ヴァイオリンの価値を考える

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 今回の テーマは以前にも取り上げたことのあるヴァイオリンの価値」について。
動画はストラディヴァリの作った楽器をテーマにした番組。面白いです。
さて、人それぞれに「価値観」が違うのが当たり前です。ヴァイオリンの良し悪し、あるいは「妥当な金額」についても、みんな違った考えを持っています。
 一方で時代によって決まる「物価」があります。例えば、ヴァイオリンを作るための材料を「物価」として考えた場合、木材・ニスなどを購入するための「材料費」があります。そこに製作者の技術と労力が対価として加わって、最終的に「販売価格」を買い手との交渉で決めます。これは、どんな者…食品であっても車であっても同じ原理です。当然、今現在もヴァイオリンを製作する人・企業があります。その楽器一つ一つに「最初の取引価格」があり、最終的に、いわゆる「エンドユーザー」が支払う金額が交渉によって決まります。
 これはストラディヴァリのヴァイオリンでも、大量生産のヴァイオリンでも理屈は同じです。ストラディヴァリウスの一番大きな特徴は「原価が不明」であり「当初の価格が不明」であり、製作されてからすでに300年以上の年月が経っても「現役」であることです。

 さて、ヴァイオリンを演奏する人にとって「欲しい楽器」と「自分で買える楽器」が違う事は、ごく当たり前にあります。アマチュアであってもプロであっても同じです。「自分が欲しい」と思う楽器が自分にとって最高の楽器なのか?と聞かれたら、答えは「最高の楽器ってなに?」と言う根本的な疑問にぶつかります。
 少なくとも、自分が手にして演奏し、それまで演奏したどの楽器よりも「自分が好き」と感じた楽器でしかありません。世界中のすべてのヴァイオリンを演奏して選ぶことは、誰にも不可能なことです(笑)「私にとって最高の楽器!」と言っても、実はまだ自分が演奏したことのない楽器の方が何百倍、何千倍も多いのです。
 ヴァイオリンの「性能」ってなんでしょう?
車なら「馬力」「加速性能」「運動性」「空力抵抗」などで性能比較ができます。
美術品と違いヴァイオリンを「楽器=音を出す道具」として純粋に考えた場合に、この「性能差」がどんなものか?考える必要があります。
 現在の科学で結論を導けば「性能に大きな違いがない」結論になります。多くの実験が世界中でおこなれた「結果」ですから、いくら「私はストラディヴァリが一番だ!」と豪語しても「科学的なデータ」は変えられません。つまり、ストラディヴァリのヴァイオリンが「特別な性能・特別な音を出せる」楽器ではないことは、事実なのです。
 「新作のヴァイオリンはダメだ!」と言うのも科学的には「嘘」になります。現実に実験で証明されています。「私はストラディヴァリのヴァイオリンを聞きわけられる」と言う人がいますが、自分が演奏した、複数の楽器を「言い当てられる」のはアマチュアでもできることですが、他人が演奏したヴァイオリンの音の中でストラディヴァリのヴァイオリンだけを判別できる人は、恐らく誰もいません。それが「科学」です。

 自分の好きな楽器に出会うことは、パートナーと出会う「運命」に近いものがあります。先述の通り、すべてのヴァイオリンを演奏して比べられないように、世界中の人と「お見合い」することは?無理ですから(笑)偶然に出会った「楽器」を自分のパートナーのように大切に思い、扱える人ならどんなヴァイオリンでも「愛せる」はずです。ヴァイオリンの価格に「絶対」はありません。材料の原価に金額の差があることは事実です。ただ、ひとりの職人が作ったから「高い」と決めるのも、間違っていると思います。多くの人間が手をかけた方が高いものって世の中にたくさんありますよね?
 自分の好みを大切にすることです。それしかありません!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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