映像は去年2025年1月に演奏したサン・サーンス作曲「死の舞踏」
この曲を暗譜して弾きにくい部分(私にとって)を思ったテンポで弾くためにかなり長い時間が必要でした。
今回のテーマはヴァイオリン・ヴィオラの演奏で使う「筋肉」とその結果でもある「運動」について考えるものです。)
私は子供の頃に父や兄とキャッチボールして遊んでもらいました。
兄は文武両道。中学生の頃からテニスを本気で練習しながら勉強も出来る「スーパー兄ちゃん」でした。5学年離れた年齢だった事もあるのか?兄と私はお互いのテリトリーに決して近づきませんでした(笑)兄は未だに音楽は苦手だと言い、私はスポーツと勉強が「嫌い」と公言しています。あ。私が負けてますね…
ボールを投げる、グローブでボールを取る。たかがキャッチボールですが楽器の演奏に役立つヒントがたくさんあります。子供でしたから少しでも「速いボールを投げる」ことに夢中になっていました。相手のグローブをめがけてコントロールして投げる。
思ったようには出来ないものでした。
話をヴァイオリンに戻します。弓を「持つ」「動かす」時の力について整理します。
1.指先から腕の付け根までの「どの筋肉」を使うか?
2.その筋肉に「どの位の強さ」の力を入れるのか?
3.その力を「いつ?」いれて「いつ?」脱力するのか?
特に3.の「力を入れる」「力を抜く」それぞれにかかる時間が問題です。
レッスンをしていると多くの生徒さんが必要以上の力を、常に入れ続けていることに気付きます。まるで右腕を伸ばして10キロのダンベルを持ちながら腕を曲げ伸ばししているように見えます。力を抜くことの難しさです。完全に脱力したら?60グラムの弓でも持てません。重たい右腕を持ち上げることは不可能です。腕の曲げ伸ばしもできません。
必要「最低限」の力を見極める練習が不可欠です。ミニマムを知ることです。
弓の毛を弦に乗せてダウン・アップ出来る位置に右腕を保持して「止まる」ことからスタートです。この段階でも腕を持ち上げる力の「最低限」を探します。首や背中の筋肉に無意識に力が入っているはずです。その無駄な力を「捨てる」ことから始めます。
その状態から弓を少しだけ=1センチほどで十分です…ダウン・アップのどちらかの方向に動かして、すぐに停止してまた腕を保持します。
右手の指・手のひら・手首に無駄な力が入っているかも知れません。動かして止まる度に確認します。毎回「リセット」するイメージです。
出てくる「音」を文字で表すなら「た」や「か」をイメージすることを進めます。
「ほ」とか「さ」は音が出る前に瞬間的な「無声音」が含まれています。また「が」や「だ」は圧力が強すぎる・動き出しの速度が遅すぎる時に発生する「ノイズ」が多すぎるからです。
「た」「か」は適度な「ノイズ」が「一瞬」入って初めて出せる音です。
発音だけでなく「止まる瞬間」に気を付けることも重要です。「たー」「かー」にならないことです。発音した瞬間の「音量」だけに集中します。「音が出たらすぐに止まる」練習です。
人間は防衛本能の表れで瞬間的に力を入れて身を守る行動が出来ます。
びっくりした時に体中に力が入った経験がありませんか?熱いやかんやお鍋に無意識に手が触れてしまった瞬間「あちっ!」と言うより速く手を動かしているはずですよね?
ただ逆に瞬間的に脱力する経験は思い浮かばないですよね。電車やバスで座席に座り寝落ちした経験はありますか?頭が後ろや前、横←隣の乗客の頭だったり(笑)に「がくっ」と曲がる瞬間。まさに脱力した瞬間ですが意識がありません。
弓を「止める」運動には「力」が必要です。もし完全に脱力していたら「慣性の法則」ですぐには弓・腕が止まることはあり得ません。弓の毛と弦の摩擦は弓の動きを止めるほど大きくありません。「なんとなく」腕を止めているケースが殆どです。とても難しいので、弓の動きを1センチにしたのです。これが5センチ10センチになると、弓の持ち方も右腕の伸び方も「動き出し」と変わってしまいます。「動いたらすぐに止まる」ことで動かす力のままで止まるイメージがつかめます。
止まった「後」動かし始める「前」に動かすための力を「捨てる」練習です。
一音ごとにリセットするのはそのためです。連続して弾きたくなりますが、必ず「リセット=脱力」する練習をすることをお勧めします。
今回は触れませんが左手も基本的な考え方・練習方法は同じです。
音楽を聴いて感じるエネルギーの増減と演奏する時のエネルギー=物理的な力を意識的に分離する練習が必要だと思います。簡単に言えばフォルティッシモは力を入れると言う考えを捨てることです。ピアニッシモで力を抜いていったら?弦を指で押さえられない・弓がコントロールできない状態になりますよね。音量や印象と「身体の使い方」は別のものです。
160キロの剛速球を投げる投手の動きは「楽そう」に見えます。むしろ見た目から力が入っている人の投げるボールは実際にはヘロヘロだったりします。
プロボクシングのボクサーがあれだけ長時間のラウンド動き続け、さらにトレーニングした相手=プロボクサーを一撃で気絶させるようなパンチが出せるのは?多分「力の瞬間的なオン・オフ」が出来るからだと思います。楽器の演奏でヴァイオリンを壊す必要もなく(笑)弓が折れるほどの力で演奏しても無駄です。パフォーマンス=見ている人へのアピールで「エネルギー全開!です!」が必要だと思うならご自由にどうぞ。
聴く人を「自然体」にするのが音楽です。わび・さびがあります。静・動があります。
演奏には重量挙げのようなパワーは不必要…いや「害悪」だと考えています。
小さな力の変化を短い時間で行うことで、大きな変化を感じられる音を出す。
難しいですが頑張りましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。
ヴヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介
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