ヴァイオリン初心者の苦悩

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 動画は、エドワード=エルガー作曲の「6つのとてもやさしい小品」です。
ヴァイオリンを習い始めた生徒さんが演奏できる曲は?
明らかにピアノのそれに比べて、曲が少ない!ほとんど無い!のが実状です。
いわゆる「教則本」は数種類あります。それもピアノと比べれば、極わずかです。なぜ?そんな事が何十年も続いているのでしょうか?
 友人の作曲家に、初心者ヴァイオリン奏者のための曲を作ってもらったこともあります。高名な作曲家の先生が作られた作品を、私の生徒に初演させてもらったこともあります。そんな経験も踏まえて、「曲が少ない理由」を考えてみます。

 ヴァイオリンを演奏したい!と思い立った時点で「何ができて、何ができないか?」を考えます。
①楽譜の「ルール」
 ・音名=ドレミを読める速さは?

 ・ドレミファソラシドの高低を歌えるか?
 ・音符の種類=四分音符・二分音符の意味がわかるか?
 ・半音と全音の意味、臨時記号の働きをわかるか?
 ・調号の意味が分かるか? など
②音の高さの違いに対する「精度」
 ・音の高低の違いを、どの制度=半音高いなど理解できるか?
③練習に集中できる時間の長さ・期間
 ・一回の練習に集中できる時間
 ・飽きずに(飽きても)頑張れる時間
およそ、上記の違いが個人で大きく違うのは、どんな楽器を始める場合でも考えられる共通点です。

 次に、ヴァイオリン(弦楽器)特有の「むずかしさ」を考えます。
①弓を使わずに、開放弦をはじいて出せる音の高さを音名で理解できない
 ・絶対音感があればできます。なければできなくて当たり前です。
②弓を使わずに、弦を押さえて「ド」の音を見つけられない。
 ・上記①と同じ理由です。ドに限りません。
③弓で「一本の弦だけ」を弾き続けられない。
 ・簡単そうですが、ほぼ全員が「視覚」に頼ります。眼をつむると色々な弦を引いてしまうのが当たり前です。
③弓を「同じ場所」で動かせない。
 ・これも上記②と同じで「ガンミしていないと」弓が暴走します。
④弓と弦の「直角」が自分から理解できない。
 ・他人から見ればわかる「直角」が自分からはわかりません。視点の問題なので当然です。
⑤弓をたくさん使えない。
 ・全弓使おうとすると、弓の位置、角度を維持できません。特に「見ていないと」大変なズレが生じます。
⑥同じ音量・音色で弓を使って音が出せない。
 ・原理を知らないのですから当然です。
⑦演奏する構えで、自分の両手に「死角=見えない場所」が多い。
 ・ピアノの場合は両手の指が見えていますが、ヴァイオリンの場合左手の手首から肘までは楽器の死角になります。右手の親指も見えません。弓を動かして右手を見ていると、楽器が視野の外に出てしまいます。

 ピアノの初心者に、楽譜に書かれている「音符」の「音名」を教えて、鍵盤で演奏させることは、なんの予備知識がなくてもできますよね?
 ヴァイオリンではどうでしょうか?
開放弦を指ではじいて出た音を、楽譜で「ここ」と教えて、音名を教えられます。
まず弓を使って演奏することは、この時点では無理です。無理ではなくても、弦が4本あって、どこをはじいたら、なんの音が出るのか「覚える」ことになるため、「ソ・レ・ラ・ミ」が最初に出てくる音名になります。「ドレミ」さえあやふやな人が、始めから「ソ」とか「ラ」って大変ですよね。
 ピアノは「鍵盤の模様」で「ド」の場所を覚えるのが一般的です。
ヴァイオリンは…そもそも、開放弦の音を合わせる「調弦=チューニング」をするための技術が何種類も必要です。
① 音の高さを判断する「相対音感=制度」
 ・チューナーを使えばなんとかクリアできます。
②ペグを動かして正しい音で「止める」技術
 ・多くの場合、これで弦を切ります(笑)
 ・回せても=動かせても、ペグをとめる技術がなければ調弦はできません。
 ・アジャスターをすべての弦につければ、ペグを動かせなくても調弦はできますが、その前にペグで調弦してもらうことが必須条件です。

 ヴァイオリンの「はじめの一歩」に何を練習するのか?すべきなのか?は、指導者によって意見が違います。これは以前のブログでも書きましたが、習う人の「目指すレベル」がどうであっても、大差はないはずです。違うとすれば、今回のブログの冒頭で書いたスタート時点での「知識・技術」です。
 楽譜を読めない人がヴァイオリンを始める時には、指導者の手助けが相当に必要です。生徒が子供の場合には、親が自宅で繰り返し教えることも必要です。
 多くの場合には、開放弦「レ」か「ラ」を一定の長さで演奏することからヴァイオリンが始まります。
 が!レッスンが週に1回だとすれば、この「ラ」だけを7日間!
耐えられますか?(笑)大人でも無理だし子供に至っては、まず100パーセント飽きます。他に弾ける音がないのか?ひいちゃいけないの?なんで?
 1本の弦だけを演奏できるようにする「目標」や、弓を長く使って一定の音量・音色で演奏できる「目標」、メトロノームに合わせて弓を返す「目標」、眼をつむっても弾けるようにする「目標」などなど、次のレッスンまでの目標を示し、その「出来具合」を次のレッスンで指導者が確認し修正するのが「野村流」です。

 教則本だけで、ヴァイオリンは演奏できるようになるでしょうか?
本人の「やる気次第」だと思います。ただ、自分の演奏方法、出している音が正しいのか?なにか間違っているのか?は自分の力だけでは判断できないことがほとんどです。特に、それまでに楽練習の経験がない人の場合には、多くの「壁」が待ち構えているのがヴァイオリン演奏でもあります。

 教則本ではなく「音楽」の幅を感じられる初心者向けの曲とは?
エルガーの作品を参考にして、まとめてみます。
①開放弦から全音の幅を「1の指の位置」にした曲を作る。
・GdurとDdurなら開放から1の指が全音になります。
・さらにGdurならば、G線D線の指の並び方が一致し、A戦とE線の指の並び方が一致します。
②曲の最初の音を「0」「1」または「2」の指から始める。
③可能な限り「1」「2」「3」「4」の順で音の数が多い方が演奏しやすい。
④順次進行を多く使うことで、全音・半音の「音程」を覚える。
⑤上行系の音型と下降系の音型をバランスよく入れる。
⑥同じ弓の動き=リズムをある程度、反復させる。
⑦1曲の長さを16小節程度に抑え、ピアノの和声進行に多彩さを持たせる。
注文は限りなくありますが、初心者のためのピアノ曲集で感じられる「多彩な音楽」を弦楽器特有の「制約」の中で作って欲しいと思っています。
 ヴァイオリンはなぜか「コンチェルト」を初心者が演奏することになっています。ピアノでは考えられないことです。もっと、ピアノとの合奏で楽しみながら上達できる「練習曲集」があれば、無理をしてコンチェルトの練習に行き詰ってドロップアウトしてしまう生徒が減るはずです。
 才能教育と呼ばれる「Sメソード」の良さもありますが、系統だっていません。音を覚え、腕と指を動かして「楽器を弾いた」楽しさだけを味わえるより、始めから、必要不可欠な「相対音感の育成」と「調性感とリズム感の養成」「ボーイングの重要性に気付かせる内容」を考えたメソードが必要だと思っています。
 作曲家諸氏の研究に期待しています。
最後までお読みいただき、、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介



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