メリーミュージックブログ

演奏家夫婦が優しく丁寧に指導

TEL.042-782-1922

※原宿南教室〒252-0103
神奈川県相模原市緑区原宿南2-26-1

小品は軽薄な音楽?

小品は軽薄な音楽?

このエントリーをはてなブックマークに追加

 映像はドボルザーク作曲の歌曲「私をひとりにして」
昨年(2026年)1月に代々木上原ムジカーザで演奏したライブ動画です。
 今回のテーマは私たち二人が演奏を続けているリサイタルの中心「小品」について考えるものです。ちなみにクラシック音楽で「小品」と呼ばれる曲は演奏する編成や人数が少ないなどとは無関係です。厳密な定義はここでは書きませんが「小品ではない曲」の一例を挙げてみると「交響曲」「ピアノソナタ」「ヴァイオリン協奏曲」などがあります。演奏時間が短いから小品かと思われがちですが演奏のテンポ=速さが遅ければ当然それなりに演奏時間は長くなります。簡潔に説明するなら「1曲で完結する音楽」あれ?ベートーヴェン交響曲第5番「運命」も第9番「合唱付き」も1曲と言えば1曲ですね(笑)交響曲や協奏曲、ソナタは通常、複数の楽章で1曲が構成されています。「第九」の合唱が出てくるのは最終楽章だけです。楽章とは言われませんが「組曲」と呼ばれる音楽もあります。それぞれの曲は小品と言っても間違いではないと思いますが作曲家が「組み合わせてひとつの作品」と言えば複数の曲で一つの完成された音楽となります。ただそのような知識を持たずに音楽を聴くのが普通ですよね?
「クラシックコンサートあるある」の一つに拍手をいつ?するのか分からない!いつ終わるのか分からない!だから途中で寝落ちした(笑)という話があります。私は「これが当たり前」だと思っています。その曲を何度も聴いている人なら楽章の切れ目、曲の終わりも知っているのは自然なことです。好きな映画を覚えてしまう程、何度も見た人は次のシーンまで分かっていますし当然映画の「結末」も知っていますよね?もし映画館や家族・友人と一緒にその映画を見ていいて自分以外の人が初めて見るケースで「あ、この人は実は…」って一番嫌われる人間ですね(笑)ところが何故か?クラシック音楽のコンサートでは「知っている人が拍手したら拍手する」って不思議だと思いませんか?

 少しクラシック音楽から離れて考えてみます。
ジャズ、ロック、J-POPなどの音楽に「楽章」と言う言葉は使われません。映画音楽やドラマの音楽の場合にはシーンによって様々な音楽が用いられます。「メインテーマ」と呼ばれる映画を代表する音楽とは別に不安や緊張感を感じる曲、涙を誘う曲が効果的に使用されます。CDに映画で使用された音楽がすべて収録されている物もたくさんあります。映画音楽の場合には音楽の演奏時間は特段の制限がありません。むしろシーンに応じて切り分けたり一部だけを使ったりテンポを遅くしてみたりします。一方で歌謡曲と呼ばれる音楽の場合は1曲の長さに慣例として「制約」があります。昔は厳密に放送局が時間を指定した時代もありました。「あかしろ歌合戦」と言う番組でも1曲の持ち時間が公平に決められ少しでも長い曲は容赦なくカットするかテンポを異常なほど速くして時間に納めていました。そんな影響もあってポピュラー音楽の1曲ごとの演奏時間は比較的短いものが主流です。言ってみれば小品…ですね。

 私たち夫婦が演奏する曲の多くが小品と呼ばれる曲です。クラシック音楽の定義も様々ですので「小品」と言うカテゴリーの演奏会があっても良いと考えています。ピアノとヴァイオリンの為のソナタは通常のコンサートでは全楽章演奏されます。長い曲だと終楽章が終わるまで30分以上演奏が続きます。聴きなれた人ならともかく普段はクラシックを意識して聴かない人が「いつ終わるの?」と感じながら演奏を楽しめるだろうか…と気になってしまいます。
全楽章の演奏を楽しみにしてコンサートに足を運ぶクラシックファンもたくさんいます。
その方にとって私たちのように1楽章だけの演奏は「つまみ食い」に感じると思います。
映画の一部分だけを切り取ったり小説の最後だけを読むことに近いことかも知れません。
作曲家が心血を注ぎ長い時間をかけて推敲して仕上げた全楽章を演奏しないのは「良くない」と言う考え方も否定しません。コンサートで初めてクラシックを聴く人、初めてヴィオラとピアノのデュオを聴く人が「こんな曲もあるのか」と感じて音楽に関心を持って頂くことが私たちの願いです。
 小品が軽薄なものだとは考えていません。音楽高校と音楽大学で多くの先生方に室内楽やオーケストラの演奏を教えて頂き「座学」でも音楽理論、西洋音楽史、管弦楽史を学びました。その傍らで全国各地の小学校や中学校での音楽鑑賞教室「オーケストラ鑑賞」の演奏者として様々な音楽を体育館、音楽室、公会堂、ホールなどで演奏していました。運命の1楽章、くるみ割り人形の中の一曲、アルルの女やカルメンの一部など子供たちが関心を持てそうな音楽を限られた時間で演奏するのが「音教」と呼ばれる演奏会です。恐らく多くの方が幼い頃に体験していると思います。その思い出は長く残ります。その時に「つまらなかった」と感じればオーケストラはつまらない、クラシックは嫌いと思ってしまうかも知れないのです。
音楽を聴くことが好きな人が忘れてしまった「はじめの一歩」を小品の演奏と言うコンサートで実現していきたいと思っています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

«

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です