ヴァイオリンのペグ

このエントリーをはてなブックマークに追加

さてさて、今回のお話はヴァイオリンやビオラ、チェロの調弦(チューニング)をするための基本である「ペグの止め方、動かし方」についてです。
実はこの動画、弦楽器を管理する自治体の職員さんたちが、触ったことのないヴァイオリンの維持や管理をするための参考にと、撮影し編集したものです。
もちろん、初心者を含めヴァイオリンを演奏する人にとっても調弦は避けて通れない技術の「かなめ」です。調弦が自分でできなければ、正しい音を出すことは不可能に近いのですが、なかなか難しい。特に弦を張り替える時には、このペグを動かせなければできません。微調整のための「アジャスター」がテールピースに4本の弦すべてに付いている、初心者向けのヴァイオリンはあります。また多くのチェロにはすべての現にアジャスターがついています。それでも、大きな幅の調弦は、ペグを動かさなければできません。
Youtubeで「ヴァイオリンの調弦」と検索すると、たくさんの動画がありますが、残念ながらペグがなぜ?止まるのか、なぜ?止められないのかという、基本の話が見つからなかったので、今回作成しました。

そもそも、弦を張り替えるためには、弦の張り方を知らなければ無理です。
ペグにあいている小さな「穴」に弦のループやボールの付いていない側を差し込みます。あとてペグの向きが調弦しにくい向きで止まった場合に、突き抜ける弦の長さを変えることでペグの向きを変えることがあるので、ある程度長めに突き抜けさせておくことが理想です。
突き抜けさせたら次は、丸く円柱状(厳密には円錐です)のペグの「上側」に巻き付けていく方向でペグに弦を巻いていきます。この説明、むずかしい(笑)
ペグを回して弦を「張っていく」時の回転方向で言うと、
高い音であるE線とA線は「時計回りで張って(音が高くなって)いく」「反時計回りで緩んで(音が低くなって)いく」ことになります。
一方、低い音であるD線とG線は「時計回りで緩んで(音が低くなって)いく」「反時計回りで張って(音が高くなって)いく」ので、楽器に向かって左右で、弦を張る方向が「真逆」になります。
ペグを動かす前に、弦の巻き付き方を良く見れば間違えないで、張ったり緩めたりできると思います。

ペグの材質によって、湿度の変化で動きが大きく変わる素材もあります。
見分け方として、茶色や濃い茶色のペグは湿度を含みやすく、梅雨時などに重く動きにくくなり、乾燥すると止まりにくくなる特徴があります。
一方で黒檀(こくたん)の真っ黒いペグは、湿度に影響を受けにくく、本来はこの黒檀のペグとテールピースが一般的でした。ちなみに、指板はどんなヴァイオリンでも黒檀が使われています。頤当ても昔は黒檀でした。時代と共に見た目の美しさや、装飾の付けやすさなどで変化してきました。

弓で音を出しながら調弦できるようになったら、ぜひ!A線の音以外はチューナーを使わずに、A線とD線を「軽く・速く・長い」弓使いで「完全五度の響き」でD線のペグを動かして合わせるトレーニングをすることを勧めます。
D線を調弦したら、D線とG線を同時に弾いて、G線を完全五度の響きに調弦します。最後にA線とE線を同時に弾いて、E線のアジャスターでE線を合わせて完成。難しいですが、この調弦方法ができるようになるまで、ペグを左手で動かし、止められるようになるまで、力の入れ方を繰り返し練習してみましょう。

最後に、調弦を繰り返すと駒が指板側に傾く原因を。
弦を緩める時には、駒と弦の摩擦力は低く、駒は動きません。
弦を張る(高くする)ときに、駒と弦の摩擦が最も高くなるので、駒がペグ方向、つまり指板側に引っ張られることになります。
調弦の際に、あまり大きく変化させないで調弦できるようにすることで、駒の傾きを最小限に抑えることになります。
大きく下げ、大きく上げる調弦は他の弦の「張力」を変えてしまい、結果的にまた他の弦を調弦する、二度手間にもなります。少しの上げ下げでぴったりの音に調弦できるようになることも、楽器を大切に扱うことになります。

弦楽器は調弦を自分で行う楽器です。時間がかかっても、一人で調弦できるようになるまで練習してくださいね。
メリーミュージック 野村謙介

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です