はい、謎のタイトルです。
視力検査ではありません(笑)
漢字のクイズでもありません。
正解は「ヴァイオリン弾きの弓使い」のお話です。
さぁ、いってみよう!
通常弦楽器は弓の動きを「ダウン」「アップ」で表します。
日本語で言えば「上げ弓」「下げ弓」です。
確かに、ヴァイオリン・ビオラで1弦(ヴァイオリンならE線、ヴィオラならA線)を、全弓で弾けば、弓を持っている右手は、上下運動「も」します。
「も」と書いたのは、上限運動だけではないからです。
その話は、のちほど。
チェロやコントラバスのダウン・アップって、垂直方向=縦方向の上下運動ではありません。
すべてのヴァイオリン族の弦楽器に共通していることがあります。
ダウンは、演奏者から見て「右」方向に動く運動で、アップは「左」に動く運動です。ダウンじゃなくて、ライト=Right。アップじゃなくて、レフト=Left
と言わないのが不思議ですよね。←なんにでも、疑問を持つおじさんです。
つまり、演奏者から見て「左右の動き」で音が出ることになります。
では「移弦」の動きはどうでしょうか?
ヴァイオリン・ヴィオラだと、演奏者から見て「傾斜が変わる」方向に弓を傾ける運動です。たとえれば、シーソーの動きに似ています。
チェロ・コントラバスの場合は、ヴァイオリンと同じ運動に加え、演奏者を中心に考えると「水平方向に回転する」運動も加わって移弦しています。水平方向の回転運動を例えるなら、机に置いた鉛筆を、駒のように回す運動です。
今は、ヴァイオリン・ヴィオラに限った話にします。
移弦するために、駒を中心に弓の傾斜を変えます。
移弦の運動では、音は出ません。むしろ、出さずに移弦できることが必要です。
弓を持つ右手の動きで考えると、「左右に動かさずに、上下に動かす」ことで移弦できます。厳密に言えば、「ヴァイオリンの駒を中心にした回転運動」ですが、主に上下運動です。
弓の場所=元・中・先で、右手の運動相は全く違います。
弓先では大きな運動、弓元では右手の上下運動は小さくなります。
では、「音を出しながら移弦する」ときは?どんな運動になるでしょうか。
左右(ダウンアップ)の運動で音が出ます。上下の運動で移弦します。
ダウンアップでも、右手の高さが変わる1弦、2弦、3弦の場合は、さらに複雑になりますが、今はこれを除外して考えます。
タイトルに書いた「右+下」の意味、もうお分かりですね。
ダウンをしながら、下方向に動かすと「曲線運動=〇」になるという意味です。決して「折れ線」の動きではありません。
ひとつの例で言えば、ヴァイオリンでA線をダウンで弾き、スラー(弓を止めない)でE戦に移弦して弾き続けます。
この移弦する時の右手の動きは、右方向へのダウンの運動と、下方向への移弦の動きが同時に起こります。組み合わせるとも言えます。
1本の弦のダウンだけなら、演奏者の正面から見て、右手は直線運動です。
ところが、移弦をともなうと、右手は「曲線」を描くことになります。
これが、「スラーで移弦する」場合の動きです。
今度は弓を返して移弦する場合です。
実は案外気づいていない人が多いのですが、やりやすい動きと、なんとなく?やりにくい運動があります。
やりやすい運動は。
・ダウンからアップで「高い弦=右側の弦に」移弦する場合。
・アップからダウンで「低い音=左側の弦に」移弦する場合。
やりにくい運動は逆に
・ダウンからアップで「低い弦=左側の弦に」移弦する場合。
・アップからダウンで「高い音=右側の弦に」移弦する場合。
なぜでしょうか?答えは実際に右手で「時計方向=右回り」に円を描くときと、
反対方向「反時計回り=左回り」に右手で円を描くとき、どちらかがやりやすくないですか?特に速く回そうとすると、右回りのほうが簡単に感じませんか?
例えていうと、お米を研いだり、ボールの中を泡立てたりするときに、右利きの人なら恐らく「右回り」に回転しませんか?反対方向にも回せますが、なんとなく違和感がありませんか?
速く移弦しながら弓を返す場合、「低→高→低→高=ラミラミ」なら、「ダウン→アップ→ダウン→アップ」がやりやすいはずです。この「ラミラミ」を逆に「アップ→ダウン→アップ→ダウン」にすると、やりにくいはずです。
手首の運動と上腕、前腕の動きが複雑に組み合わせる移弦。
何よりも、右手の指の筋肉をリラックスるさせることが大切です。
2本の弦の移弦を連続すると?
例えば「レラレラレラ」をダウンから弓順で弾きます。
右手の動きが「∞=横向きの8の字」の形になります。
この形を連続すれば、いつまででも連続して演奏できます。
ただ、この音を逆の弓、アップから弓順で弾いてみてください。
」レラレラレラ」と音は同じでも、アップから弾くと運動がぎこちなくなりますよね?先ほどの「∞=横8の字」を逆方向に回る運動になるからです。
2本の弦を移弦するだけではなく、3本、4本の弦に連続的に移弦する場合、先ほどの「やりにくい動き」が含まれることになります。
「GDAE=ソレラミ」をダウンから弓順=一音ずつ弓を返す運動で演奏すると、
「ソレ」は弾きやすく
「レラ」はアップからで手の運動が逆で弾きにくく、
「ラミ」はダウン→アップで弾きやすい。
整理してまとめると。
移弦を伴う「ダウン→アップ」の連続した演奏は、常に右手が「回転する運動」になります。回転する方向も一定ではありません。混乱して、無意識に力んでしまい、音も汚くなりがちです。
音を出す「左右の運動」と移弦する「上下の運動」が曲の中で常に起こっていることを理解することです。
1本の弦を全弓で弾き続けている時には、「直線」の運動
移弦する時には「曲線」の運動であることを、意識することが必要です。
以前のブログでも書いた、「3次元的な観察」がここでも有意義になります。
自分を前から見た時の動き、上から見た時の動き、横から見た時の動き
これらが「同時に動いている」ことをイメージすると、練習が楽になります。
実際に自分で見ながら弾くことはできませんから、「映像を想像」することです。
頑張って綺麗な「移弦」を練習しましょう!
ヴァイオリニスト 野村謙介