を「うまい・へた」で他人と比較する事は無意味です。そもそも基準がないのですから。自分の中=自分の演奏を聴いた自分の評価がすべてで良いのです。レッスンで信頼できる先生からの指摘やアドヴァイスは有意義です。自分の気付かない課題やコツを教えてもらえれば「出来るようになる」ことが増えるのですから楽しいに違いありません。
うまくなるよりも好きになる努力。簡単そうで一番難しいことです。
社会人が自分の職業に誇りと喜び、充実感を感じることが難しいことに似ています。働く目的が「生活のため」と割り切れているから「耐えられる」人が多いのは事実です。
趣味の演奏にまで義務感やノルマを感じたくはないのでは?だからと言って「すぐやめる」のも自分自身がちょっと情けない気がするのは私だけでしょうか?好きで始めた趣味をいつまでも好きでいるための秘訣があるとしたら「練習をやめない」「小さな上達を見つける」ことだと思います。それしかないかも知れません。
子供は親や大人=先生の言葉を信じて練習を続けます。従順な子供ほど上達が早いので大人の期待はさらに高くなり…と言う循環もあれば「子供に才能がない」と大人が子供の可能性を一つ奪い取るケースもあります。
大人は自分の意志で趣味を楽しみます。限られた時間、体力、予算の中で好きな事を楽しむ中に「演奏」を加えて頂ければと願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介
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