映像は五嶋みどりさんのドキュメンタリー番組です。
現在54歳?かな?「天才少女ヴァイオリニスト」と評価を受け世界各地で演奏活動、教育活動に取り組み彼女の生き方に憧れを感じ心から尊敬するヴァイオリニストの一人です。
この番組の中で弓の毛を2~3週間に一度張り替えてもらっている」事を話しているシーンがありました。いつもそうなのか、現在は?など詳しいことは分かりません。
お寺や学校の音楽室でも「真剣に」演奏する彼女はクラシックヴァイオリニストとして、ましてや世界中から演奏のオファーが来るソリストとして「信じられない悪条件」でも演奏しています。
今回のテーマは楽器を演奏する際に、どこまで整った=理想的な環境で演奏できるか?を理想と現実の両面から考えるものです。
「演奏する場所」「楽器・弓のメンテナンスと準備」「共演する人との練習時間」など色々な「環境」があります。演奏者が決められない環境もあれば「お金に糸目を付けなければ」叶えられる環境もあります。どの環境も演奏する人の価値観=考え方で本人の満足度も変わります。五嶋みどりさんのように窓もなく雨の吹込みそうな「お寺」で無伴奏の曲を演奏することを「考えられない!絶対に嫌!」と言う人の方が多いはずです。まさに「湿度100%」の環境でも五嶋みどりさんはいつも通りに演奏しています。聴く人に「音」より「五嶋みどりという人間」が感じられるのは彼女の「人間性」だと思います。
楽器や弓、弦などを「理想の状態」で常に維持し演奏するためには莫大な費用が必要になります。ただ「演奏者の価値観」によってこれも大きな違いがあります。「ストラディバリウス以外は弾かない」と言うソリストもいるでしょう。「弓は〇〇△以外は使い物にならない」と言う価値観の人もいます。弦を演奏会の度にすべて張り替えないと気が済まない人もいます。弓の毛の張替えもその一つです。
すべてが「演奏者の価値観」で自分にとって納得のできる環境とそうでない=我慢して演奏する・演奏しないことを選ぶ場合があります。
小さなことですがコンサート会場で演奏中に聴衆の「咳」で演奏を中断したソリストもいました。これも「価値観」と言えます。
「妥協」「我慢」と言うネガティブな思考は避けたいものです。
同じ環境でも「これで十分」「これ以上は望まない」と本心から思える思考でありたいと思っています。
日常生活を送るのにも同じことが言えます。今の環境を「不幸」「不運」「最悪」と考えるか?「生きていてラッキー」「こんな時もある」と受け入れて生きられるか?同じ環境でも「思考」によって幸福にも不幸にもなるのが環境です。「犠牲」とか「我慢」と言う言葉は実はとても贅沢な環境だけを望んでいる時の発想です。
演奏する機会があることは演奏家にとって最大の幸せです。演奏する機会がなければ「頭の中で演奏会」を開くしかありません。
「恵まれた環境」に長く接していると少しでも環境が悪化しただけでも「最悪だ!」と思いがちです。演奏家にとって一番恐れるべき「落とし穴」だと思っています。自分にとって理想の環境で演奏できるとしたら、それは間違いなく最高の幸せかも知れません。しかし「結果」つまり演奏が自分の理想=思っていた演奏が出来るか?出来ないか?は環境とは別の問題です。どんなに理想の環境で演奏しても自分が納得できる演奏が出来るとは限りません。むしろ「環境が悪かったから」と現実から逃避する事になります。もっと良い楽器を!もっと良いホールで!もっと!もっと…まさに「麻薬」のようなものだと思います。
理想の環境には遠く及ばない環境でも「演奏できる」だけでも幸福感を感じられっる演奏者は、演奏だけに集中できます。楽器のせい、弓のせい、弦の…弓の毛の…ホールが…など自分の演奏とは無関係な「理想の環境」より現状での精一杯の演奏が出来れば納得できます。
演奏者にとって理想の環境を常に維持できる生活は「夢」とも言えます。それは音楽を聴く人にも言えることです。毎日のように好きなコンサートに行って最高の席で聴き「タクシー」で会場と自宅を往復し帰りには好きなレストランで食事…それが夢の環境かも知れません。この不景気で「S席」を諦めたり我慢してYouTubeを見て「行ったつもり」を味わう人も多いはずです。
昔ある生徒さんに「演奏家って夢を見させてくれる職業ですね」と言われたことがあります。なるほど…と思いました。演奏家自信は現実の世界で日々の生活に苦しんでいたとしても、舞台に立って音楽を演奏する時、客席にいる聴衆にとって「夢の時間」であることは事実です。その意味で演奏家が「生活、くるしー!」なんて聴きたくない気持ちもわかります(笑)私から見て「夢のような環境」で演奏をしている知人や友人もいますが本人たちが幸せなのか?までは知りません。「隣の芝生は…」なのかも知れません。
自分が今与えられた環境の中で「あるがまま」を受け入れて演奏し、いつか!もう少し!と言う夢を持って生きていたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介
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