暗譜する=演奏を記憶する技術

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 映像は明日(2023/10/7)と明後日、長野県木曽町で演奏する予定曲の「一部分」です。今回は二日間で17曲を演奏する予定です。視力の低下と視野の狭窄(きょうさく=視野が消えていくこと)が進行した私には、楽譜を見ながら演奏することが困難…と言うより、無理な状態になってから数年が経ちます。当然、人前で演奏するためには「暗譜」することが必須になりますが、なぜかそれが当たり前になってから、以前の暗譜となにかが違う気がしています。
 暗譜苦手!という生徒さんがたくさんおられます。
楽譜を見ないで演奏することを「暗譜」とするなら、楽譜を見ながら問題なく演奏できるなら、暗譜しなくても(笑)と私も思うようになりました。
 私が幼い頃「暗譜して来なさい」と言われた記憶も、かすかにあります。きっと、練習が足りていなかったから先生が「もっと練習しなさい」という意味も込めて仰った?と反省しています。

 楽譜を覚えることと、演奏を覚えることの違いについて考えます。
 楽譜は「記号」です。文字も記号ですから、文字を覚えることと楽譜を覚えることは、ある意味で同じです。
 文字を覚える…例えば「いえ(家)」という文字と言葉の意味を覚える時期があります。その前の段階で「わんわん」が犬を表し「にゃんにゃん」が猫、「ぶーぶー」が車と言った具合に子供は言葉を覚えます。文字は?まだ読めない時期でも、言葉と「意味」を覚えます。
「音(言葉)と名称・行為」などを記憶する力と、記号を認識する力はどちらも「記憶」ですが、この二つは実は関連している部分と「独立」している部分があります。
 一言で言えば記号(文字・楽譜)を理解するためには、その記号=単語が表す「物・音」を記憶していることが条件になるという事です。
 例えば難しい英語の単語を覚えようとするとき「スペル」だけ覚えることもできます。その場合、単語の「発音」と「意味」は無関係に記憶することになります。
 文字の並び順=スペルを覚えることと、その「発音」「意味」を覚えることは「別」なのです。しかし、覚えた単語には通常「発音」と「意味」が紐づいていますよね?
 スペルだけ覚えるのか?発音も覚えるのか?意味や使い方も覚えるのか?で記憶する「容量」は全く違います。
 楽譜に例えるなら、音符・休符の種類と五線上の音の高さ(音名)だけを「覚える」事も、ある意味で「暗譜した」と言えます。実際に音に出来なくても「覚えた」事に違いはありません。
 その記憶した情報に「音の高さ」を付けて覚えるのが「言葉=声」と同じことになります。ただし「意味」までは覚えていなくても「音・言葉」だけは覚えたことになります。ちなみに「ダウン・アップ」「指番号」「弦」などの要素は、「音・言葉」とは違うものです。
言葉で言うなら「アクセント」が近いかも🅂レません。
「かき」が「牡蠣」なのか「柿」なのか「下記」なのか「夏季」なのか?判別する「語彙」が増えるのも記憶の一つです。音楽でも同じようなことが言えます。
 意味が分かった後に「文章」「物語」「小説」などを呼んで、人物や風景を「想像する」ことも「経験=記憶」があるからです。楽譜を音にして「感情」が起こるのはこの状態だと思います。
 さらに文字を朗読したり「台詞」として演技を伴ったりする場合には、聴く人・見る人に「人物像・ストーリー」を伝える技術が必要になります。その「話し方」は文字(原稿や台本)には書いてありません。自分で考えて時には「記憶」する必要があります。
 音楽の場合には?楽譜を音にして、音から何かを感じ、それを表現する「演奏方法」を記憶することになります。

 暗譜することを「楽譜を覚える」と狭い定義で考えるより「表現の方法を覚える」と考えるようになりました。
落語でも同じですが、たた「文章を覚えてしゃべる」だけでは聴いていて笑う人はいません。噺=はなしの中の「どこで・どのように」声で表すか?が落語です。音楽もまったく同じだと思います。音の羅列を覚えるのではなく、時系列=一音ずつの連続を「ストーリー」として、どの音を・どう弾きたいのか?を覚えることが「暗譜」だと考えると、意外に暗譜は「面白い」と感じるようになります。
ぜひ
お試しください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村健末K

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