すでにご存知の方も多いと思いますが、私(野村謙介)は生まれつきの目の病気「網膜色素変性症」という進行性で治療法のない病気の患者です。
中途失明者の中で2番目に多いのがこの病気です。
「夜盲」という暗いところでものを見ることができない症状と、「視野狭窄」という視野が欠けていく症状が進行します。
IPS細胞や遺伝子治療で世界中の眼科医が治療方法を研究し続けていますが、治療の開始はおそらく10年以上先になります。その間に多くの患者が失明します。
夜盲に苦しむ私たちの為に眼鏡メーカー「HOYA」が何年もの歳月と様々な臨床を繰り替えしてできた「デバイス」がこのMW10です。商品名は「HiKARI」まさに光です。開発の初期からメーカーの方に患者として意見を求められ、機械好きな私が言えるいろいろなお願いも聴いてもらって完成しました。
皆さんの周りであまり見かけない、聞いたことのない病名かも知れませんが、世界に150万人以上、日本だけで3万人(実際には5万人以上いると言われています)の患者がいるのをこの機会に知っていただければ嬉しく思います。
11月1日に全国での販売がスタートし、メディアにも公開されました。
その動画が上の映像です。
スタートから5分50秒辺りから私のリサイタル時の演奏風景と、コメントがありますので、ぜひご覧になって、多くの方にこの「夢の眼鏡」の完成と病気のことをお知らせ頂けることを願っています。
家族が網膜色素変性症で希望を失っています。本日HOYAさんからの情報でMW10 HIKARIを知りました。
家族のためにも詳しくその効果等を知りたいと思いコメントしました。
宜しくお願い致します。
大町美津男さま。返信が遅くなって申し訳ありませんでした。
ご家族の心配をなさるお気持ち、患者としてお察しします。
この「夢の眼鏡」は私たち網膜色素変性症の患者にとって、
日々の生活に不安がなくなる希望の眼鏡です。
病気が治るわけでもなく、進行が止まるわけでもありません。
しかし、暗いところでものが見える感動は、その一瞬の不安と恐怖を
忘れさせてくれます。
「それだけのこと」と言ってしまえば終わりです。
患者(ご家族)本人にしてみれば、高額な眼鏡を家族に買わせることに
申し訳なさが先に立ちます。「いいよいいよ。大丈夫だよ」
それは「家族の思いやり」です。
進行は人によって違います。私は、発症から56年ほどたちますが、
未だに視力があり、こうしてモニターをみながら文字も打てます。
昼間なら一人で外を歩くことも普通にできます。
見えなくなっていつか全盲になる日が来るとしても
恐怖はありません。受け入れるだけですし、MW10があるおかげで
夜が楽しめますから。
ご家族の不安は本人以上だと思います。
どうぞ、気持ちを明るく持って楽しく接してあげてください。
私たちには「温かい手」が何よりも救いになるのです。