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視覚障害と楽器の演奏

視覚障害と楽器の演奏

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「網膜色素変性症」と言う病気を持っている事が判明してたのは私が4歳頃の事でした。
当時暮らしていた団地の玄関で、手探りをして靴を探している私を見て「謙介、なにしてるの?」と両親が不思議に思い声をかけたそうです。「え?靴を探してるの」と当然のことのように答えた私にギョッとした両親が「国立小児病院」で網膜の専門医に診察をしてもらい「網膜色素変性症」と診断された…両親のショックははかり知れません。当時から現在も治療法のない進行性の病気で、多くの場合盲学校に通い失明する確率も高いと言われていました。
ただ奇跡的に私の進行は極めてゆっくりしていて、普通学級で学ぶことが出来ました。
視力は矯正して0.5~0.7程度見えていたので、楽譜も読めましたし、運転免許も取得できました。中学生の頃に「将来」に不安を感じたのは今でも覚えています。
両親が私にヴァイオリンを習わせてくれたのは、この病気があったから…ではなかった(笑)
のですが、今考えれば「神様の思し召し」だったのかも知れません。

生まれつき全盲の人もたくさんいます。耳の聴こえない人もいます。四肢が自由にならない人もいます。その「子供」の親がどんな気持ち…自分の事以上に苦悩することは、大人なら想像できると思います。障害を持っている本人は「それが普通」なのです。先述のように薄暗いところは見えないのが当たり前…周りの人と自分の「どこか?なにか?が違う」ことに気が付くのは自我が芽生える時期です。私の場合には、昼間の明るい場所なら普通に一人で行動できましたから、両親も少し安心したと思います。「進行」を調べるために、毎年定期的に網膜の検査、視野の検査、暗順応の検査を受けていました。
進行はほとんどなく音楽高校、音楽大学でも特に問題なく学ぶことができました。
ただオーケストラの「授業」で二人に1本の譜面台で演奏する時に「ギリギリ」の視力だったため自然に「暗譜」で演奏する習慣がついていました。大学生の時にオーケストラの演奏会で、一緒の楽譜を見ていた先輩に「ちょー迷惑」をおかけしました。暗譜していたので「つい」本来の譜めくりよりずっと早く次のページにパート譜をめくった!隣で演奏していた先輩の「まだ!」「まだ!」と言う囁き声に気付いて「はっ!」と。(笑)
そんな失敗もありましたがステージが暗転したり演出で照明を極端に暗くするお仕事以外は、アルバイトで色々なオーケストラにも出演させてもらいました。

教員を45歳の時に退職しましたが病気の進行が原因ではなく父の介護のために年休を使い果たし、その後も両親の介護の必要があったことが理由です。
同じころに病気の進行を感じ始めました。視野の狭窄=見えない部分が増えていくことと、視力の低下を感じ、思い切って障碍者の認定を受けました。当時「1種2級」という段階でした。
偶然なのか?それまでの過程が持続できなくなった時に浩子さんとの演奏活動を始めていました。二人とも同じような境遇でした。そんなドタバタの中でも演奏活動は続けていました。
教員時代20年間、ほとんど触ることもできなかったヴァイオリン。浩子さんとのデュオリサイタルを開催するための「リハビリ」と自分で立ち上げた会社の経営=朝10時から夜9時までのレッスンを並行して生活を続けました
それから18年の間に病気はゆっくり進行しています。治療法が発見されているのは嬉しいのですが「IPS細胞」を用いた治療が治験すら進んでいないのが現状です。実はIPS細胞で作ったシートを網膜に張って網膜色素変性症の治療に活用する考えが一番最初にありました。
現在国内だけでも3万人以上の患者が治療を待っています。医学的な難しさと資金的な問題があるのであれば諦めも付きますが「役所の都合」が見え隠れしていてイライラするのは私だけではないようです(笑)

最後に視覚障碍者が演奏する場合の様々なケースについて述べます。
生まれつき、あるいは幼い頃に全盲になった人の場合「点字」を学びます。
文字の代わりになる指で触って読み取るものです。楽譜にも「点字楽譜」があります。
全盲の人はこの点字楽譜で楽譜を「読み込む」作業をするのですが、私は未だに点字も点字楽譜も全く読めませんが、点字を指で読めば楽器は弾けません。一度に覚えられる量=長さにも限界があります。細かい音符の場合なら1小節ずつかも知れません。その作業を繰り返すのが点字楽譜を使った場合です。
私の場合、以前は「初見」つまり楽譜を初めて見ながらでも演奏できていました。
楽譜を読みながら演奏できることが「当たり前」だったわけです。その訓練もしていました。
現在、21インチのタブレットにPDFデータにした楽譜を保存し、タブレットを横向きにして「拡大」して1画面に2小節ぐらいの巨大な(笑)表示にして顔を近付けて覚えます。
楽器を持って見るのは無理ですから、点字楽譜を読むのと大差ないと思います。
この作業と同時に「弓」「指使い」を考えて覚えます。書いてあれば覚えてしまえば良いのですが、自分のこだわりで変えていくので覚える情報が増えていきます。
この「記憶方法+練習方法」で数年間、新しい曲を覚えています。
いずれ本当に見えなくなった時に点字を学ぶか?点字楽譜を覚えるか?まだ決めていません。
仮に今決めたとしても、それがいつの日なのか?不安に感じながら生活するのは嫌なのです。
音を覚えて演奏する全盲の演奏者もたくさんいます。元より楽譜がなくても演奏はできるのです。逆に「楽譜がないと演奏できない」のは初見の場合だけの話です。

健常者が当たり前にできること…楽譜を見ながら演奏できることもその一つですが、
人間の感覚「五感」は常にどれか一つの感覚に集中しています。無意識に。
すべての感覚が鈍い状態が「睡眠」です。睡眠の手前の段階では五感が次第に鈍感になります。「居眠り運転」がこの状態です。演奏審しながら居眠りは珍しいとは言え、楽譜をただ漫然と眺めている時、ほとんど「五感」は使われていないのです。
言うまでもなく「聴覚」に集中すべきです。次に「触覚」その後に「視覚」。
聴くことに意識がないときには聴こえていても反応していないことが多くなります。
「見えない」ことでそれ以外の「4感」が鋭くなります。
ぜひ!目を閉じて練習してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

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