映像は私が一番!暗譜=楽譜を見ないで演奏する…に苦労した曲です。
ヴィオラとピアノによる演奏です。
アルヴォ・ペルト作曲の「シュピーゲル イン シュピーゲル=鏡の中の鏡」は、お聴きの通り非常にゆったりした曲です。「こんな簡単そうな曲が覚えられないの?」と思われがちですが実際に試して見てくださいね(笑)
リズムの変化は1曲の中でほとんどありません。旋律は「順次進行=隣の音に上がる又は下がる」が段々に長くなり最後に「A=ラ」の音に落ち着きます。自分が今、どこにいるのか?わからなくなる!結局私の記憶力が足りないのかも(笑)
今回のテーマは少しSFっぽいイメージがあるかも知れませんが「未来を予測する」ことが演奏に不可欠だと言う内容です。遠い未来…1分とか1日、将来と言う意味ではなく自分がこれから演奏しようとする音=次の音を演奏するための時間です。当然、いま弾いている音が短い音なら次の音はすぐに演奏する必要がありますから、予測する時間も極めて短い時間にイメージしなければ間に合いませんね。間に合わないからと言って適当に=いい加減に演奏すれば無責任な音を演奏することになります。処理の速度を速くするトレーニングも大切です。
演奏に限らず日常生活でも無意識に次の行動を準備し、その結果を予測しています。極端な例えかも知れませんが「歩く」時もその一つです。
「足を交互に前に出す」足元に穴があいていたら?大きな段差があったら?
恐らく足元を見ることが出来れば足を下ろす場所の「安全」を確認しているはずです。これも予測です。歩く速度なら足元=次の一歩だけを予測すれば歩けますが自動車で高速道路を時速100㎞で運転している時には、はるか前方を見て危険がないか?予測しているはずです。
演奏で失敗しても怪我はしませんし交通事故にもなりません。
どんなに長い音を弾いていても常に次の瞬間を予測し続けることです。
音が伸びている状態でも常に身体の筋肉・関節のどこかを動かしているはずです。呼吸もしています。息を止めて演奏する瞬間もあります。ただ長い時間息を止めれば苦しくなるのは当たり前です。
ヴァイオリンやヴィオラの弓で考えれば長い音を伸ばす時、弓を遅く動かし圧力をコントロールしても、いずれ弓の終端に到着して音が切れます。つまり弓の終わる時間を予測して弓の速度を調整しているはずなのです。これも予測です。
次の瞬間を予測するトレーニングの一つに「視唱=ソルフェージュ」があります。初めて見る楽譜を練習せずに音(声)にする技術を身に付ける練習です。楽譜には音の高さ(音名や臨時記号を含む)とリズム(休符を含めた音の長さの組み合わせ)が書かれています。強弱や音色は視唱では必要とされません。いわゆる「譜読み」はこの段階を言います。
文字を読むことに置き換えるとよく分かります。初見で原稿を声に出す職業がアナウンサーです。臨時のニュースや放送中に地震があった場合などに、ディレクターから差し出される原稿を間違えずに読み上げる技術はアナウンサーに必須な技術です。
初見で文字を声にして読む=音読する場合、目で次の文字だけではなく次の文や次の行に書かれている文字を頭の中で考えています。つまり声に詩出している文字と目で見ている文字は異なっている事になります。声に出す速度=話す速さをゆっくりすれば目で追う文字も多くなります。逆に声にする速度を速くすれば目で追う文字を速く読まないと「読みながら話す」状態になってしまいます。
生徒さんの多くが先を読む技術が未熟であることを感じます。
楽譜を読む速度をあげるトレーニングは集中して行えば数カ月から数年で相当なレベルアップが可能です。視唱と聴音=書き取りの組み合わせでさらに効率的に読譜技術が高くなります。
楽譜を読むことが苦手な人や大人の生徒さん、視力が極端に低い(今の私のような)人には楽譜を覚える努力が必要です。覚えるから予測は不要か?答えは「いいえ」演奏する以上は常に先を予測します。楽譜を読む技術が身についている人…例えば音大生の場合に暗譜は「楽譜を覚える」事と勘違いしていたり意味もなく楽譜を置いて漫然と楽譜を見ながら演奏している人を見かけます。もちろん初見や初見に近い状態で演奏する時に楽譜がなければ演奏は出来ませんが、楽譜がないと演奏できない「理由」が言葉に出来ない人は演奏中に予測する意識・身体の動きを覚えようとする意識がかけている場合がほとんどです。
どんな楽器の演奏も「運動」を伴っています。無意識に出来る運動もあります。呼吸や健康な時の歩行が該当します。一方で意識を運動に集中しないと出来ない運動もあります。例えば「初めて鉄棒で逆上がり」をする時や「初めて補助輪を外して自転車に乗る時」、「初めて自動車を運転する時」など、身体のどこを?との位の力で?どう使って…と意識しないとうまくだきない段階があります。
ヴァイオリンを演奏する人が無意識に音を出した場合、出てくる音は「偶然に出た音」です。つまり結果だけなのです。経験を積むと意識しなくてもピッチ=音の高さを「ある程度」正確に演奏できるようになります。音色や音量も「なんとなく」なレベルの音は無意識に出せます。
自分の演奏した音が「自分の意識していた=予測していた音」だったのか?と言う観察は前提として「出したい音があった」と言う意味です。無意識に出した音の反省を繰り返しても、予測して出した音とは別次元のものです。
繰り返し予測=意識することで、身体が運動を記憶します。ただ運動の記憶は一時的なものです。繰り返すことと、時間を開けて練習することで脳に記憶されます。同じパッセージを続けて10回練習するより、1回ごとに予測と結果を記憶して数回練習して、違う練習をしてから復讐を繰り返す練習が「記憶を長続きさせる」練習になります。ぜひ、お試しください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト野村謙介
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