掌で紙風船を包み込む

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 今日のレッスンで「両手の親指が疲れて痛い」と言うお話を大人の生徒さんから伺いました。必要以上に指に力が入りすぎているのが原因だと思われます。
弓を持つ右手、弦を押さえる左手共に、親指がその他の4本の指と「反作用=逆方向への力」が必要です。ただ、弓にしてもネック=棹にしても、固い木で出来ていますから、必要以上の力が入ってしまいがちです。
 右手も左手も、①柔らかさと、②持続的な力と③瞬発的な力が必要です。

①掌と指の柔らかさ
日常生活の中で、何かを強く握ることは思い起こせます。
たとえば、ペットボトルの蓋を開ける時や、固い瓶詰めの蓋を開けようとするとき、タオルやぞうきんを強く絞る時などです。
 一方、意識的に弱く優しく、何かを壊さないように「包み込むように」持つことのっ方が少ない気がします。
シャボン玉を手でつかむことは、なかなかできません。柔らかすぎます。
軟式テニスのボールだと、強く握っても割れないイメージがあります。
ちょうど良いイメージの「柔らかさ=弱さ」のものは…と考えたら、
紙風船が思い浮かびました。手のひらで包み込めるくらいの小さな小さな紙風船。それを、そっと手で包み込む「イメージ」を両手の指に感じながら演奏してみると、生徒さんの音色が驚くほど、クリアでソフトになりました。

②持続的な力
指の力は「曲げる力」と「伸ばす力」の両方があります。
通常の生活では、前者の力ばかりを使います。指を開く力と握る力の「バランス」を考えてゆっくり動かすトレーニングが効果的です。
 必要なのは握力ではなく、「保持する力」です。これが②の力です。

③瞬発的な力
これも「内側への動き」「外側への動き」があります。
運動の前後に「脱力」する練習が必要です。言葉で能わすと「ぴくっ」と動くイメージです。その小さくて速い運動を、右手左手の1本ずつの指で練習します。
難しいのは、力を入れた後の、脱力までの時間を短くすることです。
指の動きを」軽く」することは、脱力した状態をベースにすることが必要不可欠です。

 柔らかいビブラート、八幡会ボウイング、素早く正確な左手指とポジションの移動、右手人差し指と親指の力のバランス、右手小指と親指での圧力の減衰。
それらすべては、抵抗のない状態で動かせることが大切です。
体幹=胴体で動きを支え、風になびく草木のように、しなやかで弾力のある動きのイメージで演奏したいと思っています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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