楽譜に書かれていないこと

 映像はデュオリサイタル14で演奏したピアソラの「タンゴの歴史」からカフェとナイトクラブ。
 楽譜に書かれていないことって?ダウンやアップ?指使い?
もちろん、楽譜によって指使いの指定やボウイングの指定があるものと無い楽譜があります。今回はそれ以外に書かれていないこと…例えば音色やグリッサンド・ポルタメントの有無、微妙な音量の変化や音符の長さの変化についてです。
 楽譜の通りに演奏することがクラシック音楽ん基本でもありますが、他方で演奏者の個性は楽譜に書かれていない「演奏技術」で決まります。極論すれば演奏者の感性とこだわりが発揮されるのが「楽譜に書かれていないこと」です。
 特にクラシック以外の演奏になるとやたらとグリッサンドやポルタメントを多用するヴァイオリニストが増えます。大いなる勘違い(笑)だと思います。グリッサンドすれば「色っぽい」と思い込んでいるのかもしれません。ポピュラー音楽の中で「演歌」でもこのポルタメントは「肝=きも」でしか使いませんよね。ロックギターのチョーキングやアーム奏法でも効果を考えて使います。
 楽譜に書かKれていないからこそ、演奏者の「品」が問われます。下品にならず、かと言って淡白でもない演奏はグリッサンドだけで表現できるはずがないのです。
 バッハの音楽を演奏する時に「しない」事は基本ポピュラーでもしないのが当たり前です。意図的に色を付けるために一種の「効果音」として考えるべきだと思います。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

歌声と楽器の音

 上の映像はヴィオラとピアノで演奏したレイナルド・アーン作曲の「恍惚の時」下はカウンターテノールで歌っている映像です。
 音楽の演奏は「歌」と「器楽」に大別できます。
自然界の音や楽器の音ではない音…例えば金属をハンマーでたたく音を音楽の中に用いたりサイレンの音を用いることもありますが、一種の楽器として考えることもできます。
 歌声=人間の声と器楽=楽器の音に優劣をつけることは不可能です。
それぞれに「できること・できないこと」があって、人間が出せない高さ・低さの音を器楽では出せますが、楽器は言葉を話すことが出来ません。
 よく「〇△は人間の声に一番近い!」と楽器の音を例える人がいますが、根本的に人間の身体を音源にする声楽と、楽器が出す音を比較すること自体が無意味です。人の身体は「生命体」であり楽器はあくまでも「人工物」ですし、身体は部品を交換できません。
 人間の声は音楽の起源でもあります。どんなに古い楽器も人間の声より古くから存在した楽器はあり得ません。
 人間の声は人によってみんな違い、私たちは人の声を聴いて育ちました。
生まれつき聴覚が不自由な人たちにとって「音」は想像でしかありませんが、健常者にとって人間の声は生涯で一番たくさん聴く「音」なのです。無人島で一人生活していたり、独房で誰とも会わず生きている場合は別ですが。
 その声が音楽を奏でることが一番自然な音楽に感じるのは、考えてみれば当たり前のことです。どんな楽器より一番親しみのある音=歌声は唯一無二の存在です。歌う人によってすべて違う声…これは楽器でも同じことが言えますが「好きな声」と「嫌いな声」は不思議なことですが生理的にあるように思います。
 話し方…とは違い、声の質の問題です。その意味では声楽家の場合、持って生まれた「声」で音楽を奏でる宿命ですから、器楽とは全く違いますね。
 楽器の演奏で最も大切なことは「聴く人にとって心地よい音であること」だと確信しています。人によって好みがあって当たり前です。聴く人すべてが心地良く感じる音は存在しません。それも現実です。歌声でも同じです。
 人間らしい器楽の演奏
先述の通り器楽は声楽=声では出せない高さや速いパッセージを演奏できます。
ただそれは単に楽器の特質であり演奏者の技術とは無関係です。
速く正確に高い音や低い音を演奏できる「だけ」の演奏にならないように常に気を付けたいと思っています。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

練習の前に

 ヴァイオリンを練習しようと楽器と弓を手に取って、調弦をして…
その次に何を?練習しますか?スケール=音階・エチュード・曲
 長い時間をかけて練習することができない環境の人も多い上に、何を最初に練習するのか回も決まっていない人が圧倒的に多いのが現実です。
 これが正しいと言うものはありませんが、ヴァイオリンの演奏で最も大きな運動をする右腕の筋肉をストレッチする「ウォームアップ」をお勧めします。
 上の楽譜の1番は♩=60でメトロノームを鳴らしながら、一つの音を弓の元から先まで残さずに使いながら(先が届かなければ無理をせず)一つの音符に4秒ずつかけて同じ音量・同じ音色で演奏します。
 4秒×2(ダウン・アップ)×7種類で56秒×2(上行と下降)で約2分です。
2番は2本の弦を弾きながら一方の弦だけを0→1→2→3→4→3→2→1→0と押さえていく練習です。この練習で約3分。二つの練習で5分です。
 ぜひ!お試しください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

好きな音楽を感じるままに…

 映像はヴィオラとピアノで演奏したエンニ・モリコーネ作曲の「ガブリエルのオーボエ」です。
 ヴァイオリンを習う人の多くが先生に指定された「教本」を使って技術を身に着けていきます。先生や教室によって指定される教本や内容が違うものです。
 どの教本を使って何を練習して、どんな技術を身に着けるべきなのか?
習う人の年齢や楽譜を読む技術、練習できる環境や本人の性格、目的によっても使う教本や内容を選んでいます。
 音楽の学校に進むことやコンクールで入賞することを「目の前の目標」にする人の場合には「身につけなければならない」最低限?の技術があります。
 最低限に「?」を付けたのは音楽の学校やコンクールのレベルによって最低限のレベルが大きく違うからです。簡単に言えば「どんなレベルの音楽学校でもいい」場合に必要な技術はさほど多くありません。
 趣味でヴァイオリン演奏を楽しみたい人にとって必要な技術ってなんでしょう?

 習う人、教える人によって違うのですが私は「好きな音楽を感じるままに演奏できるように」してあげたい、なって欲しいと持っています。
 年齢に関わらず人によって到達できる技術レベルは違います。それは才能などではなく環境や考え方の違いによるものです。限られた「練習できる時間」の中で「やる気=モチベーション」を維持しながら上達できる練習方法をアドヴァイスするのがレッスンだと思っています。
 生徒さん自身が感じる「足りない技術」や「身に着けたい技術」は時として段階を飛び越えている場合があります。逆に「この曲は自分には演奏できない」とか「あんな風に演奏できるはずがない」と思い込んでいる場合もあります。
 どちらの場合も生徒さんにとっては「未知の世界」のことですから仕方のない当たり前のことです。

 例えばヴィブラートを出来るようになりたいと「思わなければ」何年楽器を演奏してもできるようにはなりません。またヴァイオリン演奏に必要な技術の多さをまだ知らない段階で「演奏できないのは才能がないから」とか「自分に(我が子に)向いていない」と決めつけるのも間違いです。

 弦楽器は管楽器より難しいと言うのは大嘘(笑)
私に言わせれば管楽器の方がはるかに難しいと感じますが、それも正しい事ではないのです。なぜならすべての楽器は、それぞれ難しさが違うのですから。比較できません。

 自分の好きな楽器で、好きな曲を演奏して楽しいと感じられることが、楽器演奏の究極の楽しみだと思います。
 音階の練習やポジション移動の練習、ロングトーンの練習など練習方法は無限にあります。それらの中で何を練習すれば自分の好きな曲を「生きている間に」演奏できるようになるか?その問いに正面から答えてくれる指導者に出会えること・探すことが何よりも大切な事なのかもしれません。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

「じょうずな演奏」―「素人っぽい演奏」=?

 映像は「MISTY」のヴィオラとピアノの演奏に、雪景色の写真を重ねた映像です。
 今日のテーマは一言で言えば「うまく聴こえる演奏とは?」です。
特にアマチュアで演奏を楽しんでいる方たちにとって、演奏を職業としている「プロ」の演奏と自分の演奏の「違い」が理解できないのは当然のことです。
「えらそうに!」と勘違いしないでくださいね(笑)私もアマチュア演奏家だと思っている一人なので。
 音を出すこと・曲を弾くこと+α
この「α」こそがじょうずに=プロっぽく聴こえる演奏の特徴です。
演奏するのがどんな音楽でも同じことが言えます。
 もう少し違う言い方をするなら「意図的に音色や音量、音符や休符の長さを変えられる」とじょうずに聴こえます。偶然に=無意識に変わってしまう演奏とは違います。ある人のある1曲の演奏を聴いているだけでも感じるものです。
「言葉のように音楽が聴こえる」とも言えます。
パソコンで読み上げるロボット音声のような楽器の演奏は、素人っぽく聴こえます。音楽を言葉のように感じて演奏している人の演奏が上手に聴こえます。 

 演奏しながら「何もしない=ただ音を出す」時間の差も「α」になります。
曲の中なの一つずつの音、さらにその音の中発音から音が終わるまでの時間。ただ音を出すだけで終わらないことがじょうずに聴こえる演奏の最大の要因です。
楽譜には書いていないことを自分で「試す」ことです。その積み重ね=経験が演奏するうえで何よりも大切なことだと思います。
 小さなことの積み重ねを「ジェンガ」に例えるとイメージしやすいですね。
ヴィブラートの速さや深さ・弓の圧力と速度・音楽の揺れ戻しなどを一つのパッセージに丁寧に積み上げて高くするのが演奏のジェンガです。一つ一つの技術はそれほど難しい事ではありません。ただバランスを忘れればすべてが崩れてしまうのもジェンガと似ています。

焦らずに・諦めずに・怖がらずに積み重ねてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

手首のヴィブラート

 映像はデュオリサイタル15で演奏したラフマニノフ・クライスラーの祈り。
今回のテーマはヴィブラートのかけ方について。以前のブログでもヴァイオリン・ヴィオラのヴィブラートについて書きましたが今回は「手首のヴィブラート」に絞って考えてみます。

 そもそもヴィブラートは音の高さを曲線的に連続して変化させることです。
・弦を押さえる指先の適度な硬さ
・指の関節の柔軟性と可動範囲の大きさ
。弦は押さえない親指の柔軟性と力の方向
。てのひらの筋肉の柔軟性と強さ
・手首の関節の可動範囲と柔軟性
・前腕の角度と手首の角度=てのひらの向き
・前腕の筋肉の強さと柔らかさ
・上腕と胸筋の脱力
言うまでもなく最終的には「音を聞きわける耳」が一番大切です。
動画を見て頂くと手首を「支点」に掌が「回転運動=倒れたり起きたり」していることがわかると思います。掌を動かしているのは前腕の筋肉です。さらに左手の親指はネックに触れた状態で付け根の関節が自由に動かせることが大切です。手首を支点にしながら親指は上方向への力を発生します。
 弦を押さえている指は腕=肘のヴィブラートと大きく違い、ネック=弦に対して平行な運動にはなりません。腕・肘のヴィブラートは基本的にポジション移動と同じ運動です。ネック・弦と平行に動きますが手首のヴィブラートは「指が倒れたり起きたりする」運動になります。指の関節の「伸び縮み」は腕のヴィブラートより少なくなります。
 手首のヴィブラートはポジション移動と全く違う運動で使う筋肉も違います。
腕のヴィブラートは上腕の筋肉と肩の付け根の筋肉を使います。
手首のヴィブラートは前腕の筋肉なのでより小さなエネルギーで運動できます。
 指を曲げたままでヴィブラートできるメリットもあります。
どんな方法であっても、角のない曲線的なピッチの変化に加え、速さと深さをコントロールできることが大切です。
 自分の音を録音して聴いてみると「ヴィブラートの波」を冷静に観察できます。自分の演奏をぜひ!聞き直して頑張りましょう!
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

ヴァイオリンを楽しむ

 今回は私の愛する、ヴァイオリンと言う楽器を演奏して楽しむことをテーマに考えます。
 ことさら「ヴァイオリンが一番」なんて話をする気は1ミリもありません(笑)
色々な楽器の良さがありピアノが一番好きな人もいて当然です。またそれぞれの楽器によって演奏できる「音域=音の幅」や同時に演奏できる音の数、音を出す仕組みが違いますから、必然的に演奏できる音楽も違います。その違いを並べ立ててもあまり意味はありませんので今回はヴァイオリン演奏を楽しむ人の参考になりそうなことだけに絞って書いてみます。

 ヴァイオリンを練習してどんな音楽を、どんな風に演奏したいのか?多くの人があまり考えない…答えられない質問です。むしろ「ヴァイオリンを弾くことが面白い・楽しい」と言う答えが一般的です、
 初めてヴァイオリンを手にしてからの上達の過程で、たくさんの「難しさ」に直面します。音の高さが定まらない難しさ・1本の弦だけを演奏する難しさ・2本の弦を重音で演奏する難しさ・弓が弾まないように動かす難しさ・同じ場所を直角に弾き続ける難しさ・ヴィブラートの難しさ・ポジション移動の難しさ・短い音を速く連続して弾く難しさ…数えきれないほどの「壁」がありますよね?
 それらをすべて克服して思ったようにヴァイオリンを演奏できる日がいつか来るのでしょうか?(笑)頑張って練習してもできる気がしないのがヴァイオリンの演奏でもあります。
 やめます?ヴァイオリン(笑)
ヴァイオリンで音を出して初めて曲を演奏できた時に「できた!」と喜んだはずですが…覚えていますか?その後の「苦悩の日々」が最初に曲を弾けたときの感動を忘れさせています。楽器で音楽を演奏すること。それが原点であり頂上でもあると思います。ヴァイオリンで音楽を演奏することが楽しくなければ、練習する大義がなくなります。「練習することが趣味」と言うのであれば別です。音楽にならなくても音を出せれば楽しいと言う人もいるでしょう。テニスの壁打ちだけ出来れば楽しいと言う人もいます。バッティングセンターやゴルフの打ちっぱなしだけで満足する人もいます。楽器の音を出すだけで満足する人がいても不思議ではありません。
 人によって楽しみ方は様々です。ヴァイオリンを演奏して楽しいのであれば何も問題はありません。面白くなくなった時に飽きたのか?出来ないから面白くないのか?きっと理由があります。それを考えることさえ面倒くさいのが普通です(笑)
 ヴァイオリンの演奏・練習に飽きた人の多くは、演奏する色々な楽しさを知る前に飽きています。スポーツで例えるなら試合=ゲームを知らないままで終わることに似ています。
 ヴァイオリンの演奏を長く楽しむ上でまず「演奏できる曲探し」をすることです。初心者のレベルでどんな曲が自分で演奏できるのかを知ることは不可能です。「ヴァイオリンと言えば●●太郎」と思う人も多いのですが(笑)もっと現実的に初心者でも楽しめる曲がたくさんあります。ヴァイオリンの為に作曲されたクラシック音楽は得てして難易度が高いものです。かと言って「チューリップ」や「蝶々」を演奏して楽しいとも思えませんよね。販売されている初心者が演奏できる曲の楽譜は非常に少なく、かと言って楽譜なしに演奏できる技術もありません。これがヴァイオリンを習い始めてドロップアウト=やめてしまう一番多い原因です。教本を練習することも上達のためのひとつの方法ですが、必ずしもすべての初心者に好まれる曲…とはいいがたいのも事実です。
 習う側=初心者の方が「曲探し」をすることです。その際のポイントは…
①ゆっくりした音楽
②自分が声で歌える音楽
③ヴァイオリンとピアノで演奏している音楽
上記の3点に絞って音楽を探してみてください。
③についてはヴァイオリンでなくても歌やフルートなどとピアノの演奏でも構いません。
 弾いてみたいと思う曲を見つけたら誰かに楽譜を書いてもらう事をお勧めします。楽譜をかけないヴァイオリニストが初心者を教えているとしたら問題です。
覚えられる長さの短い曲であれば、すぐに初心者ヴァイオリニストのための楽譜はかけて当たり前です。指使いや弓のダウン・アップなども書き込んでもらえば一層短期間で演奏できるようになります。
 とにかく「演奏したい曲」を見つけ「好きなように演奏できる」ことを目標にして練習することが何よりも大切です。
 ぜひ!ヴァイオリンで音楽を演奏する楽しさを感じられまで、短く覚えやすい音楽から練習してみ下さい。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

初心者から上達する速度とレベルの個人差は…

 映像は20年ほど前に勤めていた中学校・高等学校の部活動オーケストラ定期演奏会。みなとみらいホールでの演奏です。演奏しているのは紛れもなく(笑)中学生と高校生。例外はハープの演奏者(プロの方です)だけでパイプオルガンも当時高校生だった「元部員」が演奏しています。
 1985年から約20年間の部活動指導経験とその後の指導経験から「初心者の上達」について私が思う事をテーマにしてみます。

 結論から先に言えば
「子供からでも大人からでも到達レベルは」
「上達速度=時間は練習の密度次第」
「到達レベルの違いは練習時間と内容に比例する」
と言う2点です。
小さい頃から始めても大人から始めても、「密度の薄い練習」を「5年間」続けた場合に到達するレベルは「密度の濃い練習」を「1年間」練習した人の到達レベルは「同じ程度」です。
一方で内容の濃い練習を5年間続けた場合の到達レベルは、内容の薄い練習を何年続けても到達できないレベルです。
 つまり初心者から初めて「密度の濃い練習」を続けていればどんなに人でも動画で演奏しているレベルまでは到達できるという意味になります。
この動画内で演奏している生徒のほとんど全員が中学に入学するまで、触ったことのない楽器を演奏しています。中には小さい時からヴァイオリンを習っていた生徒もいますが、動画内でヴァイオリンの演奏を見て「習っていた子」を判別できません。それほどに部活動で目標を持って練習することによる上達レベルは高くなるという証明です。
 以前にも書きましたが私の指導方針は
「月曜から金曜の練習参加を強制しない=練習場所を提供する」
「土曜日の合奏には参加する=午後1時から3時ごろまで」
それだけです(笑)生徒個人が上手になりたいと感じ、自分の生活スケジュールを優先し=部活を優先させない、間違った練習をしないことで。入部したすべての生徒がこうして演奏しています。

 この演奏レベルは「アマチュアレベル」としては十分だと思います。
この生徒たちの中でさらに外部の先生にレッスンを受け、音楽大学に進学した生徒もいます。プロになって活動している人もいますが多くの「元部員」はその後もアマチュアで音楽を楽しんでいます。素敵なことですし私の理想とすることです。燃え尽き症候群の生徒もいなかったと思います。なにせ練習スケジュール自体は「ゆるい」部活でしたから燃え尽きるまで疲れていないはず(笑)
 このレベルに到達するまでに子供によって差があります。その原因は「性格の違い=集中力の違い」によるものです。言い換えれば「こだわることの違い」であり能力や才能の違いではありません!
 たとえばヴァイオリンの生徒がヴィブラートをかけられるになるまでの期間は、1~3カ月ほどの幅があります。「1カ月でヴィブラートがかかるの?」あと思われますが実際にかけられます。それでも3倍ほどの時間差があります。
 またスピッカートが出来るようになるまでには1年から2年かかります。なかにはもっと時間のかかる生徒もいます。難易度が高いためです。
 リズムを正確に演奏する技術や楽譜を音にする技術は、部活動の場合は「誰かの真似をする」ことで覚えられるために実際にはあまり上達していません。不思議に感じるかも知れませんが音楽を「丸ごと覚えて演奏する」ことで演奏していると言っても過言ではありません。当然プロになるのであれば「読譜技術=初見能力」は必須条件ですがアマチュアには求められません。

 部活ではなく個人レッスンの場合には、密度の濃さに天と地ほどの個人差があります。生活の中で楽器の練習に集中できる時間が違いすぎるからです、
 音楽の学校を受験しようとする場合には、生活の中心が楽器の練習になるわけで密度の濃い練習が出来て=練習して当たり前です。そうでない場合には「できるy時に」練習するのですから密度が薄くなるのは仕方ありません。
 前述の通り密度が薄ければあるレベルより「上」にはいくら長く時間をかけても到達しません。アマチュアならそれで十分だと思います。自分が楽しければレベルが低くても満足できるはずなのです。もしも、さらに上達しいのであれば練習の密度を刻すればよいのです。忠雄?レだけのことです。時間・期間だけではありません。
 楽しめなければ音楽ではない。
私の持論です、プロでもアマチュアでも演奏を楽しめれば立派な「演奏家」です、
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

楽譜を覚えるためのプロセス

 映像はショスタコービッチ作曲「二つのヴァイオリンとピアノのための5つの小品」の4番「ワルツ」と5番「ポルカ」をヴァイオリン・ヴィオラ・ピアノで演奏しているものです。この楽譜は手に入りませんでした。
 ヴァイオリンのセカンドの楽譜は…

すごいでしょ!浩子さん天才!ありがとう!
で、それを私がパソコンソフトを使って「音」にします。

すごいでしょ!浩子さん天才!ありがとう!
で、それを私がパソコンソフトを使って「音」にします。

さらにここに先ほどの楽譜を画像にして音楽に合わせて動画を作ります。
それがこちら。

これを頭に覚えて演奏するのです。覚えながら指使いや弓も覚えます。
「動画が見えるなら紙の楽譜も見えるでしょ?」と思われますが私たち弱視の人間にとっては画面の明るさとコントラストの強さは、紙よりもずっとみやすいのです。ただ音符の位置などは苦しいですが(笑)音を聴きながら覚える方法は「スズキメソード」の母国語方式に似ていますが、正確には意味が違います。このパソコンの音源をそのまま真似して弾きたくないし(笑)そもそも楽譜を見ることが難しくなった分を補うための音源です。
 楽譜を見ながら演奏できることが当たり前だった頃には「暗譜」することの意味や難しさを考えたことはあまりありませんでした。なんとなく?何度も練習している間に覚えるのが暗譜だと思っていました。
 楽譜を見ないで演奏する(できる)こと
それだけでは暗譜とは思わなくなりました。演奏しようとする音楽のあらゆる要素…音の長さ・高さ・大きさ・音色などを演奏する弦や弓の位置をひとつのパッケージ=イメージとして一曲分「思い出せる」ことが暗譜だと思うようになりました。少しずつ…一音ずつ・1小節ずつ・1フレーズずつ覚えます。
 能率が悪く思われますが実際にやってみると案外!短時間で演奏できるようになるものです。ぜひ、皆さんも一度お試しください!
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介

シンプルな美しさ

 映像はデュオリサイタル8で演奏したバッハ作曲チェンバロ協奏曲第5番の中から「アリオーソ」ヴィオラとピアノで演奏したものです。ビデオの撮影は人手不足で(笑)ありませんでした。
 音楽にはそれぞれに個性がありますよね。言葉にすると安っぽい気もしますが、シンプルな音楽は絵で例えるなら…水墨画やクレパスで書かれたようなイメージ。食べ物に例えるなら…素材の味が際立つ料理。もちろん、複雑な色遣いの絵画も多くの素材を組み合わせた料理も素晴らしいものですがシンプルなもので人を感動させるために、作り手のこだわりと技術が最大限発揮されるとも思います。
 演奏の形態も、使われる楽器の種類が少なくなればなるほど、一つ一つの楽器の音が際立ちます。
 楽曲の旋律が、順次進行と分散和音を中心にした覚えやすい旋律で、リズムも規則的な繰り返しが多いアリオーソ。和声進行も奇をてらわず聴く人の期待通りの進行です。
 余計な飾りを極限まで削り必要不可欠なものだけが残ったもの
それこそがシンプルな美しさだと思います。「簡単」とは意味が違うのです。
「素朴」とでもいうべきです。アリオーソを演奏する際に、装飾音符をたくさんつける人もいますが私は「素=すのまま」が好きです。「バロックとは!」と言うお話は大切ですが料理の仕方は、人それぞれに違って良いと思います。
 もっと純粋な美しさを求めて、この曲に再挑戦したいと思うのでした。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴァイオリニスト・ヴィオリスト 野村謙介