映像は2004年春。横浜みなとみらい大ホール。演奏するのは中学生と高校生。ハーピストだけはプロです。パイプオルガンも高校生がみなとみらいのオルガニストのレッスンを受けホールの許可を得て演奏しています。指揮は私です。2020席にほぼ満員のお客様を迎えて演奏。私にとってはこれが最後のみなとみらいでした。この年の12月に退職しました。
今回のテーマは中学生・高校生が学校の「部活動」で何故?短期間のうちに楽器が演奏できるようになるのか?と言う「謎」を解く内容です。前提の話ですが、部活動は「特別活動」という教育活動の一部であり「地域のサークル」ではありません。あくまでも「学校」の安全管理と校則の範囲でのみ活動が許されるものです。夜遅くまで練習したり毎週のように土曜・日曜・祝日にも練習を行うのは明らかに教育活動を逸脱した「違法性の高い活動」です。保護者が同意すれば良いと言う安易な問題ではありません。このテーマはまた別の機会に。
さて本題です。中学校・高校だけなら3年間、中・高一貫校なら6年間。同じ学校で楽器を練習できます。3年・6年と言うと短くも長くも感じるものです。それは子供にとっても大人にとっても同じことが言えます。
部活動ではなく「趣味」「習い事」として楽器を練習し始めてから3年間・6年間という期間は長く感じますか?それとも短いでしょうか?例えば幼稚園の年長だった子供が3年間で2年生、6年間で5年生になりますね。大人の場合は…30歳で始めた人と70歳で始めた人にとって「違い」があるとすれば、日々の生活の内容=仕事の有無・自由な時間の長さによって感じ方が変わるものです。一般的に大人が趣味として何かを始めて「5年間」続けば、恐らく一生の趣味になる確率が高いように思います。始めてから1年目は頑張って練習したのが2年目、4年目になると「フェードアウト」してしまうケースも多いですね。
子供でも大人でも「毎日練習する」事は一番難しいことです。
子供であれば学校の宿題、塾、ゲームの「合間」に親に言われて仕方なく楽器を弾くのが10分?5分?
大人の場合は仕事が終わって帰宅してから楽器を練習できる人はまずいないでしょう。仕事がお休みの日や家庭で家事をされている方なら、子供が学校に行っている時間や「隙間」を見つけて練習するのが精一杯だと思います。つまり多くの「趣味演奏家」にとって毎日練習するのは「無理」なのです。
部活動の場合はどうでしょうか?学校の校則の中で許される時間帯、例えば始業前の30分とか昼休みの20分、放課後の30分など楽器を練習する時間を校内で作ることが出来ます。しかも「毎日」です。
教えてくれる人がいなくても、極端な場合「自己流」で間違った演奏方法・練習方法だっとしても毎日楽器を思い切り練習できるという環境があります。それが「3年間」「6年間」続きます。
もうお分かりですね?そうです「部活動」は学校で毎日、楽器を練習できるから上達が早いのです。単純にそれだけの事です。
「才能」とか「指導者の技術」「楽器の値段」はほとんど関係ありません。事実、私が20年間学校でオーケストラを「ゼロ」つまり何もなかった新設校に着任して「オーケストラ」とも言えない11人の生徒から指導を始め、毎年20名以上の新入部員を迎え入れ、学校の方針で外部の指導者を呼ぶことが許されなかったため、当初はすべての楽器=管楽器も打楽器も一人で指導していました。
毎日の練習が上達の「重要な要素」であることは間違いあれません。部活動に限らず音楽家を目指す人が毎日練習するのも同じことです。では毎日練習できなければ「上達しない」のか?と言えばそれも嘘です。例え3日に1度だけ30分練習したとしても、1週間に30分だったとしても練習すれば必ず上達します。違うのは積み上げられる「厚み」です。練習から次の練習までに時間が長ければ、前に練習したことを身体が忘れてしまいます。脳の記憶も同じです。初めて覚えたことは時間をあけずに「思い出す練習」が効果的です。次第にその間隔を長くあけて思い出す練習を繰り返すことで「強い記憶」になります。勉強で丸暗記する時にも有効な記憶方法です。
付け加えるなら、部活動は楽器の練習の他に友人との会話や一緒に遊ぶなどの「楽しい事」があるから続けられるものです。部活動をやめる原因の殆どは人間関係のトラブルです。楽器の練習に飽きたり、上達しないストレスが原因でやめる生徒よりも圧倒的に友達や先輩・後輩との関係が崩れてやめる子供が殆どです。この点は「趣味」の場合と大きく違います。習い事や趣味の場合には演奏以外の「楽しみ」が少ないことも事実です。結果的に「うまく弾けない」ストレスがドロップアウトの最大原因になります。
趣味で楽器の演奏を「長く楽しむ」秘訣は、自分以外の人と演奏する楽しみを見つけることです。「一人が好き」と言う性格の人も多いのですが楽器、特にヴァイオリンや管楽器の場合には「誰かと一緒に演奏する」ことが音楽の最大の楽しみになることを知らない人が大多数です。ピアノは違います。一人で演奏して十分に楽しめます。
アマチュアオーケストラにも様々なコンセプトの違いがあります。
より高い演奏レベルを追い求める人たちが集まったアマチュア団体もあれば、メリーオーケストラのように初心者でも参加できて、演奏会で多くの楽器が加わりプロと一緒に演奏する感動を味わえるオーケストラもあります。
「自分は大人だからうまくならない」「我が家の子供は音楽に向いていない」どちらも大きな間違いです。到達するレベルは練習の内容と時間で変わります。才能や年齢には一切関係がありません。
体力も必要ありません。金属製の弱音器を付ければテレビの音圧と同レベルの音量に小さくできるので夜中でも練習は可能です。
持ち歩くのもヴァイオリンなら楽ですし置き場所にも困りません。さらに「飾って楽しむ」事もできます。「ヴァイオリンは高い」と言う神話にも似た話がありますが、実際にはギターやテニスラケットと同じかもっと安い金額でも購入できます。一度買って丁寧にメンテナンスをすれば自分の一生よりも長く使えるのがヴァイオリンです。
できなかったことが出来るようになる楽しみこそ趣味です。
あなたも「大人の部活動」のつもりで楽器を練習してみませんか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介
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